先日、スーパーGTおよびスーパーフォーミュラのレース再開がアナウンスされ、国内レースがいよいよ動き始める。約2カ月間におよぶ“おうち時間”を国内のトップドライバーたちはどのように過ごしていたのか。普段の生活の様子やトレーニング事情、そして来月に控えた開幕戦に向けての意気込みについてリモート取材を行った。
第9回は、2019年のスーパーGT GT300クラスでチャンピオンを獲得し、今シーズンGT500クラスでステップアップする福住仁嶺だ。
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Q:4月以降の2カ月間はどんな生活をしていましたか?
福住仁嶺(以下:福住):引きこもりでしたね(苦笑)。実家に帰ることも考えたのですが、もし自分がウイルスに感染していたら周りに迷惑がかかってしまうと思い、東京でずっと待機していました。
Q:自宅にいた期間のなかで何か新しく始めたことなどはありますか?
福住:いま、まさに趣味を探している最中です(苦笑)。ただ、シミュレーター用に機材は購入してプレイしていました。山下健太選手とF3のレースもプレイしましたね。
Q:もともとシミュレーターの経験はありましたか?
福住:これまで家で行ったことはないです。こういう状況なので、体の感覚を鈍らせないように取り入れたほうが良いのかなと思い導入しました。よく使用しているのは『iRacing』ですね。
Q:iRacingはよく挙動が実車に近いと聞きます。
福住:グリップの抜け方などが唐突に出過ぎる感じがあり、スピンするときも「こんな簡単にスピンするかな?」と思うところもあります。すごいリアルかと言われるとそうでもないかなと思う部分もありますね。
Q:趣味を探している最中とのことですが、これから始めたいことはありますか?
福住:ピアノかキーボードを購入したいですね。音楽がすごく好きで、小学校の頃にはトランペットをしていたこともありますし、実家にはドラムもありました(笑)。
Q:ARTAの公式YouTubeチャンネルで『エアーGTタイムアタック』にも挑戦していましたが、自己評価はどうしょう?
福住:岡山に関しては結構近いタイムで走れているなと感じました。富士スピードウェイはシミュレーターでの経験があったので多少分かっていましたが、それ以外のサーキットは「スーパーフォーミュラより少し遅いくらいかな〜」と思いながら走りましたね(笑)。
Q: YouTubeでお気に入りのチャンネルなどはありますか?
福住:ビデオオプションは本当によく見ていて、何か作業をしているときも流しながら見ています。それ以外だとゲーム実況やサバイバル動画、ご飯動画なども好きですね。
Q:自宅でのトレーニングはどのように行っていましたか?
福住:ランニングに行くのもためらっていたので、トレーニングバイクを購入しました。それ以外にはウエイトトレーニングができないので、自重を使った体幹トレーニングを行っていました。
Q:メンタル面で自粛期間中、モチベーションはどうやって保っていましたか?
福住:体を動かしたり、レースの動画を見たりですね。あと去年くらいからスポーツ選手のドキュメンタリーなどを見たりしています。誰かがすごく努力をしている姿を見ると、みんな頑張っているんだなと自分のモチベーションにも繋がります。
Q:とてもいい刺激になりそうですね。
福住:一時期は海上自衛隊の動画なども見ていました。隊員になるまでがすごく厳しい世界なんですよ。でもとても高い意識持っていて、それを見たら自分も頑張らないといけないと思いました。
■スーパーGTとスーパーフォーミュラの超過密スケジュールも、2018年のFIA-F2参戦時に比べて感じる余裕
Q:3月に行われたスーパーGT岡山公式テストでの感触はいかがでしたか?
福住:今シーズンはGT500クラスに乗ることになり環境が多少変わりましたが、順調にテストをこなせていてクルマ自体のポテンシャルも悪くないと思います。ただ僕自身がもう少しうまく乗りこなさないといけないとも感じました。
Q:まだGT500のNSX-GTにドライビングを合わせきれていないということですか?
福住:そうですね。ドライビングやチームへのフィードバックなども含めて僕がもっと合わせないといけない部分がまだあると感じています。
Q:GT500クラスのNSX-GTはブレーキング時などによく「跳ねる」というコメントを耳にしますが、福住選手はどう感じましたか?
