「自分たちとしては想定したタイムを出せていますし、バランスもとくに悪くないです。ダンロップの2台が異様に速かったな、という感じです」
そう語るのはGT300のランキング首位で第7戦もてぎに乗り込んできたLEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥だ。菅波冬悟が担当したQ1・A組では、ボーダーラインまであと0.252秒というところで涙を飲んだ。
GT300で猛威を振るうダンロップ旋風。今回のもてぎでも公式練習でワン・ツー、予選Q1はA組・B組ともにトップタイム。そしてQ2ではPP獲得と、もともと得意とする寒い時期になったことも相まってか“無双”状態となった。
とりわけ公式練習開始直後から早々にタイミングモニターの最上段に付け、予選Q1・B組で安田裕信が1分46秒1を出して2番手以降を圧倒したGAINER TANAX GT-R陣営は、Q2でも当然フロントロウを奪うものと思われた。
「僕自身も、安田のタイムを見てポール(ポジション)は行けるなと思ったんですけど……」とQ2担当の平中克幸は振り返る。
GAINER TANAX GT-Rは、他車よりもタイヤのウォームアップが早いことから、計測2周目を本命ラップとしていた。Q1、Q2ともに最後にコースインし、計測2周目時点でもっともラバーが載るタイミングに狙いを定め、アタックをかけた。
「前車との間隔を開けるために計測1周目がゆっくりになってしまい、ちょっと温めが足りなかったかもしれません。アタックラップでは荷重の乗るセクター1、2までは感触良く走れていたんですが、微妙に荷重のかかりにくいヘアピンなどで、フロントが全然入らなくなってしまいました」(平中)
ウォームアップが早いとはいえ『柔らかいタイヤ』というわけではないという。ウエイト100kgながら6位に入った第4戦のもてぎでも履いた、実績のあるタイヤだというのだ。ゆえに、決勝でのペースにも自信はあるという。
意識しているのは、同じダンロップを履くポールポジションのSUBARU BRZ R&D SPORTだ。
「向こうも勝たないと(タイトルの)チャンスがないという状況でしょうし、彼らの方がマシン重量が軽いから、決勝は強いと思う。そこはレース始まってみないと分からない。僕らはまずはしっかりとポイントを……最低でも表彰台は欲しいですが、僕らのレースをすれば絶対に優勝争いはできると思っています」と平中は3番グリッドから挑む決勝に自信を見せる。
前戦鈴鹿ではセーフティカー(SC)出動時にピットインが完了しておらず、上位フィニッシュのチャンスが消えてしまった。今回の決勝ではミニマム周回数でのピットインを敢行する予定かと聞くと、「難しいですね。チームもすごい悩んでいます」と平中は明かした。
「ただ、前回のSCはかなり特殊なコンディションだったと思うんです。だから先ほども言ったように、いままでやってきた『僕らのレース』に徹した方がいいんじゃないかと思っています」
『僕らのレース』という言葉、そしてGT-Rの車重を考えれば、決勝ではオーソドックスな四輪交換作戦で真っ向勝負をしてくることが予想される。
■スタート直後に警戒とSUBARU BRZ R&D SPORT
一方、PPを獲得したSUBARU BRZ R&D SPORTはこの週末、走り出しから山内英輝が中心となってマシンをセットアップ。そのステアリングを握りQ1・A組でアタックした井口卓人が1分46秒9でトップ通過したことにより、フロントロウが見えたという。澤田稔テクニカルコーディネーターが予選を振り返る。
「今回は山内が中心でセットアップしてくれたクルマなので、井口は90%くらいの力でQ1をパスしてくれれればと思ってました。それを見事にトップタイムで通過してくれ、おまけにタイムも1分46秒台に入ったので、山内が100%でアタックすれば46秒前半かな、でも2番手かな、と思っていました」
こちらも「レースに向けて、わりと堅実なタイヤを選択できました。ここまでは不安要素なく、来ています」と、序盤からトップに立ってSC出動まではレースを支配した第6戦鈴鹿と同レベルの、決勝での安定性は見えているという。
同じダンロップを履くGAINER TANAX GT-Rについては「パフォーマンスはいいと思います」と澤田氏は見ている。「ウチは後ろにつかれてしまったら、バックストレート1本で抜かれてしまう。だから逃げ切らないといけません」と後続を振り切りたい構えだ。
決勝の戦略は現時点では当然明かされないものの、ここ数戦の流れを考えればピット時間短縮のための二輪交換、あわよくば無交換を視野に入れているものと推測できる。
なお、SUBARU BRZ R&D SPORTの予選のベストラップは計測3周目。GAINER TANAX GT-Rに比べれば、タイヤをゆっくりと温めたことになる。このウォームアップの差も、二輪交換や無交換を考えてやや硬めのタイヤを選んでいるゆえ……かもしれない。
澤田氏も、GAINER TANAX GT-Rのウォームアップ性能の良さから、スタート直後を警戒している。その意味では、予選で2台の間に飛び込んだたかのこの湯 RC F GT3のスタート直後の動向も、非常に注目されるところだ。
もちろん、予選20番手に沈んだLEON PYRAMID AMGは、「コース上で抜くのは難しいと思うので……」(蒲生)と、お家芸とも言えるタイヤ無交換、または2輪交換作戦に打って出てくる可能性が高い。ポイント圏内フィニッシュを目指し、粘り強いレースをしてくるはずだ。
GAINER TANAX GT-Rからは10ポイント先、そしてSUBARU BRZ R&D SPORTにとっては16ポイント先(※予選PPの1点を加味)をゆくランキングリーダーに追いつくための熾烈なダンロップ対決は、今回の決勝の一番の見どころとも言える。
果たしてスタートから逃げ切れるのか、ウォームアップ性能を活かしてすぐに捕まえるのか。そして、戦略はどう分かれるのか。1位=20点を是が非でも手にしたいという気持ちは、両陣営とも同じである。
from 生き残りをかけたGT-R vs BRZのダンロップ対決。予選失敗と“スタート直後に警戒”の理由《第7戦GT300予選あと読み》
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