TGR TEAM SARD 2020スーパーGT第5戦富士 レースレポート

2020 スーパーGT 第5戦『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』(10/3~4)
富士スピードウェイ(1周4.563km)

 10月4日(日)、スーパーGT第5戦『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』の決勝が行われ、5番グリッドから粉骨砕身に勝利を狙っていったDENSO KOBELCO SARD GR Supraは、ヘイキが出だし遅れるも、すぐさま追い上げ3位浮上。トップ8号車との同時ピットインで勝負をかけ、ヘイキのインラップ~ピット作業~中山のアウトラップとすべてで上回るチーム総合力でトップを奪取。後半は2位との間合いを見ながら独走のトップチェッカー。

 昨年第6戦オートポリス以来で通算GT10勝目、富士での勝利は脇阪寿一監督がGT最後の優勝となっている2012年以来となる優勝を飾った。ドライバーポイントでは20点(計39点)を獲得しトップ差8点のランキング5位に、チームポイントでは23点(計54点)を獲得しトップ差8点のランキング4位に浮上した。次戦は、10月24日(土)・25日(日)に鈴鹿サーキットにて第6戦として開催される。

■事前情報

 前戦では苦しみながらも9位で貴重な開幕からの連続ポイントを獲得したDENSO KOBELCO SARD GR Supra。シリーズ後半戦の最初となる第5戦の舞台となるのは、今季開幕戦と第2戦が行われた富士スピードウェイ。人数と観戦エリアや場内イベントが制限されているが、久しぶりに観客を迎えての開催となる。

 場内イベントとしては室屋義秀選手によるフライトパフォーマンスを予定。10月3日(土)午前に公式練習、午後にノックアウト方式(Q1、Q2)の公式予選で、4日(日)決勝は13時30分スタートの300km(66周:約2時間)で争われる。ドライバー交代を伴うピットストップは1回が義務付けで、今回のウエイトハンディは現獲得ポイントの倍となる38kgを搭載する。

 ウエイトハンディの重量増による富士でのタイムの落ち込みは、38kgだと約0.6~0.7秒となる。第1戦、第2戦では高いパフォーマンスを見せており、蓄積されたデータもある3回目の富士ラウンド。シリーズ前半戦を戦い、予選の速さと決勝時の強さが噛み合えば勝利が視野に入るポテンシャルを持つDENSO KOBELCO SARD GR Supra。

 チャンピオンシップの戦いに残るためにも、上位陣がウエイトハンディで苦しいこの富士での表彰台は最低限であり、勝利が望まれ、最大ポイントを稼げば一気にランキング上位に浮上できる位置につけている。是が非でも待望の今季1勝目をあげてチャンピオンシップランカーに名乗りを上げたいところ。

 新体制もレースを戦う毎に大きく成長を見せており、高いコミュニケーションと新しい試みに挑戦できる実力をつけてきており期待も高まっている。今回も脇阪寿一監督のもとチーム一丸となって力の限りを尽くし、粉骨砕身に勝利を狙っていった。

2020年スーパーGT第5戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)
2020年スーパーGT第5戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)

■公式練習走行

 3日(土)公式練習走行は9時15分から開始。曇りがちな秋晴れの爽やかな天候のなか、気温22度/路面温度30度のコンディションで90分間の混走セッションが開始された。開始からコースインしたヘイキは今シーズン富士は入国制限の影響で初走行。

 まずは持ち込んだタイヤのうち、ソフト側タイヤを装着してフィーリングを7周にわたって確認。ややクルマのバランスがアンダー傾向であったが、続いてハード側タイヤの評価を6周確認した。決勝に向けては、ソフト側タイヤのロングラン評価にプログラムの軸足を置いて進めていった。

 中山に交代して13周ほど走行して安定したラップを刻み、続いてハード側タイヤのリピート評価を赤旗中断を挟みながら7周実施。ふたりの評価ともソフト側の方が今回のコンディションに合っていて、クルマのバランスも良い方向とのこと。

 混走セッションではヘイキが最初のアウティングでマークした1分29秒926の13番手となった。10分間のGT500単独セッションでは、アタックシミュレーションを中山がハード側タイヤで実施。丁寧にタイヤを温めた中山は、5周目にベストタイムを刻み、公式練習走行ではトータル40周を走行。まずまずの出だしとなる1分28秒787の5番手となった。

■公式予選

■Q1:中山が僅差の争いとなったQ1を7位で突破

 3日(土)15時11分に始まったQ1開始時点で気温21度/路面温度30度の曇り空。路気温は徐々に下がり、肌寒ささえも感じるコンディション。残り8分ほどでコースインした中山は、公式練習走行でグリップ感と安定感のあったソフト側タイヤを装着。

 丁寧にじっくりとタイヤに熱を入れていき、4周目にトラックリミットオーバーでタイム採択されずも、5周目ラスト1周に懸けた中山は渾身のアタックを見せた。セクター1で自己ベストをコンマ1秒削り、セクター2ではコンマ8秒も削る気合いの走り。最終セクターも38秒台に入れて1分28秒382を叩き出し、僅差の争いとなったQ1を7位で突破して見せた。

■Q2:ヘイキがふたつ順位を上げる5番グリッドを獲得

 Q2開始時点ではさらに気温が下がり、曇天となり日が当たらず気温20度/路面温度28度に。インターバルの間に若干のセット調整と中山の走行データとアドバイスを参考にクルマに乗り込んだヘイキ。Q1を走った中山のアドバイスに従って丁寧にタイヤに熱を入れていき、午前中の公式練習走行では今季初の富士での走行でリズムに乗れない箇所もあったが見事に修正を入れてきた。

