HOPPY team TSUCHIYA
レース結果報告書
2020 SUPER GT Rd.6
鈴鹿サーキット
■日時 2020年10月24〜25日
■車両名 HOPPY Porsche
■場所 鈴鹿サーキット
■ゼッケン 25
■監督 土屋武士
■ドライバー 松井孝允/佐藤公哉
■チーム HOPPY team TSUCHIYA
■リザルト 予選20位/決勝9位
収穫の秋がやってきた♪
こんにちは、ボクはホピ輔(本名HOPPY Porsche)です。今回もボクがHOPPYチームつちやの戦いをレポートします。10月24~25日、スーパーGT第6戦は鈴鹿サーキットで開催されました。第3戦と同じ鈴鹿です。
第3戦の時も言ったような気がしますけど、ここがボクは苦手です。1~2コーナー、S字、逆バンク……。嫌いな中高速コーナーが連続します。リヤにエンジンを積んでいるので慣性モーメントが大きくて、どうしてもセットアップだけではカバーできない部分があるのです。
第5戦富士が終わった後、ボクは監督兼エンジニアの土屋武士さん、データエンジニアの木野竜之介さん、ドライバーの松井孝允くんたちと富士のスポーツ走行で今季2度目となる秘密特訓をしてきました。でも、これで鈴鹿に向けて一気に速さを身に着けたわけではありません。武士さんも「楽しみだけど……あんまり鈴鹿の結果は見込めないかな」といつになく弱気発言……。
この富士のスポーツ走行でやったのは、前回第5戦富士はあまりにエアロに寄り過ぎたセットアップだったためパックで走るのが苦しかったから、メカニカルグリップとエアロのバランスをとること。「このテストで速くはなっていないけど、試したいことは全部試せた。やるべきことがはっきりして、方向性が絞り込めた。ネタ集めはそろそろ打ち止めかな。趣味の時間はそろそろ終わりかも……(苦笑)」(武士監督)。
『趣味の時間』ってどういうことなのかボクにはよくわからないけど、しっかり前進はできているということみたいです。
土曜日の公式練習は前回同様孝允くん中心でタイヤ選択とセットアップを進めて、佐藤公哉くんがそれを確認する分担で進めました。スポーツ走行で探してきたアイテムのチェックから始まって用意していたメニューをこなして、富士で見つけた方向性で合っていることも確認できました。それもワンノッチの変更でいい方向にもいけば、悪い方向にもいくようなシビアなところいて、これはバランスが取れていることを示すいい徴候です。
しかし、孝允くんが乗った午後の予選Q1ではB組10番手のタイムでQ2に進出することはできませんでした。あとコンマ2秒足りなかった。悔しいです。しかし、この結果にも武士監督はポジティブでした。
「流れは全然悪くないよ。フリー走行で確認した方向性を予選でも進めることができた。それでも足りなかったのは、使いたかったソフト系のタイヤが決勝を考えると使えなかったから。今日の路面温度に対して、ポルシェ用としては合うものがなかったというだけ。基準タイヤはしっかりできているから、レースを走ってタイヤに対して何をすべきかさらにネタを拾って帰りたい」(武士監督)。
今回のヨコハマさんのタイヤは前回の富士と基本的に同じでした。戦いがシビアになってきているだけに、ここから先しっかり共闘していくことがより一層大事になるはずです。日曜日の決勝。今回は公哉くんがスタートを担当します。孝允くんの方が燃費はよくて、先に公哉くんが乗った方が作戦に自由度が出ることも武士監督がこれを決めた理由でした。
20番グリッドからスタートした公哉くんは1周目に3台を抜き17番手につけました。さらにスティントの序盤から前の集団のペースが落ちたため、追いついて渋滞に巻き込まれました。みんなタイヤが苦しそうです。それに比べたらボクのタイヤは元気。どうやらここに富士秘密特訓の成果が出たみたいです。抜きたいけど、あんまり前にくっつくとダウンフォースが抜けてしまうし、ストレートで並びかけるのも無理。公哉くんもボクもガマンの展開が続きます。
