【秘蔵私的写真で振り返るGT進化の旅/第2回】2003年JGTC、エンジン大排気量化したトヨタ・スープラ(A80系)

 日本のモータースポーツファンのみなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 この度、始まりましたJGTC(全日本GT選手権)/スーパーGTメカもの振り返り企画。7月予定の今季開幕戦に向けて、今こそちょっぴり昔を振り返って日本が世界に誇るGTレースのマニアックな知識をつけてみませんか? そうすれば、来たる今季の開幕がより楽しく迎えられはず。

 JGTC時代 2003年技術規則(通称:03規定)から2013年頃までのスーパーGT技術規則(通称:09規定)までの、メカニカルなものをみなさまとともに振り返りたいと思います。当時は自主規制でNGとした写真も、もはや時効(!?)バンバン出しちゃいます!

 それでは世界に誇る『GTの進化の旅/第2回』2003年トヨタ・スープラ編、いってみましょう!

前年にチャンピオンを獲得した2003年エッソウルトラフロー・スープラ
 みんな大好き『エッソウルトラフロー・スープラ』であります。03規定がスタートした2003年、当時の文献を調べるとGT500に参戦する3メーカー、やはり並々ならぬ意欲をもって車両開発に臨んだようです。TRDも一年を費やし03仕様スープラを開発。

 車体はもちろんのこと、エンジンの大排気量化(前年度4.3リッターから5.2リッターへ変更)、そしてフラットボトム規定によって失われたダウンフォースを取り戻すべく空力開発にも力を入れたようです。

 改めて見ると、ボンネット上、後端の左右にエンジンルーム内の負圧を逃がすアウトレットの形状、ラヂエーターのエアアウトレットの配置とデザインなどを見ると、スープラ特有のキャビンからリヤウイングまで上手く空気の流れが導けているように見えます。

2003年エッソウルトラフロー・スープラのエンジンルーム
 エンジンルームを見てみましょう。中央にバルクヘッドギリギリめでまで後退させた5.2リッターV型8気筒エンジン(何てレーシーな響きなんでしょうか)の3UZ-FEが鎮座。エアボックスから延びる2本の棒状の先にエアリストリクターが装着されています(エアリスとか懐かしいですね)。

 その棒状の下にある『TOYOTA MOTORSPORTS』の白いステッカーが貼られている部分が03規定(前後パイプフレーム化)で装着が義務付けられたクラッシャブルストラクチャーになります。やはりNAだからでしょうか、スッキリ、整備性良さそうな印象です。

2003年JGTCトヨタ・スープラのフロントバンパー部
 03スープラはラヂエーターを含むフロントバンパー部がカセット式のようになっています。中央に見える配管はラヂエーター用配管とリザーバータンクでしょうか。やはり整備性良さそうに見えます。

2003年JGTCトヨタ・スープラ
 ラヂエーターを含むフロントバンパーが外れたエンジンルームを見ます。中央のファーストバルクヘッドが目を引きます。左右のパイプフレーム及びファーストバルクヘッドによってエンジンルームの主要コンポーネンツを形成しキャビンから前部の剛性を構成していると思われます。ニッサンGT-Rと比べるとフロントのアーム、長いですね。

2003年JGTCトヨタ・スープラのタイヤハウス
 左フロントフェンダーを見てみましょう。タイヤハウス内にサスペンションのサブタンクが設置されているなど、まだまだ洗練されている印象ではありません。ただ、フロントフェンダー後端などは今後への空力処理の先駆けとなっている造形に見えます。

2003年JGTC25号車 ADVANスープラ
 リヤウイングには下面が凸凹形状をした通称:モコちゃんが登場。このモコちゃんのリヤウイング、後々GT300のトヨタ系JAF-GT車両(セリカ、IS、プリウス等)に使用され、長年愛用されるパーツになります。25号車にはウイングステーの横ブレを防ぐオリジナルの補強バーが追加されています。

2003年JGTCトヨタ・スープラのリヤハッチ内部
 リヤハッチ内部です。パイプフレーム化されているのがよくわかります。ミッションの一部はキャビンに食い込んでいるようにも見えます。サスペンションへのアクセスも良さそうです。

 この時代まだサードダンパーは存在しません。中央から後方に延びるクラッシャブルストラクチャーにリヤウイングをマウント。画面下にキャビンのフレームとカーボン部の継ぎ目が見えます。

2003年JGTCエッソ・スープラのコクピット内部
 王座防衛を目指す1号車エッソ・スープラのダッシュボードにはポイント早見表が設置されています。このあたりから決勝中の順位調整が激化。

2003年JGTCエッソ・スープラと脇阪寿一
 第7戦オートポリス戦の予選2回目、1号車は脇阪寿一選手がアタック。ウエイトハンデがもっとも重い90kgながら「ポールを狙いにいって調子に乗りすぎた」(寿一)と、シケイン通過後の16コーナーでスピン。後にこの場面を振り返り、「魔法をかけられた」と表現していました。

 それでもエッソ・スープラは予選4番手で決勝でも4位フィニッシュ。ポイントランキングトップで最終戦に挑みました。

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 みなさま『GTの進化の旅/第2回』第2回2003年トヨタ・スープラ編、いかがだったでしょうか。

 この年のタイトルは結局、最終戦の大逆転でザナヴィ・ニスモのニッサンGT-Rが獲得しましたが、当時の写真を見返していくと03規定にもっとも上手く適した車両はスープラだったように思えます。

 トヨタ・スープラ勢は1号車エッソ・スープラがシーズン2勝、39号車デンソーサード・スープラが1勝の計3勝を挙げましたが、タイトルには届かず。このあたり、大人の事情が絡んでいそうな感じもします。

 さて次回はいよいよホンダNSXが登場。エンジン、ミッション逆転の写真も登場します。ご期待ください!



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