 5周目にアタックに入ったヘイキは、セクター1で中山のタイムをコンマ1秒削り、セクター2でもコンマ1秒削る速さを見せる。期待が高まった最終セクターも同じく38秒台に入れ込む好走を見せて、見事1分28秒088の5位と、Q1からふたつ順位を上げる3列目5番グリッドを獲得した。

2020年スーパーGT第5戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)
2020年スーパーGT第5戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)

■決勝
・ウォームアップ走行

 4日(日)11時40分から開始されたスタート前20分間のウォームアップ走行は、朝方の雨も乾き、曇りながら完全なドライ路面に。時折の日差しで体感としては暖かさも感じたが、気温21度/路面温度28度。

 まず中山が決勝スタートタイヤと同じ種類のソフト側ユーズドタイヤを装着して、2周クルマの状態を確認。続いてスタート担当のヘイキが3周目から確認を行った。ウォームアップ走行は、トータル12周を走行して、1分30秒650の8番手となった。

■決勝レース

第1スティント:ヘイキが3位浮上のパフォーマンスを見せる

 4日(日)13時30分決勝スタート時点は気温22度/路面温度29度のコンディション。5番グリッドから粉骨砕身に勝利を目指していったヘイキが駆るDENSO KOBELCO SARD GR Supra。ソフト側タイヤとはいえ、グリッド回りの他車に比べて硬めのタイヤ。波乱のスタート直後こそはポジションを下げたが、セーフティカー(SC)解除後から非常に高いドライビングパフォーマンスを見せた。

 11周目に19号車を1コーナーで、13周目に23号車を100Rで300車両をうまく使って仕留めると、15周目には12号車のペナルティもあって3位にまでポジションアップ。トップ8号車との間隔もスティント終盤に徐々に削っていった。次に勝負どころと目されるピットインを前に前後間隔やペース、他車の動向、300クラス集団の位置を確認しながらピットインのタイミングを図る脇阪寿一監督。

 メカニックもいつでもOKと臨戦態勢を敷いた。そして、他車が入り始め、ここぞとばかりにヘイキをピットに呼び戻し、トップ8号車との同時ピットインに勝負をかけた。

第2スティント:中山がアウトラップで8号車をかわしてトップを奪取

 ヘイキの速いインラップタイム、素早いピットワーク、中山のアウトラップとすべてでトップ8号車を上回るチームの総合力で、アウトラップのヘアピンでかわしてトップを奪取する快挙。見事に勝負どころで打ち勝って見せる強さを発揮した。

 レース後半は追いすがる2位との間合いを見ながら安定したペースで独走状態で周回を重ねる中山。だがラスト2周に燃料警告灯が点灯し、最終ラップの最終コーナーでガス欠症状が出て、あわやのシーンもあったが、無事にトップチェッカー。昨年第6戦オートポリス以来で通算GT10勝目、富士ラウンドでの勝利は、脇阪寿一監督がGT最後の優勝となっている2012年以来の優勝を飾った。

 ドライバーポイントでは20点(計39点)を獲得しトップ差8点のランキング5位に、チームポイントでは23点(計54点)を獲得しトップ差8点のランキング4位に浮上した。次戦は、10月24日(土)~25日(日)に鈴鹿サーキットにて第6戦として開催される。

2020年スーパーGT第5戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)
2020年スーパーGT第5戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)

■ヘイキ・コバライネン

「まわりに比べて硬めのタイヤだったので、スタートして序盤は温めるのが大変だったけど次第にペースも良くなってポジションを上げてユウイチさんに繋ぐことができ、さらにピットタイミングと作業もベストだった。8号車を抜いたときはTV映像に映ってなかったからタイムモニターで抜いたとわかった時には興奮したよ」

「また今季初めてファンの前で走ることができ、その前で優勝できてとても嬉しかった。パドックに入れずスタンドで応援してくれたスポンサーやファンの声援の力を本当に実感したよ。これでチャンピオンシップの争いに残ることができたと思うので、次の鈴鹿でも多くのファンの目の前で頑張りたい」

■中山雄一

「ピット作業もタイミングも良くアウトラップのヘアピンで8号車をパスすることができました。タイヤを温めるのは大変でしたが、最初の2周のラップタイムは他のマシンよりも良く、攻め切ることができたと思います。燃料は大丈夫と言われてましたが、残り2周で『No Fuel』の表示がコックピットに出てきて焦りました」

「チェッカー直前の最終コーナーでとうとうガス欠症状が出て、パニックになりかけましたが、なんとかマシンはゴールラインまで加速を続けてくれました。パッシングで喜びを表したかったですけど、とてもそんな余裕はなかったです(笑)。ファンの前で優勝することができ、表彰台の真ん中は本当に気持ち良かったです。チームのモチベーションもさらに上がったので、次の鈴鹿がとても楽しみです」

■監督 脇阪寿一

「チームを預かってから5戦目で優勝できるまでの道のりは色々な困難がありましたが、レースの神様に、君らの進んでる道、方向は間違えてないよ! って言って貰えた気がして嬉しかった。これから先、仲間たちの人生がもっともっとより豊かなものになるよう努めたい。サードチームとその仲間たちが大好きです。彼らを誇りに思うし、心の底から感謝しています」

「まだまだ強くなって成長していきましょう。さらに厳しい課題が待っているので一緒に乗り越えていきましょう。それと今季初めてファンをサーキットに招いての優勝は格別でした。まだパドックに入れなくてスタンドで応援して頂いたスポンサーのみなさんやファンのみなさん、ご声援ありがとうございました。鈴鹿でも良いレースをお見せできるよう、しっかり準備していきたいと思います」



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