HOPPY team TSUCHIYA
レース結果報告書
2020 SUPER GT Rd.4
ツインリンクもてぎ
■日時 2020年10月3〜4日
■車両名 HOPPY Porsche
■場所 富士スピードウェイ
■ゼッケン 25
■監督 土屋武士
■ドライバー 松井孝允/佐藤公哉
■チーム HOPPY team TSUCHIYA
■リザルト 予選10位/決勝11位
ボクはフォーミュラカーになった!?
こんにちは。ボクはホピ輔(本名HOPPY Porsche)です。ボクがスーパーGT第5戦富士のレースレポートをお届けします。10月3日土曜日公式練習……の前、2日金曜日からボクの“戦い”は始まっていました。
もちろん金曜日には走行はありません。搬入日です。いつものようにピット設営が終わって、トランスポーターから降ろされたボクがピットに収まり、メカさんが暖機を始めたら、なんかボクの調子がおかしい。エンジンが突然、ストンと止まってしまうのです。工場では元気だったのに本番を前にどうしたんだろう(汗)。
ドイツ本国と連絡を取り合いながらトラブルシュートしていくのですけど、なかなか原因にたどりつきません。遠隔で確認しながらの作業で時間がどんどん経過して、これはエンジン交換しかないと結論に達したのは午前1時。エンジンを載せ替えたら、アライメントも取り直しになるし、メカの皆さんは走る前なのに完全な徹夜。本当にごめんなさい。
いきなり想定外の作業で予定が大きく狂ってしまいましたが、走らせることについて今回こそは初志貫徹、立てた計画通りに進めると土屋武士監督は決めていました。
「今回こそ」と言うのには理由があります。前戦もてぎの前に第3戦鈴鹿決勝で発見したセットアップの方向性をスポーツ走行で確認。その流れで松井孝允くんを軸にしてもてぎのレースに臨もうとしたのですが、予選2番手の好位置を確保したことで確実にリザルトを残したいという気持ちに武士監督自身が駆られて、予定を変更してポルシェに慣れている佐藤公哉くんにウォームアップのセットアップ確認を任せて、スタートも公哉くんに変更。
どちらかと言えばコンサバな方向にいったことで、その結果生じたわずかなズレが最終的に大きく響き8位に終わっていました。ボクにはよくわからないけど、気持ちが守りに入ったりしたり、人間には微妙な気持ちの変化が流れを左右することがあるんですね。
「もてぎのあと孝允とは、じっくり話をしたんだ。その話の中身は深過ぎるので置いておくとして、もてぎでは悪循環になぜはまってしまったのか、その理由を説明して理解してもらうことができたと思う。その上で、改めて孝允に公式練習のスタートでのセットアップを任せて、公哉がその煮詰めを担当。Q1は孝允、Q2は公哉、スタートも孝允と決めていた。なおかつ公式練習はコンサバにならずに、エンジニアが試したいことをどんどんやっていく方針で臨んだ」(武士監督)
テスト走行の機会がないから、公式練習もボクをセットアップする方向性を探る時間に使わないとトップには追いつかないと武士監督は考えていたみたいです。でも、それって、ドライバーにとっては、けっこう大変なことだと想像がつきます。スーパーGTだとふたりのドライバーで走行時間をシェアするから、セットアップがどんどん変わっていくとなると、自分が乗った時とは、予選本番で全然違うクルマになっている可能性もあります。
「そうなんだ。今回その点ですごく孝允がいい仕事をしてくれた。孝允が公式練習の最初で示した方向性はちょっと違っていて、公哉が乗ってから元に戻して、予選に向けてはその方向で、もともとやりたかったことを全部突っ込んだ。確認もしていないし、バランスは厳しいかもしれないけどやってしまえと(笑)。すごく難しいクルマになったと思うけど孝允はQ1を突破してくれた。相変わらずストレートはすごく遅いのにね」(武士監督)
「難しい」と武士監督が指すのは、ボクがすごくオーバーステア傾向のバランスになったこと。ブレーキをちょっとでも残したら、リヤが出てしまうからハンドルを切れないようなセットで予選は走りました。こういうバランスを孝允くんは嫌いだよね?
「そう。孝允が(マザーシャシーで)ばんばんポールを獲っていた時とは真逆のクルマだね。だから右利きなのに左手でお箸を持つようなもの。その修正をこの短期間でしかもプレッシャーの掛かる状況でよくやってくれたと思う。チームとしてもそこから逃げていた部分がある。悩んでいる孝允より公哉を中心で組み立てて……。孝允にとって、先のことを考えたらそのプレッシャーに打ち勝たないとプロの世界で生き残れない」(武士監督)
Q1は1分37秒412のタイムで孝允くんがB組7番手に滑り込み、Q2進出権を獲得。Q2は1分37秒239のタイムで公哉くんが10番グリッドを確保。連続ポイントゲットに向けて好位置を得ました。ただ、翌日の決勝でライバルたちを押しのけて前に行く力がボクにはまだなかったみたいです。
単独だといいペースで走れるのに、バトルになって前のクルマにくっついて走ると、特に前側のダウンフォースが効かなくなってしまい、追い抜くところまで持っていけません。そうやってもたもたしていると、BOP(性能調整)もあってストレートは遅いから、後ろからきたクルマには簡単に抜かれてしまう。孝允くんも公哉くんもストレスが溜まったと思うな。
でも収穫もけっこうあって、ヨコハマ・タイヤのタレはすごく少なくて、今回もボクは左2輪交換で走り切ることができたんだ。決勝結果はポイント獲得まであと一歩の11位でした。
「孝允のペースは落ちないし、本当はもっとピットタイミングを引っ張りたかったけど、ピットを終えたクルマが前に出てきたからピットに入れた。抜けないとロスになるし、空いているところがあったから。ずっと孝允がバトルしていたなかで、ダウンフォースに頼っているからツーリングカーなのにフォーミュラカーみたいなレースになっていたね。パックに入ると途端にタイムが出なくなってしまう。レース中もデータエンジニアの木野(竜之介)くんとずっとこのことについて話し合っていた。こういうクルマだと、こういう展開になるよねと」
「今後、メカニカルグリップとダウンフォースのいいバランスを見つけたい。それにホピ輔が言うようにタイヤが進化して、タイヤ選択で右往左往するような状況がなくなって、プラス方向の開発が進められる状況になったことも大きい。エンジニアとドライバーのコミュニケーションも深まって、ここから一気に前進できる。やりたいことがいっぱいあるし、次の鈴鹿に向けてはもっとネタを仕込みたいから、またスポーツ走行に行くよ」(武士監督)
えっ!? レースが終わったばっかりなのに?
