Max Racing
レース結果報告書
2020 SUPER GT Rd.5 富士スピードウェイ
日時 2020年10月3~4日
■車両名 たかのこの湯 RC-F GT3
■場所 富士スピードウェイ
■ゼッケン 244
■監督 田中哲也
■ドライバー 久保凜太郎/三宅淳詞
■チーム MaxRacing
■リザルト 予選21位/決勝19位
コンマ1秒の壁。シビアさを増すGT300の戦い
今シーズンからスーパーGT GT300クラスに参戦する新チームMax Racingのレースレポートを熱血田中哲也監督の目線でお届けします。メンテナンスはつちやエンジニアリングとRS中春がジョイントして担当。監督を含めて経験豊富な体制ですが、ドライバーはスーパーGTへ1シーズンぶり復帰の27歳久保凜太郎と、FIA-F4で2019年ランキング2位となった21歳三宅淳詞がコンビを組みます。
若いふたりをどれだけ成長させられるかが、今シーズン、チームの大きなテーマでもあります。上位にはGT500経験を持つドライバーが名を連ね、超ハイレベルとなっているGT300だけに、挑戦しがいのあるフィールドだと言えるでしょう。
今季の変則シリーズ日程のなかで第5戦は3回目の富士です。予選では第3戦鈴鹿が4位、第4戦もてぎが8位とコンスタントに上位グリッドを占めてルーキーチームながら、速さをアピールしてきました。
しかしながら、その好位置を決勝結果に結びつけることができていません。ライバルがウエイトハンディを多く積むなか、車両特性的にあまり得意とは言えない富士においてもポイント獲得が期待されます。
しかし、いまのGT300はそれほど甘くないと哲也監督は言います。「GT3は特にそうですけど、チャンピオンを争うトップチームはウエイトを積んでもそれほど遅くなりません。ワンメイクタイヤであればウエイトが直接タイムに響くでしょうが、開発タイヤを履いていれば、そのウエイトに合わせることができます。彼らはウエイトを積んでもトップ10を狙えますし、失敗しても10何位くらい位置にはいる」
第3戦富士においてトップ10を目指すのは、かなり困難なミッションとなることが予想されていました。10月3日土曜日、午前の公式練習では、凛太郎がニュータイヤを履いてのタイヤ選択を任されました。
「ラウンド2富士のあと、鈴鹿、もてぎと走って、もてぎで良かった部分に富士でも使えそうなところがありました。(エンジニアの土屋)武士さん、河瀬(和弘)さんと相談して、それを持ち込みセットに盛り込んでもらったら、格段に乗りやすくなりました。しかし乗りやすいけども意外にタイムが出ない」
「セクター3のタイムは上がったもののトータルすると速くない。セクター3が曲がりやすくなった分、これまで得意だった高速コーナーがちょっと落ちたかもしれません」(凛太郎)。
三宅がクルマを引き継ぎ、セットアップを進めましたが大きな改善はできませんでした。第4戦もてぎの前に、BoPが見直しとなり吸気リストリクターが40mm✕2から38mm✕2へと絞られたことも影響していそうです。
路面ができる前のセッションの前半に2種類のニュータイヤを確認して、GT300専有時間にニュータイヤを投入しなかったこともあり、タイムは三宅が記録した1分38秒327がベストで23番手。タイムアタックしなかった結果ではありますが、Q1突破のボーダーに対して厳しい戦いが予想されました。
今回も予選はQ1をA、Bグループに分けて、それぞれの上位8台がQ2に進出する方式です。Q1を担当するのは凛太郎。ちなみに彼はスーパー耐久開幕戦富士24時間でクラス優勝、十勝の86レースで優勝するなど目下、波に乗っています。
計測1周目1分45秒619、2周目1分44秒199、そしてアタックの3周目が1分37秒673。これがベストタイムとなり、11番手。Q2進出の8位までに入ることができませんでした。ちなみに8位とのタイム差は0.094秒。凛太郎のセクター1とセクター2のベストは4周目で、3周目との比較で両セクターの差は足すと0.1秒以上でした。
つまり路面温度の変化もあり、ウォームアップのタイミングが凛太郎の想像とわずかにずれてしまったのです。仮想ベストラップをつなぐとQ1突破できていました。それくらい今のGT300はシビアな戦いとなっています。
「チームもドライバーもがんばってくれましたけど、コンマ1秒が大きな壁になってしまいました。決勝に向けても楽観できる材料はありません。しかし、ドライバーはふたりとも速いので、チームが一丸となって、ミスなく最善を尽くそうとミーティングでは鼓舞しました」(哲也監督)
21番グリッドからのスタートを担当するのは凛太郎です。10月4日日曜日午後1時半、今季初めてグランドスタンドのファンの前でフォーメーションラップが開始されます。スタートが切られるとオープニングラップで凛太郎は順位を上げて19番手に。ここでアクシデントが発生したためセーフティカーが導入されて、5周目にリスタート。ここでも凛太郎は1台をパスして18番手に浮上し、さらに上位を目指します。
順位を上げることともに重要なのが、タイヤの温存。ペースを維持しつつタイヤをいかに守るのかがチームとしての課題でもあります。第3戦鈴鹿でも第4戦もてぎでもスティントの終盤にペースを落とす状況がありました。レース全体で平均ラップを上げるためにも前半スティントをできるだけ引き伸ばして、レース前半と後半でタイヤを均等に使うことを目指しました。