「タイヤどうする?」武士監督が、公哉くんに無線で呼びかけます。スタート前に決めていたのはリヤタイヤ2輪交換か、ひとつ硬めのタイヤに4輪交換するか、公哉くんの感触で決めるということ。「4輪交換でいきたいです」と公哉くんは答えました。ピット作業時間は伸びてしまうし、スティントの序盤はタイヤが温まりづらく厳しいですけど、レース終盤にその方が勝負できるとの判断でした。
もうひとつスタート前に決めていたのは、積極的に早めに動くということ。グリッドが後ろの方なので動きやすこともあるし、このところセーフティカー(SC)が出る展開が多くて、SC後にルーティンピットをこなすと一気にポジションを失うことがあります。そのリスクを避けるためでもあります。
規定周回数ぎりぎり最も早いタイミングとなる17周目に公哉くんがピットイン。孝允くんに交代します。20周目にコースアウトする車両があり、危惧していた通りSCが導入されました。25周目リスタートが切られて、SC導入の前にルーティンピットを消化できていなかった車両がピットインすると12番手に浮上していました。
ここからが今回のレースにおけるボクのハイライトシーンです。38周目には2号車をパス。40周目には60号車、46周目には65号車をパスしました。ボクがちゃんとバトルして順位を上げたのは、これが初めてです。今シーズン初めてというだけでなく、新車だから生まれて初めて。やっぱりレースは抜けると気持ちいいですね!
抜いたのはすべて、ヘアピンの立ち上がりから200R(通称松ちゃん)からスプーン入口。タイヤが元気だったからトラクションがしっかりかかって、その立ち上がりスピードの差で抜くことができたんです。RRレイアウトのトラクションをようやく武器として使うことができました。これも横浜ゴムさんのおかげです。それに、もちろん孝允くんが冷静にドライビングを組みたてくれたおかげでもあります。9位入賞。一番苦手なはずの鈴鹿で今季2度目のポイントを獲得することができました。
「ひょいひょいっと、落ちてきたものが拾えた感じだったね。20番手から入賞を目指すには外乱を利用するしかない。ホピ輔はストレートが遅くて、自力で抜いていくことができないから、どこのポジションに置いておくかが大事だと考えたんだ。2輪交換の選択肢もあったけどもライフの心配もあったし、ウエイトハンディで重たいクルマが多いから、後半にタイヤが厳しくなってチャンスがくるだろうと見越していた。公哉もいい判断をしてくれたね」
「第3戦の鈴鹿はまだ根拠もなにも築けておらず、予選は普通に走ってビリの方。トライして方向性はみたけれどスピードはなくて抜かれるばかりのレースだった。でも今回は重たいクルマはいたけれど、抜くレースが当たり前にできていて、第3戦と比べたら、とてつもないビックステップを踏んで高い戦闘力を発揮して、正反対のレースができた。富士では孝允のブレイクスルーもあって、扉が開いた実感があった。さらに今回、一番苦手な鈴鹿でこういうレースができたことでチーム力が上がっていることを証明できたと思う」(武士監督)
レース前にもいろいろ拾いたいと言っていたけど、結果もしっかり拾えたということだね。ところで、さっきから方向性という言葉がいっぱい出てくるけど具体的にはどういうこと?「ホピ輔のスイートスポットにどんどん近づいているということだよ。ウチのやり方はホピ輔を作った人が何を考えているのか、頭の中を覗きにいくような作業を続けて答えを探してきたんだ。そうやっていくと、ひとつ答えが出ると次にやることがどんどんみえてくるんだ」
「ホピ輔は次のもてぎが得意だから、それを前にやりたいことを全部やっておきたかった。日曜のウォームアップでも試しているし、予選から決勝でバネも換えている。ロールバーとバネの受け持ち比率を変える程度だけど。もてぎでやるべきことはだいたいみえた」(武士監督)
なんか次のもてぎに向けてプレッシャーを感じてきました。孝允くん、公哉くんと力を合わせてボクもがんばりますので、11月7~8日の第7戦もてぎで引き続き応援よろしくお願いします。
松井孝允のコメント
