HOPPY team TSUCHIYA
レース結果報告書
2020 SUPER GT Rd.3 鈴鹿サーキット
■日時:2020年8月22~23日
■場所:鈴鹿サーキット
■監督:土屋武士
■チーム:HOPPY team TSUCHIYA
■車両名:HOPPY Porsche
■ゼッケン:25
■ドライバー:松井孝允/佐藤公哉
■リザルト:予選29番手/決勝14位
タダでは転ばない!? 奇襲2ピット成功
ちょっと暑いなぁ……なんて考えながら走っていて、デグナーひとつ目のブレーキングゾーンでGT500が前に入ったら、あれ!? えっ!? ボクのボンネットが開いてしまった! メカニックさんがコースインする前、いつものようにロックを確認してくれていたのに、なんでなの!? こんな恥ずかしいことで、目立ちたくなかったなあ……。
こんにちは、ボクはポピ輔です。HOPPY Porscheというちゃんとした本名があるのですけど、第2戦の後に共同チームオーナーの石渡美奈さんが命名してくれました。今回、第3戦鈴鹿もボクが25号車のレポートを担当します。
「いやぁ、これは怪奇現象。ボンネットが開いて帰ってきたら、その状態でロックされていた。ボンネットが屋根に当たった反動でロックが再び掛かったのかもしれないけど」
そんな呑気なことを言っていないでよ、武士監督。恥ずかしいし危ないし、乗っていた佐藤公哉くんだってびっくりしたと思うよ。公式練習の最中、デグナーでボンネットが開いてしまったのです。
「でもね、あれでスイッチが入って、いろいろ用意していたセットアップのメニューを全部入れることができたんだ。第2戦富士でやったことの先が知りたくて、リヤのバネを換えて、フロントのロール剛性をやって、車高をやって、新しいタイヤを確認して、(松井)孝允に交代した。キャラクターの理解はさらに深まった」(武士監督)
武士監督とエンジニアの木野さんはなんか楽しそうだけど、孝允くんと公哉くんは大変そうだったよ。ストレートエンドのスピードが遅いのは富士と変わっていないのに加えて鈴鹿だと大事な中速の立ち上がり、スプーン出口とかがトルクが細くて苦しいみたい。暑さのせいもあるのかな。
その立ち上がりの苦しいところをなんとかカバーしようとかんばった結果、予選Q1を担当した公哉くんは、そのスプーン立ち上がりでの走路外走行のペナルティをとられてタイム抹消でグループ15番手、全体の29番手になってしまった。
「予選の“4脱”は余計だった。一生懸命やった結果なのはわかるけど自制心を持たないと。20位を争っていても、トップを争っていてもそこは変わらないから。苦しいときほど自分をコントロールしなければいけない。自分の経験上も、苦しいときにちゃんとやっていれば、いいときは巡ってくるから」(武士監督)
グリッドは後ろに1台いるから(実際はクラス分けの結果でしかない)、こういうのブービー賞って言うんだよね……。このまま決勝も退屈な展開になるのかなあと思っていたら、武士監督はまたしても飛んでもない秘策を用意してくれました。「またしても」と言うのは、なんでも聞いた話によると、昔、マザーシャシーで真っ先にタイヤ無交換作戦をやって、ライバルの裏をかいて物議を醸したとか。「レギュレーションをよく読めばわかることだよ。ダメって書いてないことはやっていいんだから」(武士監督)
決勝はストレートが厳しいのでガマンの展開になることは予想していました。でも2回目のセーフティカー(SC)ランの時に武士監督が動きます。今年のレギュレーションではSC中のピットインがすべて禁止はされていません。ピットロードクローズドに最初なるのですがSC中にそれが解除されて、以降はピットインして作業することが認められています。
ただし、SC中のドライバー交代はダメ。ボクがスルスルっとピットロードに入ってくると、みんな「何してるの」と不思議な顔をしてみています。「ドライバー交代ができないから、どっちにしても、もう1回ピットに入らなければいけないから意味ないでしょ」と。スタートドライバーの公哉くんが乗ったままタイヤ交換だけしてピットアウト。まだSCは解除になっていません。
その後、26周目にルーティンピットに入ります。ここでタイヤ交換はしないで給油だけして、その間には公哉くんから孝允くんにドライバー交代。ピットアウトしていきます。まだルーティンピットを終えていなかった上位がいなくなると、35周目にはなんと5番手に浮上していました! マジックみたい。
グリッドが後ろだからできた作戦ですけど、SC中にタイヤ交換を済ませたことでアウトラップのロスがなくなり、ルーティンピットでタイヤ無交換の分をタイム短縮して、トータル15秒ぐらいゲインしたことになったみたいです。さすが頭脳派武士監督とファンのみんなも盛り上がっていたらしいね。あとで美奈さんに聞いたら。
でも、今回もペースに自信がないボクにはけっこうしんどいよこの位置。トップ争いするような連中がやる気満々で後ろにいっぱいいるんだから。「なんでオマエがそこにいるんだ」とみんな半分怒っているし……。孝允くんはマザーシャシー時代に当たり前にいたポジションだから順位確認の後、「がんばります!」とか無線で応えてテンションが上がっていたけど。武士監督も武士監督で「ボーナスみたいなものだから楽しんできて」と孝允くんに無線で指示していた。
