ピットタイミングが明暗を分けた鈴鹿決戦。Hitotsuyama Audi R8 LMSが今シーズン初優勝【第6戦鈴鹿GT300決勝】

 10月25日、鈴鹿サーキットでスーパーGT第6戦の決勝が行われた。GT300クラスはHitotsuyama Audi R8 LMSの川端伸太朗/近藤翼組がチームとして今シーズン初優勝、さらにそれぞれのドライバーもキャリア初優勝を飾った。

 2020年のスーパーGTは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、本来のスケジュールから3ヵ月遅れでシーズンが開幕。今季は富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎの3カ所でシリーズ全8戦が行われ、第6戦は第3戦に続く2度目の鈴鹿での開催となる。スーパーGTでは第5戦の富士から観客を迎え入れており、制限はあるものの鈴鹿のスタンドにもファンの姿が戻ってきた。

 真夏に行われた第3戦とは大きくコンディションが異なるなか、前日に行われた予選ではK-tunes RC F GT3の阪口晴南が自身初となるポールポジションを獲得。さらに2番手にはSUBARU BRZ R&D SPORT、4番手にGAINER TANAX GT-Rとダンロップタイヤ勢がトップ5に入る活躍を見せ、気温、路面温度の低い鈴鹿との相性の良さを発揮した形だ。

 さらに今回はシーズン最大ウエイトでの争いになるが、SUBARU BRZ R&D SPORT、GAINER TANAX GT-R、ARTA NSX GT3など上限100kgを積む重量級のマシンたちがウエイト感度が高いと言われる鈴鹿で上位フィニッシュを狙える位置につけてきた。次戦以降はウエイトハンデが減量されていくため、チャンピオンを狙うランキングトップ勢にとってはこの鈴鹿で少しでも多くのポイントを加算しておきたい。一方で、ランキング中〜下位のチームはタイトル争いへの生き残りをかけて、なんとしてもビックポイントを稼ぎたい一戦だ。
 
 また、前日の公式練習でクラッシュを喫してしまったたかのこの湯 RC F GT3はマシンのダメージが大きく、残念ながら第6戦はリタイアすることとなった。そのため、決勝グリッドには29台のマシンが並んだ。

 定刻13時、セーフティカー先導のもと、フォーメーションラップが行われた後、GT500クラスに続いてGT300クラスも決勝レースがスタート。ポールポジションのK-tunes RC F GT3を先頭に全車1コーナーを通過していく。3番手スタートのADVICS muta 86MCがやや苦しいか、1周目で先頭の2台と3秒近くの差が開いてしまった。後方では多少の順位の変動が見られたものの、大きなトラブルやアクシデントもなく1周目を終えている。

 4周目、4番手スタートのUPGARAGE NSX GT3がスロー走行。スプーンカーブでマシンを止めてしまった。GT300クラスの周回数で5周目、GT500のトップ集団がGT300クラスに追いつき周回遅れにしていく。ここから両クラスの混戦が始まった。

 レース7周目、トップ争いが急接近。K-tunes RC F GT3のテールをSUBARU BRZ R&D SPORTが捉え、最終コーナーの立ち上がりで横に並びかける。ストレートではK-tunes RC F GT3に分があり1コーナーでポジションが入れ替わることはなかったが、SUBARU BRZ R&D SPORTのステアリングを握る山内英輝の勢いは劣ることなく、2コーナーでK-tunes RC F GT3新田守男のインに飛び込み再び横に並ぶ。サイドバイサイドのバトルはS字コーナーのふたつ目で山内に軍配が上がり、トップ交代。

 一方、抜かれたK-tunes RC F GT3はペースが落ちてしまい、同周には3番手、さらに後続にも先を許してしまい、13周目には8番手までポジションダウンしてしまった。まもなくレース全体周回数の3分の1を過ぎようかという時点で、トップ10はSUBARU BRZ R&D SPORT、ADVICS muta 86MC、GAINER TANAX GT-R、Hitotsuyama Audi R8 LMS、RUNUP RIVAUX GT-R、TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(31号車)、リアライズ 日産自動車大学校 GT-R、埼玉トヨペットGB GR Supra GT、グッドスマイル 初音ミク AMG、PACIFIC NAC D’station Vantage GT3の顔ぶれ。トップのSUBARU BRZは上位陣では1台だけ1分59秒台で周回を重ね、2番手には5秒以上の差をつけた。

