新型コロナウイルス禍において、国内レースの開幕が遅れている。そんな中、国内のトップドライバーたちはどのように“おうち時間”を過ごしているのか。普段の生活の様子やトレーニング事情、そして来たる開幕戦に向けての意気込みについてリモート取材を行った。
第5回は、ニッサン陣営で唯一ヨコハマタイヤの開発を担うリアライズコーポレーションADVAN GT-Rのステアリングを握る高星明誠だ。高星は今年、スーパーGT GT500フル参戦3年目を迎える。
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Q:3月末に予定していたスーパーGT富士公式テストが中止になって以降、自粛生活が始まりました。
高星明誠(以下:高星):そうですね。感染リスクを考慮してほとんど出掛けず、家でずっと過ごしていました。
Q:自宅での時間がかなり増え、何か趣味や新しく始めたことなどはありますか?
高星:もともと趣味というものを持っていなくて……(苦笑)。特に新しく始めたこともなく、家にいるときは動画を見たり、携帯で本を買って読んだりしています。
Q:どんな動画コンテンツを見ていますか?
高星:YouTubeとNetflixですね。YouTubeはこれといったお気に入りのチャンネルとかはないのですが、自分へのオススメ動画として表示されているものを見たり、あとはレース関係ですね。スーパーGTの公式チャンネルで放映している過去のレースも見ますし、F1やフォーミュラEのチャンネルも見ています。
Q:Netflixではどのような動画を見ていますか?
高星:海外ドラマをよく見ています。僕の一番のお気に入りは『ブラックリスト』というものです。結構有名なのですが最新話はまだ見れていないというか、見ていません。たとえばニュルブルクリンクに行くときなどは飛行機の移動時間が12時間ぐらいかかりますよね。そういった長距離の移動時に見られるように最新話は残してあります(笑)。だから早く飛行機で移動できるようになってほしいですね。
■シミュレーターは癖の修正に効果あり
Q:自宅でのトレーニングはどのように行っていますか?
高星:地元に僕のトレーナーをしてくれている人がいるので、その人が考えてくれたジム器具を使わずにできるメニューを基本に行っています。あとはニスモのトレーナーからもメールでメニューが送られてくるので、そのなかからいくつかピックアップしたものを取り入れています。体幹トレーニングをメインにしつつ、自宅にダンベルと腹筋台があるので、それらも使用しています。
Q:ランニングへ行くこともあると思います。
高星:いや、あまり走らないですね。僕は走るのが苦手で……(苦笑)。ドライバーのなかでも分かれると思いますよ。ウエイトトレーニングが苦手だから走る人と、その逆の人もいると思います。
e-Nürburgring Race 楽しんでもらえましたか?笑
多くのドライバーが参加したので見応えはあったかと思います。大きな規模のイベントでスタッフの方々は大変だったと思うのですがドライバー側も楽しませてもらいました。
ありがとうございました pic.twitter.com/1esndjFAjf— Mitsunori Takaboshi (@TAKAX32) May 24, 2020
Q:5月24日(日)に『e-ニュルブルクリンクレース』に参戦していましたが、普段シミュレーターは取り入れていますか?
高星:レース前には必ずシミュレーターショップへ行ってプレイするようにはしていますが、自宅には置いていないので普段プレイすることはありません。グランツーリスモSPORTはイベント等で何度かプレイしたことがありましたが、今回あらためてちゃんとした環境で経験させてもらいました。本物と違うところはあるけれど練習にはなると思います。映像の再現度もとても高いので、見やすいです。
Q:グランツーリスモSPORT以外のシミュレーターソフトはどれを使用していますか?
高星:僕がよく使用するのは『rFactor』ですね。ただrFactorはマシンやコースを改良していく必要があります。一緒にプログラミングをできる人(エンジニア的な人)がいてくれれば、実車にかなり近くなっていくと思います。
Q:シミュレーターの効果はどういうところにあると思いますか?
高星:僕はドライビングの感覚を養うというよりは自分のクセや傾向の修正、ウォーミングアップとして使用しています。癖は実車と同じようにシミュレーターでも出るので、そこで修正したことは実車でも活きてきます。ただシミュレーターが100%実車と同じかというとそうではないので、そこは割り切る必要があると思っています。
■開幕に向けてやや不安が残った岡山テスト
Q:3月に行われた岡山公式テストでの感触というのはどうでしたか?
高星:気温が低く、持ち込んだタイヤが合っていなかったので本来のヨコハマタイヤのパフォーマンスを出せないままテストに入ってしまいました。タイヤのグリップが出せないとセッティングも決まらないので、そういった部分でまだまだという感触だけが残っています。今年はマシンが新しくなってタイヤに対しての入力が変わっているので、それにアジャストしきれていないというのがいまの課題です。昨年までのマシンと2020年型マシンとの違いもまだ突き止め切れていないです。
Q:チームメイトのヤン・マーデンボロー選手とは2年目のコンビになります。高星選手からみたヤン選手というのはどういうキャラクターですか?
高星:“陽気”ですね。昨年は平峰一貴選手やサッシャ・フェネストラズ選手とよくふざけていました。僕はその3人を遠くから見ていた感じです(笑)。
Q:今年はどのようなシーズンにしたいですか?
高星:僕は今年、スーパーGTフル参戦3年目になります。2018、2019年は何度か表彰台に上がるチャンスはありましたが、レースの流れやピットタイミング、不運などで表彰台を逃してきました。今年は確実に表彰台、そして優勝を狙っていきたいです。ただ、まだレースペースは足りていない部分があると思っているので、優勝するためにもヤン選手とチームと協力して全体の底上げができるように頑張ります。
Q:高星選手とKONDO RACINGの活躍をファンの方も楽しみにしています。
高星:まずこういう状況でモータースポーツだけでなく、スポーツ全体が延期になっていますが、スーパーGTの開幕戦を実現できるように関係者のみなさんが頑張ってくれているのでもう少しお待ちください。それまではeスポーツのほうでいろいろな取り組みをしています。実車では味わえない面白さもあると思うので、開幕まではeスポーツも楽しんでもらえればなと思います。そしてシーズンが開幕したら実際のレースを見に来てもらい、また違う楽しさを味わってもらえたらうれしいです!
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高星がドライブする24号車は2016年の第3戦もてぎ(編注:同年オートポリスで予定されていた第3戦が震災の影響で中止となったため、代替戦が最終戦もてぎに組み込まれ史上初の1大会2レースが開催された)で優勝して以降、勝利から遠ざかっている。またこの一勝はヨコハマタイヤが最後に勝ったレース。も昨年は第4戦タイで表彰台の一歩手前まで迫り、第5戦富士でもエンジントラブルに見舞われるまでは好調を見せていただけに、今年は2020年は4年ぶりの優勝を目指す戦いとなる。
高星自身としても、GT500での表彰台獲得経験は2016年にスポット参戦した鈴鹿1000kmレースの3位1回。今年はまずは4年ぶりの表彰台を獲得できれば、悲願の初勝利も見えてくる。近年はGT-R陣営の不調、そして参戦台数が少ないヨコハマタイヤ勢として結果が残せていない24号車と高星だが、高星としてはニッサン陣営の数少ない期待の若手ドライバーとして、2020年はしっかりとその存在感を示したいところだ。
from 【国内トップドライバーオフインタビュー高星明誠】海外ドラマ鑑賞のこだわりとクセをシミュレーターで修正。まずは2度目の表彰台へ
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