そりゃそうだよ。鈴鹿だから無理すればブロックできるところも多いけど、そんなことしていたら、あんな連中を相手に無事じゃ済まない。最終的には14位でゴールしました。ボクはここにいるよと、いろんな意味で存在感は示すことができたレースでした。
「テレビにいっぱい映ってよかったとファンも喜んでいたよ。武士またやりやがったとみんな思っているんじゃないの」と今回も結果に関係なく美奈さんはうれしそう。「去年まではSC中はずっとピットロードクローズドで、リスタートで初めてピットがオープンなるルールだったのが、今年はSC中もドライバー交代しなければ作業をやっていいルールに変更になったから、ずっとこの作戦は用意してあったんだ。後方の順位にいるときしかできない作戦でもあるから、すごくいいタイミングでそれがやってきた。やるからには誰よりも先に一番でやりたかったしね」と武士監督。このお方、タダでは転ばないですね。
それもじつは土曜の夜も遅くまでさらにセッティングを進めようと考えていたみたい。「乗りやすくはなっているけども、クルマのポテンシャルを引き出す方向じゃないなと感じて、(予選後に)ドライバーと木野君とで話し合って、ずっと考えて。気がついたらメカのみんなもテイクアウトのご飯食べ終わって、帰るよ~って。ご飯も食べずに22時過ぎていたから、部屋に戻って食べました。でもその考えたセットを決勝で試したら、しっかりメリットを発見できた」(武士監督)
確かに、ボクの決勝のペースはそれほど悪くなったし、3回目のSCが出なければ、なんとか粘って10位以内でゴールできたと思うな。「またしても実り多き週末だった」(武士監督)。ところで、ボンネットの怪奇現象は原因究明と対策はできたの?「そこは……これから検証する!」(武士監督)。ええ、それは困るよ~。
◇松井孝允コメント
「決勝はあの順位に放り込まれてやる気は出たんですけど、きつかったです(笑)。戦いたいのに戦えなかったのが正直なところ。せっかくあの位置(5番手)にいけたのですから、それを活かす戦いをしたかったですね」
「エンジニアの木野さんや武士さん、ヨコハマタイヤさんとドライバー、全員が同じ方向を目指して一歩一歩やっていくのが大事だと思っています。一気にステップアップするのは無理ですし、そうすると何がいいのか悪いのかわからなくなってしまうでしょう。厳しい戦いではありますが、継続していけば、その過程でボク自身の引き出しも増やせるはずです」
◇佐藤公哉コメント
「第1スティントは一発の速さを求められないこともあり、最初に内圧をしっかり管理しながら、温まってくるまでは少しゆっくり走ってタイヤを優しく使うことで、一定のペースで、タイヤが一気にきつくなることはなく、なめらかなシェイプで4輪(のグリップが)落ちてくるイメージでまとめることができました」
「周りは勝手にタイヤがきつくなって落ちてきたので抜きたかったのですが、中間加速が厳しく抜き切れませんでした。せっかくのクルマのバランスが活かせなかったのは残念です」
「2ピット作戦については、あらかじめこういう作戦を採るかもしれないと聞いていたので、それを頭の片隅に置きながら、コールが掛かったらすぐに入れるように準備してレースしていました。ピットインしてからのポジションの上がり方も狙いどおりで素晴らしい作戦でしたね。予選から一晩でいろいろクルマを変えて、いい方向にもっていってくれたことは確認できました。さらにもてぎまでに練っていき、結果に結びつけたいと思います」
◇土屋武士監督コメント
「ここまで苦しい戦いが続いていますが、その中でもたくさんのトライをしてたくさんの発見があります。苦しい時こそチャレンジ精神が沸き上がってくる、そんな鈴鹿のレースでした。結果は少々残念でしたが、これまで以上に知見が増え、成長できたレースウイークになりました」
「ドライバーの2人にはストレスを溜めさせてしまって本当に申し訳ないと思っています。公哉の4脱ペナルティーも、これはクルマが遅いせいです。ボクもドライバーなので気持ちがよくわかる。でも、この環境でこそ成長してほしいので、厳しい言葉も投げかけます。みんなの期待を背負って走るのが仕事で、ボクたちは、その幸せな環境で仕事をさせて頂いているので、甘さは許されないですよね」
「でもこの厳しい環境はボクたちを強くしています! 次戦、茂木はポルシェのウィークポイントが富士、鈴鹿よりは軽減されるはずなので、ここまでの成長の証しを皆さんにお見せできると思います。ボク自身が一番期待しています! 次戦も応援よろしくお願い致します!!」
from HOPPY team TSUCHIYA 2020スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート
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