 GT300の周回数で17周目、ここからピットへ入るマシンが現れてくる。トップ争いで先に動いたのはADVICS muta 86MC、18周終わりでピットに入りタイヤ交換、ドライバー交代を済ませて再びコースへ。

 レース21周目、埼玉トヨペットGB GR Supra GTがS字でコースオフを喫し、セーフティカーが導入。しかし、埼玉トヨペットGB GR Supra GTは自力でコースに復帰している。一転、トップを走行していたSUBARU BRZ R&D SPORTはセーフティカーの導入でここまでに築いたマージンはなくなってしまい、さらにこの時点でピット作業を終えていないため、トップを明け渡すことになってしまった。

 26周目レース再開。同時に先頭集団が一気にピットへ入ってきた。これで事実上のトップはADVICS muta 86MCになったものの、27周目の1コーナーでHitotsuyama Audi R8 LMS川端伸太朗がオーバーテイクし、ポジションが入れ替わった。

 全車がピットストップを終えた31周目時点でトップ10はHitotsuyama Audi R8 LMS、ADVICS muta 86MC、マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号、グッドスマイル 初音ミク AMG、T-DASH ランボルギーニ GT3、K-tunes RC F GT3、ARTA NSX GT3、LEON PYRAMID AMG、SYNTIUM LMcorsa RC F GT3、Studie BMW M6という順番に。

 GT300の周回数で36周目、今シーズンここまで苦戦が続いていたグッドスマイル 初音ミク AMGが、3番手のマッハ車検 GTNET MC86 マッハ号に急接近。を抜きダンロップコーナーでオーバーテイクすると表彰台圏内へと入ってきた。

 チャンピオンシップ争いに目を向けると予選でまさかのQ1敗退を喫したLEON PYRAMID AMGが25番手スタートから8番手。また現在、ランキング5位につけ、決勝レース序盤で大きくポジションを落としてしまっていたARTA NSX GT3がスタートポジションの7番手まで順位を回復。セーフティカー導入前にピット作業を終えていたマシンたちがポイント圏内へと上がってきた。

 一方で、ランキング上位勢でピットを引っ張っていたGAINER TANAX GT-R、リアライズ 日産自動車大学校 GT-R、SUBARU BRZ R&D SPORTらは逆にポイント圏外へとポジションダウン。ピットタイミングが大きな明暗を分けた。

 レース44周目、2番手争いのタイム差が1秒を切ってきた。グッドスマイル 初音ミク AMGをドライブするベテラン谷口信輝がADVICS muta 86MCのステアリングを握るルーキーの小高一斗にプレッシャーをかけるが抜くまでには至らず。

 14時50分にチェッカーフラッグが振られ、GT300クラスの決勝レースはトップが49周で終了。Hitotsuyama Audi R8 LMSが2020年シーズン初優勝を飾った。2位は3番手スタートのADVICS muta 86MC、3位に今シーズン初表彰台となるグッドスマイル 初音ミク AMG、4位マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号、5位ポールスタートから一時はポイント圏外までポジションを落とすも挽回してみせたK-tunes RC F GT3が並んだ。

 編集部集計のポイントランキングでは1ポイントを獲得した優勝したLEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥/菅波冬悟組が51ポイントでランキングトップを死守。2位も変わらずGAINER TANAX GT-Rの平中克幸/安田裕信組が10ポイント差で41ポイント、3位には今回7位で4ポイントを獲得したARTA NSX GT3の高木真一/大湯都史樹組が38ポイントとなっている。

 シーズンも佳境に入る次戦はポイント×1kgとウエイトハンデが減量され、これまでと異なるバトルが見られることだろう。第7戦は11月7~8日、ツインリンクもてぎにて行われる。



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