【スーパーGT基礎講座】スタート同様に緊張高まるピット作業も魅力。決勝を見る上で覚えておきたいポイント

 年々観客動員数も増加し、2020年からドイツのツーリングカーシリーズ、DTMドイツ・ツーリングカー選手権との共通車両規定『Class1(クラス1)』も導入されるなど、世界的にも存在感を増しているスーパーGT。日本国内に目を向ければグランツーリスモSPORTにマシンが収録され、ゲームセンターではシリーズをイメージにしたゲーム機が稼働するなど、さらに認知度、ファン層が広がっている。

 4月6日時点で、2020年シーズンの開幕は7月11~12日とされている。開幕までのおよそ3カ月の間、これからスーパーGTをチェックしようというかたのために、あらためてシリーズの歴史やレースフォーマットをおさらいしていく。熱心なスーパーGTファンのかたも、スーパーGTの魅力を再確認する機会になれば幸いだ。第4回目はスーパーGTの決勝の流れについて解説していく。

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■決勝

 以前紹介したように、スーパーGTの決勝走行距離はレギュレーションで「最短250㎞から最長1000㎞を超えた最初の周回」と規定されている。そして具体的な決勝レース距離はラウンドによって異なっており、ほとんどのラウンドが300kmレースとして行われている。

 決勝レーススタート前には、ほぼすべての大会でサーキットの地元県警察に所属する白バイやパトカー先導による1周のパレードラップが行われる。スーパーGTマシンを従えて警察車両がサーキットを走行し、ホームストレートでサイレンを鳴らすようすは往年の刑事ドラマを彷彿とさせ、気持ちも高まる光景だ。

 地元県警先導のパレードラップ終了後には、今度はセーフティカー先導による1周のフォーメーションラップが行われる。各車両は時速90kmで走行しながら、マシンを左右に振る“ウィービング”や急加速、急減速を繰り返してタイヤとブレーキに熱を入れ、レース開始に備えていく。

 またスーパーGTではフォーメーションラップ終了後、F1のようにグリッド上で停止してから一斉にスタートするスタンディングスタートではなく、低速で走行しながら隊列を整え、グリーンシグナルと同時に一斉に加速するローリングスタートが採用されている。各ドライバーがスタートのタイミングを伺いながら加減速を繰り返している瞬間は見ているファンももっとも緊張が高まる瞬間だろう。

 GT300クラスもローリングスタート方式を採っており、GT500の隊列がスタートを切ったあと、GT500の隊列からは距離を置いて、GT500と同様にグリーンシグナルにより決勝スタートを迎える。

 なお、悪天候時などはパレードラップが行われず、フォーメーションラップが2周行われることや、セーフティカー先導のまま決勝レースがスタートするセーフティカースタートとなる場合もある。

 決勝レースではドライバー同士のバトルも見どころだが、各チームの腕が問われるピットストップも見どころのひとつ。ピット作業では秒単位でのタイム短縮/ロスが起こりやすく、またタイヤウォーマーの使用が禁止されているスーパーGTでは、ピットへ入る周回の“インラップ”やピット作業直後の“アウトラップ”でも順位の入れ替わりが起きやすく、レース結果を大きく左右することから見逃せないポイントだ。

 スーパーGTでは決勝レース中、最低一度のピットストップが義務づけられている。ピットストップ時に行われる作業は大きく分けてタイヤ交換と給油、ドライバー交代の3つ。ピット作業中、マシンに関わる作業を行えるのは最大5名と規定されている。

 このうちタイヤ交換作業を行えるのは2名まで。さらにレギュレーションで「タイヤ交換を行う2名以内の作業員は、平置きされた装着予定のタイヤを他の者からの援助を一切受けることなく装着しなければならない」と定められているため、F1のように複数人でひとつのタイヤを交換することはできない。

 また給油中はドライバー交代に関連する作業、窓拭きやフロントガラスのティアオフフィルム剥がしといった作業以外は行うことも禁止されている。

 そのほかレギュレーションで、タイヤ交換の際には交換後のタイヤを平置きにすることや、給油中にタイヤ交換担当スタッフがインパクトレンチを持って待機している際、インパクトソケットが車両輪郭の内側に入ってはならないなど、細かな規定が定められている。

 これら厳しいルールを守ったうえで、どれだけ素早くタイヤを交換できるか、ピット作業を完了できるかは、まさにチームの腕の見せどころ。レーススタートのときよりも緊張感が高まる瞬間とも言える。

 また、主にGT300クラスではタイヤ交換を行わず、ドライバー交代と給油などの作業だけでピット作業を完了する“タイヤ無交換作戦”という作戦を採るチームもある。タイヤ交換にかかる時間を削れるため、ピット作業にかかる合計時間を大幅に短縮できるが、長丁場のレースを1セットのタイヤで走り切ることになるため、安定したパフォーマンスを発揮できるタイヤとタイヤマネジメントに長けたドライバーが必要となる戦略だ。

 また、スーパーGTでは決勝レース中に1名のドライバーが総計で当初のレース距離の2/3を超えて運転してはならないという最大運転距離も設定されている。どちらか一方のドライバーだけがマシンをドライブし続けることが禁じられているため、両ドライバーにレースでの強さと予選での速さが求められる。

 ちなみに、ドライバーの交替前にセーフティカーが出動し、セーフティカー導入中にレース距離の2/3を超えた場合はペナルティ対象外。ただし、セーフティカーが退去した周にピットに戻り、ドライバー交代を行わないとペナルティ対象になる。

 次回は、2020年シーズンのスーパーGTの開催が予定されている国内外の全8サーキットについて紹介していこう。



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