2020年スーパーGT500クラスのタイトル争いが佳境に入った第7戦もてぎの予選、チャンピオン有力チームが軒並み順位を下げる結果になってしまった。ランキングトップ2の14号車WAKO’S 4CR GRスープラ、37号車KeePer TOM’S GRスープラ、そして同点3位のKEIHIN NSX-GTはQ1でノックアウトされてしまった。
37号車は今回、フォーミュラE参戦に向けテスト参加するニック・キャシディがトムスを離脱して山下健太が代役を務める。昨年チャンピオンの山下と平川亮のコンビで活躍が期待されたが、KeePer TOM’S GRスープラの予選は13番手と、まさかの下位に沈んでしまった。この背景には今季の開催場所の違いなどコロナ禍による影響が考えられるが、まずは予選後に聞いた各陣営の感触を振り返る。
午前中の練習走行での手応えから、予選Q1を担当することになったKeePer TOM’S GRスープラの山下健太。計測3周目にアタックに入るも、その周のアタックは止めて、翌周に再アタック。しかし、13番手タイムでQ1ノックアウトとなってしまった。
「(13番手と無線で聞いて)『えっ!?』って。Q1は通っていると思っていました。でも、全然ダメでした。アタック自体はミスしたわけでもなく普通にアタックできたので……」と、困惑の表情を見せる山下。
「アタック自体はうまくいったんですけどね。本当は計測3周目にアタックする予定だったんですけど、3コーナーを曲がった時にすごくオーバーステアになってしまって、その周はアタックを止めて4周目に行ったんですけど、3周目に行けていたとしても、さらにタイムアップできたという感じではなかったです」と予選を振り返る山下。
午前の公式練習で37号車は5番手タイムをマークしていたことから、クルマのセットアップはまとまっていたようだ。ただ、そこから予選に向けての詰め方が問題になったようだが、山下はクルマのセットアップを言い訳にしない。
「久しぶりにGTに乗ったので、自分が普通にできていると思ってもできていないかもしれないですね。4か月間離れていたら、こうなるのかもしれません。俺がうまく乗ることができませんでした」と山下。それでも、走り初めのクルマの調子は悪くなさそうなだけに、決勝での巻き返しは期待できそうだ。
ただ、気になるのは今シーズン前半から強さを見せていたGRスープラ+ブリヂストン陣営のパフォーマンスが、今回のもてぎでは薄くなってしまったこと。今回の予選トップ3をホンダNSX陣営が占めたことからも、GRスープラ+ブリヂストン陣営のパフォーマンスが気がかりだ。
GRスープラ+ブリヂストン陣営で、予選トップの6番手となったZENT GRスープラの立川祐路が予選を振り返る。
「たしかにスープラ勢がちょっと厳しい感じはありますね。NSXが速いですよね。前回のもてぎもそうですけど、予選に関してはクルマが決まっているNSXは速い。ただ、同じタイヤのNSXに負けている部分が予選に関してはあったので、もう少し前に行きたかったです」と立川。
「Q1の石浦(宏明)からもクルマはいっぱいいっぱいだと聞いていて、自分がQ2でアタックした時も同じような状況だったので、対NSXで考えると、ちょっと速さが足りていないかな。ただ、レースに関しては選んでいるタイヤもレース向きの堅めなので、また状況を変えたいと思っています」と、日曜の決勝に期待を込めた。
一方、同点ランキング3位で、第4戦のもてぎで圧倒的なパフォーマンスで優勝を飾ったKEIHIN NSX-GTも、今回の第7戦では予選10番手に沈んでしまった。予選Q2を担当予定だった塚越広大が予選日を振り返る。
「午前中はすごい寒いところから始まって、タイヤのウォームアップとか気にしながら比較を行って、クルマのセットアップとしては順調というか、しっかりできていました。ただ、前回(第4戦)と違ってウエイトハンデが効いているのかなと。他のウエイト積んだクルマと比べても、重いクルマのなかではどこか1台が抜けているわけでもないですし、ウエイトの状態を考えたら仕方がないんじゃないかなと思います」と塚越。
チームメイトのベルトラン・バゲットの予選Q1に関しても「すごく僅差のところでしたし、クルマのフィーリングも悪いわけではないですし、何かミスがあったわけではないですからね」と、ウエイトハンデの影響を理由に挙げる。
ツインリンクもてぎは、ストップ&ゴーのレイアウト特性から、今季開催の富士、鈴鹿と比べてもっともウエイトハンデがタイムに影響しやすい、いわゆるウエイト係数が高いサーキットとして知られる。
さらに予選Q1トップのModulo NSX-GTのタイムは別格として、2番手WedsSport ADVAN GRスープラの1分36秒7と、ノックアウトした9番手WAKO’S 4CR GRスープラのタイム差はコンマ6秒。もてぎはタイム差が僅差のサーキットとしても知られている。
昨年までのシリーズ第7戦といえば、ウエイトハンデが×1kgでそれまでから半減し、ランキング上位チームがウエイトハンデが重いながらも第7戦では予選で上位に入り、そしてノーウエイトの第8戦でも上位に入ることでチャンピオンを獲得してきた流れがあった。
だが、今季はコロナ禍でここ数年の第7戦のSUGO、タイ、オートポリスといったウエイト係数が低めのサーキットから、今年はツインリンクもてぎにサーキットが変わった。ウエイト係数がもっとも高いサーキットで、さらにタイム差が僅差のもてぎでは、ランキング上位のチームは昨年以上に厳しい戦いを強いられる状況になっているのだ。
当然、この状況は予選だけでなく、決勝日、さらにはチャンピオンシップにも大きく影響していく。
「もてぎでウエイトを積んだ状態で300kmのレースを戦うのは過去に経験がないので、そこで強いレースができれば予選の順位が下でも追い上げることができる。僕たちはレースでは強い状態を保っていると思っているので、ふたりで順位をどんどん上げられるようにしていきたいと思います」と話すのは、KEIHINの塚越。
ZENTの立川も「GTは予選どおりに行かない部分もありますし、いろいろなものを引き寄せないと勝てない。タイヤのマネジメントが結果に大きく関わってくるので、レースセットをロングランに向けて、タイヤを守りたいなと。明日は全集中で頑張って巻き返します」と、決勝への期待を語る。
これまでのウエイト係数とは異なる第7戦、ウエイトを積んでの未知の300kmレース、読みが難しい気温差などなど、とにかく不確定要素が多いスーパーGT第7戦の決勝。本来は最終戦に向けて、チャンピオン争いが絞られる一戦なのだが、今年はなんだか、候補がさらに増えそうな予感だ。
from KeePerにKEIHINにWAKO’S も……予選下位に沈んだタイトル候補たち。これまでの7戦目と違う、もてぎのウエイト係数の大きさ《第7戦GT500予選あと読み》
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