スーパーGT:「セクター3が遅い」原因不明の不振に悩めるZENT GRスープラ

「正直こんなにダメだったこと……しかも富士でここまで悪かったのは今までないんで。『なんでかな』ってね。特にレースがキツい」

 決勝後にそう語ってくれた立川祐路の言葉と表情がすべてを物語っていた。

 スーパーGT史上異例の同一サーキット連戦となった今季、第2戦でもZENT GRスープラの苦悩は続いた。GRスープラのデビュー戦となった開幕は1~5位独占の一翼を担う4位に入るも、今回は7位。

 ウエイトハンデ16kgのZENT GRスープラに対し、同30kg搭載のau TOM’S GRスープラが2位、42kgのKeePer TOM’S GRスープラが4位、そして今季から2台体制を敷く同じセルモのWAKO’S 4CR GRスープラも22kgで3位表彰台を得ているだけに、富士マイスターとしても歯痒い結果になった。その主たる要因について、僚友の石浦宏明も次のように説明する。

「6月末の公式テストから調子が良くなかった。そこが起点で、ちょっと違う方向性で開幕戦に行ったんですが、それもあまり機能しなかった。その場しのぎでセットアップを進めるのではなく、エンジニア(村田卓児氏)や僕らが本来目指したい方向を試そうと。今回の第2戦でも大きく方向性を変えました。でもレースウイークではその修正の時間も足りなかった」

2020年スーパーGT第2戦富士 今季から同じセルモ陣営となったWAKO’S 4CR GR Supra(大嶋和也/坪井翔)
2020年スーパーGT第2戦富士 今季から同じセルモ陣営となったWAKO’S 4CR GR Supra(大嶋和也/坪井翔)

 今季から同じセルモで走る2019年王者の大嶋和也も、20年仕様は「セットアップが難しい部分がある」と見ている。そこで挙げたのが、開幕戦でも話題となったレーキアングルだ。

「車高の設定もあると思いますが、それをやると結局ドラッグは増えちゃうし、そればっかりにも頼れない。イマイチ速く走れないことを考えると、ホントにそれでいいのかな、レーキをつけなくても曲がるセットを考えなきゃいけないのかな、って」

 ダウンフォースが効く中高速セクションに対し、最大の課題はそうではないセクションの処理だ。

「去年よりも100Rは全然速いですし、よく曲がってる。ただ、セクター3とかがどうなんだろうなって気はしています。エアロが効いてないところ、ですね。ストレートではうまく沈んでくれるセットにはしていますけど、なかなか両立が難しいです」

 その言葉に同調するように、立川も「正直(不振の)正体がつかめていない」と言いつつ、現状はセクター3に課題があると明言する。

「ウチのクルマとして開発車で感じてたのとは合わない部分があって、それがセットアップに起因するものなのかは現状で分かっていない。当然アンダーも出るし、それを嫌ってセットアップすると今度はすごくオーバーになってしまう。クルマの方向性が示せてないというか、『ハマってる』状況」

2020年スーパーGT第2戦富士 ZENT GR Supra(立川祐路/石浦宏明)
2020年スーパーGT第2戦富士 ZENT GR Supra(立川祐路/石浦宏明)

「セクター3が前回も今回も遅い。タイムに現れるだけじゃなく自分で走ってても遅い。必要なメカニカルグリップがないので、ちょっとそこが課題かなと。僕や石浦が開発車でやってきたフィーリングに近づいて欲しいんですけど、そうならない」

 ここ2シーズンはこのサーキットで大きなクラッシュも経験し、車両の部品的な不具合からセットアップ期間で約半年の後れを取るなど苦い経験もしたセルモ陣営。

 ここからハイダウンフォースでタイヤ入力負荷の条件が変わる鈴鹿や、ストップ&ゴーのもてぎでどのような巻き返しを見せられるか。2020年に残る2度の富士戦でトヨタ陣営内バトルがさらに激化する未来を、本人たちが一番望んでいるはずだ。



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