福住:たしかに「GT500のマシンは跳ねる」ということは最初から聞いていました。セパンテストで初めて走ったときは、たしかに聞いていたような跳ね方をしましたね。
Q:「跳ね」を抑える方法が今年もポイントになりそうですね。
福住:そうですね。僕自身も「こうかな」と思ったアイデアを提案してみても完全に解消されるまでには至っていません。先輩方はこの問題を長年抱えてやってきたのかとあらためて実感しました。
Q:では次に、スーパーフォーミュラの富士テストでの感触を教えてください。
福住:スーパーフォーミュラはいままでのレースやテストを含めたなかで一番ポテンシャルが高かった二日間でした。セットアップの方向性も良かったと思いますし、エンジニアとのコミュニケーションもさらに良くなっていると思います。
Q:今シーズンからスーパーフォーミュラはタイヤが1スペック制になりますが、どう感じていますか?
福住:昨年のミディアムタイヤとの2スペック制はたしかに運に左右されるところがありましたが、僕としてはそれはそれで面白いと思っていました。1スペック制になると、戦略の幅は増えるのかなと思います。
Q:昨年のソフトタイヤは摩耗が少ない印象がありましたが、今年も同じような感触でしたか?
福住:富士のテストのときは気温が低かったのですが「ソフトじゃない」と思うぐらいタイムが落ちなかったです。ニュータイヤから比べても1秒落ち以内でずっと周回できる。今年の寒い時期のレースはペースが落ちないので、結構疲れそうですね(苦笑)。
Q:先日、国内カテゴリーの日程があらためて発表されました。
福住:スーパーGTでは富士ともてぎはブレーキがすごく大事になると思います。僕自身、GT500のブレーキはまだ掴めきれていないのでそこは少し不安な部分です。スーパーフォーミュラの開幕戦がいきなり暑い時期というのも少し心配ですね。
Q:例年以上の過密スケジュールのため、レース間のインターバルで体や気持ちの切り替えが大変になると思います。
福住:そうですね。国内の移動だけですが、簡単にはいかないと思っています。でも2018年にFIA-F2とスーパーフォーミュラに参戦していたときよりは少し余裕があるかもしれません。あの時は海外跨ぎだったうえに、FIA-F2は水曜日にサーキット入りだったのでかなり大変でした。
Q:今シーズン、スーパーGTとスーパーフォーミュラをどんなシーズンにしたいか教えてください。
福住:スーパーGTはGT500ルーキーイヤーですが、いい成績を残せるチームにいると思うので、その強みを発揮できるようにしたいです。それと、もっとクルマの運転に対して自分を極めていきたいと思います。スーパーフォーミュラに関しては去年よりもっと上を目指して、まずは絶対に優勝したいです。
Q:福住選手の活躍をファンのみなさんも楽しみにしています。
福住:スーパーGTに関しては現時点で序盤4戦が無観客になってしまい、僕らもファンのみなさんの前で走ることがすごくモチベーションになっていたので、違和感のあるレースウイークになると思います。ですが、中継などでレースを見られると思うので、いいレースができるように頑張ります。そしてレースができることに感謝をして、またみなさんの前でレースができるように頑張っていきたいです。
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昨年のスーパーGT GT300クラスではデビュー戦となった開幕戦岡山でいきなりポールポジションを獲得。見事GT300クラスのタイトルを獲得した福住仁嶺は2020年、満を辞してGT500へ挑む。ARTAのカート時代から福住の成長を見てきた鈴木亜久里監督が認める、そのナチュラルな速さと物怖じしないナチュラルな性格に定評がある福住。次代を担うホンダの若手のホープとして、今年はスーパーGTとスーパーフォーミュラという国内の2トップカテゴリーで、まずはそれぞれの先輩チームメイト、野尻智紀、そして山本尚貴を凌ぐ速さとパフォーマンスを見せたいところだ。
from 【国内トップドライバーオフインタビュー福住仁嶺】趣味は絶賛模索中。超過密日程でも「FIA-F2に参戦していたときより余裕がある」
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