ところが、序盤のバトルの最中にリヤセクションを軽くヒットされたことで、リヤバンパー部が破損。これによりポストからマシン修復を指示するオレンジボール旗が掲示されてしまいます。不幸中の幸いだったのが、これが19周経過時点であったこと。規定周回数をクリアして21周目にルーティンのピットイン。タイヤを4輪交換、給油、ドライバーが三宅に代わり、カウル補修を済ませてピットアウト。
ピットでのタイムロスは最小限で済み、カウル補修のためだけのピットインは回避することができました。三宅はこの結果、40周のロングスティントを担当することになりました。今回使用したヨコハマ・タイヤは耐久力の点で改善されていましたが、ここまで長い周回数のテストはしていないので、三宅にすべてを託すよりほかありません。
スティントの前半から中盤はコンスタントにラップタイムを刻んでいましたが、レース残り5周というところで1分40秒後半から41秒台にタイムが落ちて2台に抜かれて19位でゴールしました。
「極端に予選重視のチームがいるわけでもなく、厳しい展開は予想していました。でもドライバーはそのなかで一生懸命がんばってくれてミスもなかった。チームもタイヤ交換がすごく速くなってきている。チーム全体としてしっかりしたレースをした結果です。タラレバを言うとしても、オレンジボールが出たことで、予定した周回より短くなったので、その分、タイヤが厳しくなった。そこがもし予定通り引っ張れたら、第2スティントの最後のタレがなくて、あと2~3台前にいった可能性はあるかなという程度。それでもレクサスRC Fのトップではあります」
「次の鈴鹿に関してはRC Fが得意で、なおかつウエイトの差もあるので、なんとかしたい。いや、絶対になんとかする気持ちで臨みます。力んで空回りしても仕方ないですけど、4年に一度あるオリンピックとおなじような気持ちです。オリンピック選手はその4年に一度しかないチャンスを、絶対にモノにしようと臨みます。プレッシャーはあるでしょうけど、打ち勝たなければいけない。それとおなじで気持ちを強くもって臨もうとチームに対して今回のレースが終わった後、伝えました」(哲也監督)
今季全8戦のうち、5戦が終了。次に控える10月23~24日の第6戦鈴鹿はダウンフォースが武器のRC Fにとって最も得意とするコース。しかもこの第6戦がウエイトハンディ最大となるラウンドであり、第7戦もてぎではそこから全車ウエイトが半減します。ルーキーチームとして、悲願の初ポイント獲得に向けて最大の好機を迎えるのです。Max Racingの挑戦は続きます。
久保凜太郎のコメント
「予選A組は速いクルマがそろっていたので(Q1突破は)きついなと思っていました。しかし、ベストをまとめられていればあとコンマ2くらい上がったので、そこは反省点です。レースでは、ブレーキングで追突される感じがあったのですが、軽くだったのであまり気にしていませんでした。オレンジボールが出た時点ではパーツはすでに飛んでしまっていたのですが、予定よりピットタイミングを早めるしかありませでした」
「シリーズ前半戦はタイヤのタレで苦労していたので不安はありましたが、順位としては追い上げるしかないので序盤からタイヤをけっこう使ってしまいました。その結果、早めにタレてきたんですけど、ボクの前にもっとペースが落ちたクルマが2~3台いたので、あのオレンジボールがなければ、もうちょっと追い上げてから三宅に渡せたと思います」
「三宅もしっかり40周走ったので、もう少しスティントを短くできたら最後抜かれることなくレースができたはずです。ボク自身の流れはいいですし(笑)、鈴鹿では大きな結果が獲れるように準備します。体重を1~2kg落とします。BoPで絞られていますし、三宅は軽い(笑)。ボクが重いと足を引っ張ってしまうので」
三宅淳詞のコメント
「今回のレースに臨むにあたり、前回の富士はQ1を突破していて、ライバル車がさらに重くなっているので、もうちょっといい状況でレースができるかなと思っていました。公式練習でボクが乗ってからも、タイムが出る感じがなくて、原因がわからないままレースウイークが進んでしまったような感じでした」
「決勝はオレンジボールの影響で、ボクがロングスティントになってしまいました。ロングになれば当然、タイヤには厳しいと予想して、ペースコントロールしていたつもりですけど、想像以上にタイヤが摩耗してしまいました。スティントの序盤、ピットから出てくるクルマを抜くためにちょっとプッシュしたのが、最後ツケになって返ってきたフィーリングです」
「残り5周で数台に抜かれてしまいました。リヤのグリップがなくなってしまい、トラクションが掛からないので出口が遅く、ストレートで抜かれました。次戦の鈴鹿に向けて、前回の鈴鹿では上位を走れていますし、ボク自身はQ1ですけど2番で通過できているので、今度こそポイントを獲れるようにまとめていきたいなと思います。油断はできないですけど、一番チャンスがあるのは間違いありません」
from Max Racing 2020スーパーGT第5戦富士 レースレポート
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