2017年にヨコハマタイヤとコンビを組んでGT500クラス復帰したTEAM MUGENが、4年目となる今季、スーパーGT第4戦もてぎでついに初表彰台を獲得した。GT500復帰当初からチームを支える武藤英紀と、今季から新人の笹原右京が加入。チームカラーもレッドブルカラーとなり、着実にTEAM MUGENは進化してきた。昨年からTEAM MUGENに加入してチームをまとめる中野信治監督に聞いた。
GT500に復帰してから4年目、ようやく表彰台に上がることができた。
「TEAM MUGENとしては2017年のGT500クラス復帰以来、初めての表彰台ということになります。2019年からTEAM無限に監督として呼んでいただいて、そこからスーパーGTに関しては僕だけではなくメカニック、エンジニア、ドライバー、ヨコハマタイヤさんもそうだし、本当にチーム全体で苦しい時間が続いて、なかなか上に上がれませんでした。そのなかでまずは表彰台という結果を残すことができた。本当にありがとうございました」
スーパーGT第4戦もてぎは、昨年までの250kmのレース距離が300kmに延長したことや開催時期の変更などでレースはセイフティカー導入やクラッシュが多発する波乱の展開になったが、そのなかで結果を残したのは、まさにチームの総合力が原動力になったと言える。
「荒れた展開のなかでチームの作戦もうまくいきました。本当にチームとドライバー、監督である僕も含めて、さまざまな可能性を考えてストラテジーを立てて準備してきた内容がピタリとハマってくれました。本当にチーム全員で勝ち取った3位だと思います」
スタートを務めた武藤英紀、そして後半スティントを担当した笹原右京のドライバーふたり、そしてチームの作業も安定した。
「メカニックのピットワークもすごく良かったし、ドライバーふたりのドライビングに関しても、英紀はすごくベテランらしい走りで着実に順位を上げてくれて、右京は本当にルーキーとは思えない落ち着きでポジションを最後まで守ってくれました。右京はセーフティカーが入ってドキドキもんだったと思いますし、後ろに強敵たちがいましたが、きちんとリスタートを決めて3位表彰台にマシンを運んでくれたということに感謝です。本当に頑張ってくれました」
昨年、TEAM MUGENの監督に就任してから、中野監督は監督としてどのようなアプローチをしてきたのか。
「昨年の1年間で僕自身も勉強させてもらって、今年はタイヤの開発を含めて、チーム内すべての動き方・動かし方のアプローチを変えさせてもらいました。そういったいろいろな試みが少しづつ形になってきたのだと思います。これまでの結果としてはまだ出ていなかったのですが、チームの空気や、ドライバーやエンジニア、ヨコハマタイヤさんも含めてのモチベーションなどが確実に上がりつつありました」
監督就任2年目の今年、中野監督のアプローチはさらにアップデートしたようだが、どのような部分に注力してきたのか。
「結構、いろいろな部分がありますが、僕自身が思う『こういう風に強くなっていければ良いな』というチームのイメージがありました。これは僕が海外と日本で長くレースをさせていただいて、そのなかで思っていたことですが基本はコミュニケーションです。とにかく諦めないでコミュニケーションを続けていくことです」
「僕は『しつこい』という特徴があるので(苦笑)『とにかくしつこくやる』ということになります。今までだったら、何かの原因を突き止めるときにさらっと流されていた部分を『いや、ちょっと待って』という感じで、『なんでそれが起こったのか』『どうしてそう考えるの』ということを徹底的に議論、ディスカッションしていく空気をチーム内に作りました」
「そんな空気をつくることが、僕がTEAM無限というチームを見させて頂いて、その空気をつくるべきだと感じたことです。物事の流れが良いときには、それほど深く考えなくても意外と回ったりするんですけれど、僕が見た、いまのチームに必要なものはここかなという部分から変えていきました。それをチームの方も受け入れてくれて、みんなも協力してくれて頑張ってくれたので、今回のように少しずつ形になりつつあると思います」
レースはさまざまな専門職、そして担当エリアの異なるスタッフがひとつの目標に向かって作業を行うコンペティションでもある。ライバルチームよりも少しでも先に進むには、各分野の人的リソース、そして設備や技術を束ね合わせることがチーム監督、チームマネジメントに求められる。
「さまざまな出来事があるなかで、それぞれきちんと突き詰めて考えることができれば、『これは変えなくていい』『ここは変えよう』と細かく分けて考えることができます。本当に徹底して考える。それは僕自身がヨーロッパやアメリカでしてきたことでもあるのですが、エンジニアに任せる、タイヤ屋さんに任せるということではなく、こちらから『なにが欲しい』『どういう理由で欲しい』『こう変わったら我々はどう変わる・変われる』という要求、きちんとしたディスカッションがあると、それぞれがそれぞれの絵を描きやすいです、課題の共有もしやすい」
「完全に他人に仕事を投げてしまうのは良くないですし、モータースポーツというのはお互いが同じくらいのレスポンシビリティをしっかりと持って戦うべきだと僕は思います。チームというのはタイヤだけではなく、ドライバー、メカニック、エンジニア、監督など、ひとつが欠けてもダメなわけです。そのなかでミスが起こったら『どうしてこのミスが起きたのか』ということを徹底的にディスカッションして、そこが直っても『今度はこういう可能性もあるよね』ということを討論するべきだし、そういう『しつこさ』をひたすら続けていくしかないと僕は思っています」
当然、今回の3位表彰台の次は優勝という目標が今まで以上に具体的に見えてくる。
「まだまだ課題はありますが、徹底したディスカッションができるようになれば、TEAM MUGENはどんどん強くなっていくと思います。今ある課題を少しずつクリアしていかないといけないし、すべてがピタッとはまったときには、きちんと結果が出せるような体制を作っておかなければならない。どんなときでもやれることはとにかくあるということです」
もてぎはヨコハマタイヤにとって相性のいいサーキットでもある。そして、今年はもう一度、第7戦でもてぎ開催が予定されている。Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが今季終盤戦で台風の目になる可能性も出てきた。
from TEAM MUGENが復帰4年目で念願の初表彰台獲得。就任2年目の中野信治監督の『しつこい』アプローチ
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