2020 AUTOBACS SUPER GT ROUND 3 鈴鹿サーキット
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
8月22日(予選) 天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:無観客
8月23日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:無観客
ついにポールポジション獲得! SCランに阻まれたトップ快走も、待望の入賞果たす
スーパーGTは3戦目にして富士スピードウェイを離れ、今年初めて舞台を鈴鹿サーキットに移して、第3戦『FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE』が開催された。FRに改められた、TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)で、aprは引き続き2台体制で挑み、『#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT』をコンビ2年目となる、嵯峨宏紀選手と中山友貴選手に託す。タイヤは引き続きブリヂストンを使用する。
前回は予選で、中山選手がQ1をグループ3番手で通過。ようやく本来のポテンシャルを発揮できるようになったものの、そこからが不運の連続。Q2ではABSのトラブルが、そして決勝でもスタート直後にシフト系のトラブルが発生してしまう。まさに我慢を強いられ続けてのレースではあったが、それでも予選16番手から13位完走を果たしたことで、収穫は数知れず。
インターバルは2週間と極めて短かったが、トラブルシューティングは緻密に行われた。速さはもう証明されているだけに、もう足りないのは運だけ! 本領発揮に期待がかかる。
公式練習 8月22日(土)10:00〜11:35
今回も無観客試合であるのは変わらず、しかし前回と異なるのは決勝レース中の4輪交換の義務づけがなくなり、またJAF-GT車両に対する燃料給油リストリクターの緩和はなくなり、開幕戦の状態に戻されたことだ。いずれも及ぼす影響は#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTにとって、少なくはないだろう。そのあたりに一抹の不安を覚えつつ……。
さて、8月に入って連日のように猛暑日が続くが、このレースウイークの鈴鹿も同様だった。公式練習開始時の気温は32度で、路面温度は42度。もちろん前回以上で、過酷な戦いとなるのは、もはや必至であった。今回、最初にマシンに乗り込んだのは中山選手。ピットレーンオープンと同時に走行を開始し、チェックだけ行ってすぐピットに戻ってくるのは普段どおり。
その後、本格的に走行が開始された。早い段階で2分0秒036を中山選手はマーク。やがて決勝レースに向けたメニューがこなされていく。1時間18分ほど経過したところで、ようやく嵯峨選手の走行に。少ない周回ではあったものの、2分0秒383を記録した後、最終チェックも済ませて続く予選に備えることとなった。このセッションでの順位は17番手だった。
公式予選Q1 8月22日(土)14:30〜14:40
今回も予選Q1は2グループに分けられ、当面はこのシステムが継続されることがのちに発表された。気温は33度、路面温度に関しては公式練習より、さらに上がって48度と、より厳しくなったコンディションのなか、Aグループでの走行となった#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTでコースインしていったのは中山選手。
温度的な条件、そして1周の長い鈴鹿ということもあって、ウォームアップはアウトラップに加え1周のみ。そこからアタックを開始すると、いきなり1分59秒059をマークしてトップに浮上し、続いてのアタックでは1分58秒621にまで短縮を果たす。この驚速タイムは誰にも破られることなく難なくQ1を突破。見事、嵯峨選手にバトンを託すこととなった。予選に向けたセット変更が、大いに功を奏した格好だ。
公式予選Q2 8月8日(土)15:23〜15:33
中山選手が好タイムをマークしていたため、「プレッシャーがかかった」と語っていた嵯峨選手だったが、いやいやその走りは堂々たるもの。その証拠に、中山選手同様、計測2周目からのアタックで、さらにタイムを縮める1分58秒189をマークしたのだ。
しかし、ピットでの興奮もつかの間、さらに上回るタイムを記録した車両が。さらなるタイムアップを狙った嵯峨選手ではあったが、次の周はスロー車両に行く手を阻まれてしまう。もちろんフロントロウ、2番手からのスタートなら十分勝機あり……、そう思われた直後、思いがけぬリプレイシーンがモニターに映される。
嵯峨選手のタイムを上回った車両がスプーンコーナー外側で四輪脱輪との判定で、タイム抹消となったのだ。これにより、嵯峨選手はトップに返り咲き、#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTは、FRに改められて初めてのポールポジションを獲得! 嵯峨選手にとっても2015年の最終戦・もてぎ以来、3回目の獲得となった。
■予選後コメント
嵯峨宏紀
「中山選手がQ1でまさかのトップタイムを出してくれて、クルマのパフォーマンスは高いというのを証明してくれたので、自分としては頭を真っ白にしてプッシュしました。こんな状況を作ってくれたチーム、中山選手に感謝したいと思っています。長年プリウスを開発してきたドライバーとしては、ホッとしている部分はありつつ、決勝ももっと頑張らなきゃいけないと、気合いを入れ直しています」
「鈴鹿は高荷重サーキットですし、この気温なので、富士でタイヤ無交換で行けたから、鈴鹿でも行けるかということは、まったくなくて。それよりJAF-GTは給油リストリクターが復活しているので、給油に時間がかかってしまいます。だから、どんなレースになるか、蓋を開けてみなければ分からないですね。それでも最後の1周まで気を抜かずに行きたいと思うので、応援よろしくお願いします」
中山友貴
