予選の大クラッシュから大逆転優勝。MOTUL AUTECH GT-Rが鈴鹿連覇を達成【第6戦鈴鹿GT500決勝】

 初秋の10月開催となった今季2度目の鈴鹿サーキット決戦。2020年スーパーGT第6戦GT500クラス決勝は、ルーティンピットのタイミングに絡んだセーフティカーの導入の好機を完璧に活かた23号車MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組が、予選最後尾から前代未聞の大逆転劇を演じてシーズン2勝目と鈴鹿連覇を達成。ポイントスタンディングでも首位に躍り出る起死回生のレースとなり、2位にもカルソニック IMPUL GT-R佐々木大樹/平峰一貴組が入り、ニッサンGT-Rがワン・ツー・フィニッシュを飾っている。

 大規模なカレンダー改訂を強いた新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響を受け、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎの3会場のみで全8戦を争う2020年のスーパーGTシーズン。その後半戦となる第5戦からは制限付きながら観客の動員も開始され、第6戦鈴鹿の週末にもGTマシンの勝負を見届けようと多くのファンがサーキットに詰めかけた。

 前日土曜の予選では、燃料リストリクターのランクダウン調整を受けない8号車ATRA NSX-GTを先頭に、同じホンダ勢でダンロップタイヤ装着し、第3戦鈴鹿でポールシッターだった64号車Modulo NSX-GTがフロントロウに並び、ホンダ陣営のホームコースで新生FRのNSX-GTが躍動。各陣営ともシーズン2基目投入のタイミングで、まずは先手を獲ることに成功した。

 一方、3番グリッドの19号車WedsSport ADVAN GRスープラを挟んで、4番手にカルソニック IMPUL GT-R、5番手にCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rを送り込んだニッサン陣営は、予選Q1で優勝候補の一角だった第3戦鈴鹿ウイナー、23号車MOTUL AUTECH GT-Rがクラッシュに見舞われる不運で最後尾グリッドに。

 幸いエンジン交換には至らず、すでに2基目だった23号車はペナルティを免れはしたものの、悲願の鈴鹿連覇、シーズン2勝目に向けては厳しい道のりの決勝となる。

 また、すでに5台が”燃リスダウン領域”にいるランキング上位のトヨタ陣営は、次戦以降のウエイトハンデ半減後の戦いを睨み、ここでいかにポイントを稼げるかを目指してレースを戦う構図となった。

 終日快晴に恵まれた秋晴れのサーキットは前日より風が強まり、ホームストレート上は山側からの吹き下ろしで追い風に。気温20度、路面温度31度、湿度52%のコンディションで、15台の隊列は13時ちょうどにフォーメーションラップへと向かっていった。

 ローリングスタートで1コーナーへと突入したポールシッターの8号車ATRA野尻智紀を先頭にクリーンな立ち上がりを見せるが、5番手の3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平が16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀と、予選のミスから挽回を期す38号車ZENT GRスープラの立川祐路にかわされ、7番手に後退する。

 さらに4周目には日立オートモティブシステムズシケイン進入でRed Bull NSX-GTを捉えたZENT立川が、早くも5番手に進出。3番手争いを繰り広げる19号車と12号車に迫るべく、自己ベスト連発でペースを上げていく。

 するとその気配を感じたか、5周目のホームストレートで12号車カルソニック IMPUL佐々木がWedsSport ADVANの国本雄資を攻略し3番手に上がると、逃すまいと鬼気迫る追撃を見せる立川は、GT300後方集団が絡み始めた7周目の1コーナーでアウト側からWedsSport国本を仕留め、4番手へと上がってくる。

 一方、後方の燃リスダウン組の攻防では、11番手スタートだったウエイトハンデ92kgの37号車KeePer TOM’S GRスープラのニック・キャシディと、同じく12番手発進の36号車au TOM’S GRスープラ サッシャ・フェネストラズのTOM’S勢がタッグを組み、早々2周目に14号車WAKO’S 4CR GRスープラをオーバーテイク。さらに10周目から11周目にかけて17号車KEIHIN NSX-GTをもパスしていき、序盤からトップ10圏内に這い上がってくる。