「獲得ポイントが10点に達していなかったら、スポーツ走行のテストをしていいルールなんだよ。レースウイークだとさすがにできない内容の試したいこともいろいろあって、メニューはもう決まっているんだ」
データエンジニアの木野さんは自動車メーカー関係の開発経験があって理論の人。対する武士監督は乗って感じてその経験を積み重ねた感性の人。理論と感性、違うアプローチから同じ答えが導き出せることが武士監督にとってすごく面白いみたいです。それにボクがRRレイアウトでけっこう特殊だから、余計に面白いらしい。特殊って他と違うという意味だから褒め言葉だよね!?
「ドライバーふたりは抜いていけないから悔しいレースだったかもしれないし、本当にレースするには疲れるクルマだった思う。でもチームとしてはとてつもないスピードで成長できている実感がある。スポーツ走行のテストを通じて速いだけでなく強いクルマを目指して鈴鹿に向けて準備するよ」
武士監督の言葉でボクも勇気づけられました。今回、ポイントを獲れなかったことを気にしていたけど、監督にとってレースの中身は確実に進化が感じられるものだったみたいです。10月24~25日鈴鹿で開催される第6戦に向けてボクもさらにがんばりますから、応援よろしくお願いします!
◇松井孝允のコメント
「クルマ自体が前回からがらっと変わったので、アジャストしながら乗りました。全体を通して進化を感じることができてよかったです。Q1ではさらにダウンフォースを使う方向になっていたので、それを意識して乗ることで違和感はありませんでした。計測3周目にアタックに入りましたが少し失敗してしまい、仕切り直して、4周目、5周目とアタックにいき、そのなかでうまくまとめ切れました」
「決勝では久しぶりにスタートやらせてもらって、もてぎのセカンドスティントと今回のファーストスティントでどのようにクルマの状態、タイヤの状態が違うのか確認できました。スティントの終盤の路面状況でもてぎと同じような雰囲気もあったので、無線でそれを伝えましたけど、やはり後半は厳しかったようです。また、ダウンフォースで走るにクルマにした結果、前にクルマがいると厳しいということを戦っていてすごく感じました。単独ではいいのですけど、後ろについてしまうとすごく難しかったです。残る3戦ではすべてのレースでポイントを獲得したいと個人的には考えています。開幕戦の最後尾から、今はグリッドの真ん中あたりまできて、その次のレベルにステップアップできれば達成できるはずです」
◇佐藤公哉のコメント
「公式練習では走り始めを孝允さんにやってもらい、後半自分に代わって、大きな不具合なくクルマとコンパウンドの確認、それにレースに向けてのセット確認をしました。孝允さんが厳しい状況のQ1を突破してくれて、自分が走るチャンスをもらいました。ミスなくまとめられたとは思います。でも、あとでロガーデータを見たらAコーナーと100Rが孝允さんから遅れていて、Bコーナーの入口も少し余っていた。あとコンマ秒くらいは上げられたかもしれません。チームもいろいろなトライをしてくれて、運転の面でも走るほどに発見があります。順位にもそれが少しずつ反映されだしていて、まだ伸び代はあると思います」
「決勝では、前回もてぎで後半を担当した孝允さんから聞いていたのと一緒の苦しい状況がありました。ダウンフォースのおいしいレンジが狭く、速度域が下がることで走りにくくなりました。できる限りその状況で無線を通じて内圧を報告して、データを残したので、今後セットアップで対策できる部分があると思います。武士さん、木野さん、孝允さんと4人で話し合って、レースを追うごとによくなって戦えるようになってきている実感があります。
◇土屋武士監督コメント
「レースを追うごとに課題が見つかって、それをクリアすることで確実にポルシェの理解が進み、同時にリザルトも上がってきて前戦もてぎでは今季の初ポイントを獲得できました。同時にタイヤもどんどん進化してきてようやく戦える準備が整ってきたという印象で、今季3回目の富士スピードウェイでのレースでしたが、BOPの影響でストレートスピードが劣勢の分、ここ富士ではやはりレースは厳しい戦いになってしまいました」
「しかし今回のレースで孝允が、苦しんでいたポルシェのドライビングを攻略し、しっかりと仕事をしてくれたことで大きな収穫のある週末だったと思います。『苦しい時こそ成長できる』。チームとしても、ドライバーとしても、自分たちのレベルがどんどん上がっていることを実感できているので、非常に前向きにレースに取り組んでいれています。あとは、応援して頂いているみなさんが喜んでいただける結果を残すこと! 今シーズンも残り3戦となりますが、これまで通り課題をクリアして成長しながら、いい結果をお届けできるように頑張っていきます。次戦も応援よろしくお願い致します!」
from HOPPY team TSUCHIYA 2020スーパーGT第5戦富士 レースレポート
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