「僕自身、鈴鹿は得意としていて、今回は意気込んで入ってきたんですが、公式練習では手応えが良くなかった部分をチームが対処してくれたおかげで、いいアタックができました。もう少しタイムあげたかったなと思いながら帰ってきたら、トップだったので、そこは素直に嬉しかったですね」
「久々にポールポジションからスタートできるし、いちばん優勝に近いポジションからレースを進められるので、なんとか嵯峨選手とaprという強いチームとで、底力をレースで見せたいと思います。最後までプッシュして頑張りますので、ぜひたくさんの応援をお願いします」
金曽裕人監督
「ありがとうございます! でも長かったです、1年半かかりましたから。まだやりたいことはあるんですが、今回はブリヂストンのタイヤが予選に関して、最高に良かったです。公式練習からクルマのセットアップ方向を探っていたのですが、中山選手も嵯峨選手も的確で、ドライバーはクルマに熟知し始めたし、僕らもクルマに対する引き出しができました」
「富士から大幅にスペックの違うものを入れたのか、と思われるかもしれないですが、まったくそんなことはないんです。ただ決勝に関しては、鈴鹿ではそう簡単にタイヤ無交換はできないし、給油にも時間がかかるので、このポジションでレースが終わるとは思っていません。そこの不利というのはJAF-GTには否めないので、ある程度結果をコンサバに取らなければ。それでも表彰台には立ってもらいたいと思います」
決勝レース(52周) 8月23日(日)13:00〜
決勝レース直前に行われる20分間のウォームアップでは、前半を中山選手が走行し、2分0秒889を、後半走行した嵯峨選手も2分0秒988をマーク。手応えは上々といった様子だ。無観客試合もあと1戦と正式に発表され、がらんとしたスタンドもどうやら見慣れずにすみそう。むしろ、これだけの暑さであるから、熱中症で倒れる観客も少なくなかったのでは。
スタート直前で気温は32度、路面温度は48度に達していた。今回もスタート担当は中山選手。グリーンシグナル点灯から猛ダッシュを見せ、早くも後続を引き離しにかかる。しかし、逆バンクでクラッシュがあり、いきなりセーフティカー(SC)が導入される。
5周目からバトル再開、再び#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTはじわりじわりと差を広げていくのだが、これがほぼ6秒にも達した17周目、バックストレートに大型のデブリが転がったことから2回目のSCランが実施され、せっかくのマージンを失ってしまう。しかも、このSCランが予想外に長く、22周目まで及んでドライバー交代可能なミニマムの周回となったことから、すかさず中山選手をピットに呼び戻すことに。
予想どおり給油に時間がかかって、コースに戻った#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTと嵯峨選手は大きく順位を落とす。しかも前を行くのはストレートパフォーマンスに勝るFIA-GT3ばかりとあって、なかなか追い上げもままならず。3回目のSCランを途中挟んで、全車ドライバー交代を済ませた時には9番手につけていた。
それでも1台の脱落で35周目には8番手に、そして5番手を争う集団のなかで、嵯峨選手は激しいバトルを繰り広げるように。一進一退の攻防が続くなか、ゴールが近づくにつれ接触が相次ぎ、順位を落とした車両もあったことから#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GTは7位でゴール。ポールスタートからの最終順位に決して納得がいこうはずがないが、ようやく果たせた入賞の持つ意味は極めて大きい。残り5戦が楽しみになってきた。
■決勝後コメント
嵯峨宏紀
「燃料リストリクターがあるから給油で時間がかかる分、マージンを作ってくれるかと思ったんですが、あのタイミングでSCが出ちゃうと、もうどうにもならなかったです。FIA-GT3が前にいると、僕らはどうにも抜けないという状況でした」
「タイヤは4本とも換えるしかなかったです。とりあえず、このクルマになってから初めてのポイント獲得ですし、一歩階段登れたということで良かったです。もてぎに向けては、違うこと考えないと難しいかもしれません」
中山友貴
「FIA-GT3より給油に時間がかかってピットでのロスタイムが増えるので、序盤にギャップタイムを作ってくれと指示されていました。ペースを維持して僕のなかでは10秒ぐらいを、目標にマージンを作ろうと思っていたんですが、スタートしてすぐ、それと6秒ほどに達したところでSCが入ってしまって……。マージンのなくなった状況で、いちばんロスのないタイミングだということで、SC明けでピットに入りましたが、やはり順位は後方に沈んでしまいました」
「嵯峨選手は集団のなかだったんで、かなりしんどかったと思うんですが、自分としての仕事がしっかりできて、クルマの速さを証明することができたのは良かったことなんですけど、やっぱりチームとして優勝したい。今後のレースに向けて、自分たちが優位に進められるようにしていきたいのと、今回はレースの運に見放されたのかな、というところに尽きると思います」
金曽裕人監督
「ドライバーもメカニックも一切ミスしていないのに、給油に時間があまりにもかかるJAF-GTにはタイヤ無交換しか勝つ方法がない。でも、こんな灼熱のなかでは無理です。基本的にタイヤ交換をした場合はJAF-GTは上に来られない絵図になっています。そうはいってもポールポジションからプッシュ、プッシュで逃げ切ろうって言っていたんですが、SCでゼロマージンになっちゃって……」
「でも、初ポイント獲れて嬉しいですよ。次のもてぎはそんな得意ではないので、着実に入賞を目指してやるしかないけれど、この3戦でいろんなものが見えてきたので、もっとパフォーマンスを上げてやっていこうと思っています。これからは、勝てるレースをもっと組み立てられるようにします」
次戦、SGT Rd.4もてぎは、9月12日予選、9月13日決勝となります。みなさま、応援よろしくお願いいたします!!
from #31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT 2020スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート
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