 10周を過ぎた頃から2番手を走る64号車Modulo NSX-GT伊沢拓也のペースがじりじり落ち始めると、12周目の1コーナーでカルソニック IMPUL佐々木が前に出る。抜かれた伊沢のすぐ背後に立川が迫るが、ここから粘りを見せたModulo NSX-GTはZENT GRスープラをなんとか抑え込み、ルーティンのピットまでポジションを守り抜こうと力走を披露する。

 その精神戦はピットウインドウが開いた19周目に決着となり、シケインのアウト側から仕掛けた立川がこの勝負を制し3番手を手にする。ときを同じくして、ピットロードでも大きなアクシデントが発生した。

 100号車RAYBRIG NSX-GT牧野任祐を追走してピットへと向かったKeePer TOM’Sキャシディが、その速度制限トラップ手前でRAYBRIGに追突。100号車のリヤは大破し、37号車も右フロントを破損するダメージを抱え、RAYBRIGはタイヤ交換と給油作業を経てガレージインとなってしまう。

 翌周には8号車ARTAと36号車au TOM’S、その翌周には12号車カルソニック IMPULや64号車Modulo、22周目には38号車ZENTなど上位勢が続々とピットへ向かうなか、最後尾スタートでピット作業を引っ張りステイアウトしていた23号車MOTUL AUTECH GT-Rが見た目上のトップに浮上する。

 するとこの瞬間、S字コーナーでGT300クラスの車両がスピンオフ。セーフティカー(SC)出動の可能性が高まると、23号車MOTULはすかさずピットロードへ。ピットレーン封鎖前にドライバー交代へ向かうと、予想どおり直後にSC導入が宣言された。

 これでコース上の各車はスローダウンでオーバーテイクが禁止されると、ルーティン作業で8号車をかわして暫定首位浮上に成功していたカルソニック IMPUL GT-Rの目の前に23号車MOTULの松田次生がコースインし、なんと大逆転で首位に立ち、先導走行のトップで隊列を率いることに。

 まさかの大逆転劇を演じたMOTUL AUTECH GT-Rを先頭にレースは27周目に突入し、リスタートが切られると、松田は1分49秒284の自己ベストで逃げ、2番手カルソニック IMPUL GT-R、3番手ARTA NSX-GTを抑えていく。

 一方、37号車KeePer TOM’Sのバトンを受け取ったばかりの平川亮だが、キャシディが引き起こしたピットレーンでの事故によりドライブスルーペナルティが課され、レース後半戦を戦う前に勝負する権利を失うこととなってしまった。

 35周を過ぎ、トップを走るGT-R同士の優勝争いが白熱するなか、17周目に最初のピットを終えていたポイントリーダーの14号車WAKO’S 4CR GRスープラが、最低周回数義務消化のため再び大嶋和也にドライバーチェンジするべくピットへ。さらに40周を前に、そのピット内でマシン修復作業を進めていた100号車RAYBRIG NSX-GTがコースへ復帰し、山本尚貴が最後尾ながら今後を見据えたデータ収集を進めるべく走行を再開させる。

 レースは残り10周を切り、路面温度も25度まで低下したものの、首位を行くMOTUL松田は安定したレースラップを刻み、2番手に4.616秒のマージンを築いて52周のトップチェッカーを受けた。予選Q1のクラッシュにより最後尾スタートの地獄を味わった23号車が、起死回生の大逆転で鈴鹿2勝目を飾ると同時に、ポイントを50点として選手権リーダーへと躍り出ることに。

 2位には今季ここまで速さを披露しながらも、アクシデントやトラブルなど苦しい展開に泣かされてきたカルソニック IMPUL GT-Rが続き、ニッサンGT-Rがワン・ツー・フィニッシュを達成。3位はARTA NSX-GTがシーズン2度目の3位表彰台に上がり、猛追してきた3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rを抑えてGT-Rのポディウム独占を阻止する結果となった。



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