年々観客動員数も増加し、グランツーリスモSPORTにマシンが収録され、ゲームセンターではシリーズをイメージにしたゲーム機が稼働するなど、さらに認知度、ファン層を広げているスーパーGT。残念ながら2020年シーズン開幕戦は新型コロナウイルス(COVID-19)で延期となってしまったが、これからスーパーGTをチェックしようというかたのために、あらためてシリーズの歴史やレースフォーマットをおさらいする。熱心なスーパーGTファンのかたも、スーパーGTの魅力を再確認する機会になれば幸いだ。
第1回目はスーパーGT最大の特徴とも言える“2クラス混走”について取り上げる。
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スーパーGTは1994~2004年まで開催されていたJGTC全日本GT選手権を前身とする国内最高峰のGTレース。日本だけではなく世界を見据えたシリーズ展開に向けて、2005年からスーパーGTという現在の名称になり、2020年で15シーズン目を迎える。
シリーズ最大の特徴である2クラス混走という形式はJGTC時代から受け継がれてきたもの。シリーズ創生期の1994年と1995年の2シーズンはヨーロッパのGTレースに習いGT1、GT2というクラス名称で行われていた。
しかし、その後FIA国際自動車連盟が定めたGT1、GT2という車両規定との混同を避けるため、1996年シーズンからGT1はGT500、GT2はGT300という独自の名称に変わり、それ以来この形が維持され続けている。
このGT500、GT300という名称は、当時参戦していたレーシングカーのエンジン出力が、それぞれ約500馬力、約300馬力だったことに由来しているが、近年のGT500マシンは550馬力を優に超える出力があるとみられ、またGT300マシンのなかにも公称500馬力を超えている車両がある。
GT500クラス
2020年シーズンのGT500クラスにはトヨタ、ホンダ、ニッサンと日本を代表する自動車メーカーが参戦。ドイツを中心にヨーロッパで開催されているDTMドイツ・ツーリングカー選手権との共通車両規定である『クラス1』に準じたマシンをそれぞれに開発して投入する。
具体的にトヨタはGRスープラGT500、ホンダはNSX-GT、ニッサンはGT-RニスモGT3というマシンを開発しており、3メーカー合計で15台がしのぎを削る。車両の外観はベースとなった市販車の面影を残しつつも全車とも共通のモノコックを使用して製作されている。
またホンダNSX-GTについては、市販車がエンジンを車体中央に積むMRレイアウトを採用しているのに対し、GT500車両ではクラス1規定に準じ、車体前方にエンジンを積むFRレイアウトに変更されているのも特徴だ。
各車両が搭載しているエンジンは2リッター直4直噴シングルターボエンジン。F1やWEC世界耐久選手権でも使われるような最新技術が盛り込まれている上、マシン1台につき年間2基というエンジン基数制限のもとで年間8戦を戦い抜いており、ハイパフォーマンスと高い信頼性を両立したエンジンとなっている。
GT300クラス
以前のGT300クラスは各チームが独自に開発したレーシングカーが主流だったが、近年はSROモータースポーツグループが提唱して誕生したFIA-GT3と呼ばれる市販レーシングカーを使って参戦しているチームが大多数だ。ただシリーズを運営するGTアソシエイション(GTA)が独自に定めている規定に則り、独自に開発できるJAF-GT300マシン、GTAが販売する4.5リッターV8エンジンとモノコックをベースに、各チームがボディなどを開発できるマザーシャシー(JAF-GT300MC)も参戦しており、ひとつのクラスを計3タイプのマシンが争っている。
FIA-GT3マシンはヨーロッパの自動車メーカーなど中心にさまざまな車両が販売されており、2020年シーズンにはメルセデスAMG GT3、ポルシェ911 GT3 R、アウディR8 LMS GT3、BMW M6 GT3、ランボルギーニ・ウラカン GT3、アストンマーティン・ヴァンテージ AMR GT3、マクラーレン 720S GT3という欧州車とニッサンGT-RニスモGT3、ホンダNSX-GT3、レクサスRCF GT3という日本車が参戦する。
JAF-GTではスバルBRZ、トヨタ・プリウスGT、トヨタGRスープラの3車種4台が参戦。マザーシャシーはトヨタ86MC、ロータス・エヴォーラMCの2車種3台が参戦する。
FIA-GT3は各メーカーから販売されている状態からセットアップの変更などはできるものの、空力パーツなどを増設・改良することはできないのに対し、JAF-GT/マザーシャシーについてはシーズン中も独自に開発していくことが認められている。
またFIA-GT3とJAF-GT、マザーシャシーは、それぞれ異なる車両規定で作られていることもあり、パフォーマンスはバラバラ。その差を埋めるためBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)という性能調整によってパフォーマンスの均一化が図られている。
クラスを戦う車両だけでなく、参戦するドライバーも大ベテランから驚異の速さを誇る新人、チームによってレース戦略も大きく分かれるなど、あらゆる意味でバラエティ豊かなのがGT300クラスの特徴であり醍醐味。スーパーGTを知りたての場合、シリーズのサポートクラスといった認識になりがちだが、レースの魅力が凝縮され、単独でも充分すぎるほどの見どころを持つクラスがGT300なのだ。
そして、そんなGT300と日本を代表する自動車メーカーがしのぎを削るGT500が同時にレースを戦うことで、予想のつかないレース展開が生まれ、数々の名勝負が生まれる。これこそが世界に類を見ないスーパーGTだけが持つ魅力だ。
またスーパーGTならではの特徴としてタイヤ開発競争の存在も忘れてはいけない。2020年は両クラスともブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランの4メーカーがタイヤを投入。各車両、各レースごとにタイヤ開発が行われており、この争いもスーパーGTのバトルを演出している。このタイヤについて別稿で改めて解説する。
連載第2回目では、より具体的にスーパーGTのレースウイークの流れについて解説する。
from 【スーパーGT基礎講座】日本を代表するレースの魅力をおさらい。シリーズ最大の特徴“2クラス混走”が生むもの
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