「公式練習ではセットを変えて少しずつはよくなるのですが、問題を解消できるか確信はありませんでした。そのなかで、予選に向けては武士さんや木野さんが、よく曲がる予選一発が出るセットをつくってくれて手応えがありました。硬い方のタイヤを選んだのでQ2に進出することはできなかったもののいい予選でした。決勝では、佐藤選手から『後半に勝負できる』とインフォメーションをもらっていました。スティント前半はついていくのもきつい場面もありましたが、レース後半2号車と60号車を松ちゃんで、65号車はスプーンのブレーキングで抜くことができました。トラクションがよかったので、ヘアピンの立ち上がりで合わせて並びかけることができた。タイヤのグリップが落ちず、それができるクルマだったのは間違いありません」
「展開に恵まれた面もありますが、抜くことができましたし、そのなかでいいところとまだ改善すべきところと感じることができました。武士さんもそれをわかっていて、クルマが進化しているので、結果がついてきているのだと思います。次のもてぎはもちろん狙っています(笑)。しかし、前回のもてぎは今シーズンのボクのなかで最も荒れたレースとなってしまったので、富士、鈴鹿は淡々と走ると決めていました。武士さんから日頃言われていることでもあり、プロのドライバーとしてどのようにアプローチしなければいけないか考えながら走っていました。自分自身が(テンションが)上がって、タイヤを使ってしまえば後半きつくなる。ここ2戦でそれはしなくなりました。次のもてぎにも、それを継続して自信を持って臨みたいと思います」
佐藤公哉のコメント
「(決勝について)今日は暖かったですし、周りもタイヤが厳しくなるのはみえていました。自分の前を走っているクルマは序盤からベースが上がらず、タイヤも楽ではなさそうだったので、こちらにアドバンテージがあると感じました。そのなかでも、集団のなかで走るのが苦手なクルマの特性もあって、オーバーテイクは難しく、それにタイヤ交換の作戦としては2輪交換の可能性もあったのでタイヤの面倒をみる必要もありました。前が混んでいたので手前で入りました。ペースは悪くなかったですし、走るごとにクルマの戦闘力が上がって、前回の鈴鹿とは比べ物にならないくらいです。チームと、こうして抜いてきてくれた松井選手に感謝しています」
「前回のもてぎではポルシェの特性もあって予選2位のポジションを獲ることができました。そしてウエイトが効くコースでもあります。しかし、結果が期待できるもてぎだからといって特別なことはせず、日頃の生活からいつも通りのことをして、レースでもいつも通りのことができたら勝手に前にいけると考えています。今年ボクが掲げているテーマとして身体づくりがあります。鍛えて身体に余裕をもたせた方がレース中にも呼吸が安定するとか、頭が冴えるとか、いい効果がある気がするので、GP2時代のメニューを引っ張りだしてきてやっています。追い込んでいれば、『オレはこれだけやっていのだから負けない』と、気持ちも変わってくると思うので。その上で、もてぎも富士も特別なことをしようとせずに、チームと松井選手と力を合わせて走るだけです」
土屋武士監督コメント
「苦手な鈴鹿で今シーズン一番落ち着いてレースウイークを過ごせたと思います。チーム全員がそれぞれの役割をスムースにやり切ってくれたからこその、今季2度目の入賞だったと思います。しかし、着実に進歩はしているものの、ポルシェにとって今シーズンは、茂木以外での戦闘力が他車に比べ劣っているのが明確なことが残念でなりません。とはいえ、次戦は茂木のレース。ポルシェの、そしてチームのポテンシャルを引き出せば上位の争いができるサーキットですので、今からすごく楽しみです。これまで通りしっかりと準備をして、やるべきことをやり切って戦いたいと思います。次戦も応援よろしくお願い致します!」
from HOPPY team TSUCHIYA 2020スーパーGT第6戦鈴鹿 レースレポート
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