2019年、これまで活動していたスーパーGT GT500クラス、全日本スーパーフォーミュラ選手権に加え、GT300ではリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rを、そしてニュルブルクリンク24時間にニッサンGT-RニスモGT3を投入するなど、新たな挑戦を続けて来たKONDO Racing。その挑戦を牽引し続けてきた近藤真彦監督に、2019年の活動と2020年に向けて聞いた。
近藤監督率いるKONDO Racingは、2019年はスーパーGT GT500クラスにリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rを投入し、高星明誠とヤン・マーデンボローがドライブ。加えてGT300クラスでは日産自動車大学校と組み、リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rで参戦を開始。学生たちが携わる環境ながら、平峰一貴とサッシャ・フェネストラズのドライブでランキング5位という成績を残した。
さらに、3カ年計画でスタートさせたニュルブルクリンク24時間への挑戦では、松田次生/藤井誠暢/高星明誠/トム・コロネルという4人がニッサンGT-RニスモGT3を駆り、ドイツのワークス勢がひしめくSP9クラスに参戦。初挑戦ながら総合9位/SP9クラス8位という快挙を達成。全日本スーパーフォーミュラ選手権では、国本雄資と山下健太を擁し、第6戦岡山では山下が初優勝を記録している。
そんな新しい挑戦を展開してきた一年を終えた近藤監督に、2019年の活動と2020年に向けて聞いた。
■“人の力”を絞りきり得た1年目の結果
Q:2019年はニュルブルクリンク24時間で9位という素晴らしい結果を残しました。今季KONDO Racingはさまざまなカテゴリーに参戦したなかで、ニュルの9位という結果は近藤監督のなかでどういった印象だったのでしょうか。
近藤真彦監督:(以下MK):KONDO Racingが参戦するカテゴリーのなかのひとつとして、他のレースに参戦するときの気持ちとはあまり変わらなかったですね。ただ海外であったということ、初挑戦であったという部分では、少し気が引き締まる思いで行きました。
でも、ニュルブルクリンク24時間というレースは、変な話ですが15時間でリタイアして帰ってきても『あそこまで良く頑張った』と言われるようなレース。もちろん僕はそれでは納得はできないけど。あのレースは、出場するまでにVLNに出たり、予選レースに出たりしなければならない。そうして決勝のスターティンググリッドにいかにつけるか……までが僕のなかでは勝負でしたから。そこからスタートしてからは未知の世界でしたね。
今までニスモや横浜ゴムなどに行って、いろいろな“積み木”をあちこちで積み上げ、やっとニュルブルクリンクに3年間挑む構想ができた。そこからスタートして、苦労してドライバー、メカニック、現地の受け入れチームと体制を作って、VLNを戦って、壊れないクルマやタイヤを作って、やっとグリッドにつけ、僕はホッとすることができた。『はあ、やっとここまできたな』と。
あとはスタートしたら、なるようにしかならないですよね。今年のドライバーは、僕はいいと思って連れてきているし、今持っているベストのチーム、タイヤ、クルマでやっていたから。あとはどうなるかは分からなかった。
これはトークショー等でも言ったことだけれど、1年目ということで、ドライバー、エンジニア、タイヤと、“人の力”を絞りきりました。それは、あと2年残っているから、1年目は大事なリザルトを僕に持ってかえらせてくれ、そして2年目は“チャレンジをさせてください”ということ。2019年の挑戦は、“完走するということ”というと情けないけれど、それが一番の目的でしたね。
■「美味しいお酒」に酔った初年度。2年目については「これから」
Q:そのニュルブルクリンク24時間のレース終了直後、みんなで食事に行ったときに近藤監督がかなり酔われたと聞きました。そのときはどんな心境だったのですか。
MK:ホッとしたということもありますね。でもいつものお酒の量と違わなくても、30時間以上起きていたから(笑)。土曜の朝起きて、夕方にスタートして、日曜の夕方にフィニッシュして……。みんなと『おめでとう』と喜びあって、さあホテルに戻ってバーでお祝いしようとやっていたら、それは少量でも酔いますよ(笑)。でも、すごく美味しいお酒でしたね。
そこにはスバルさんもトヨタさんもいたし、みんなが僕たちのところに来て『よかったね』と言ってくれた。ドイツの“レース村”に日本人が戦いに来て、お互いに健闘し合ったようなところがありましたが、それはすごく良かったですね。
でも2年目はそうはいかない。本当にキツくなると思っています。いまインタビューを受けている時点では何も考えられていないですね。ニュルブルクリンクについては、年明けから少しずつ固めていかないと。僕が3年契約しているのはスポンサーとタイヤメーカーとニスモだけですから。あとはエンジニアもドライバーも、受け入れ先のチームもぜんぶ1年契約でやっています。もちろん継続してもらいたい部分もありますが、そこは一度リセットだと思っています。
Q:まだ体制について話せることはないことはないようですね。
MK:そうですね。ただヨーロッパ側の動きは僕も少し理解できていますので、向こうとはやり取りしています。
Q:先日、ドイツからは2019年に組まれていたチーム(mcchip-dkr)が「契約が解除された」と発信しているというニュースも届きました。そのあたりはいかがでしょうか。
MK:そこもニュートラルです。まだリセット中ということですね。彼らとしてみたら、今年いい成績を残すことができたので、条件も良くし、契約してもらいたい、良い仕事をしたな、というお互いのやり取りはしました。ただ年が明けたらお互いに話そうという交渉はしています。もちろん他にも候補のチームはあります。
■全体としては『ん?』という結果だった2019年
Q:2019年、KONDO Racingとしてはニュルブルクリンク以外にもGT500、GT300、それにスーパーフォーミュラと参戦しましたが、活動を振り返ってください。
MK:ひとつひとつのカテゴリーでいいところもあれば、来年に向けての勉強になったという部分が数多くありました。全体としてKONDO Racingの2019年がどうだったかというと、2018年に比べてリザルトだけを見ると『ん?』という部分を感じますね。
Q:そのなかで印象に残ったレースはありますか?
MK:まずは(山下)健太の優勝(スーパーフォーミュラ第6戦岡山)ですね。これでKONDO Racingでの活動のなかで肩の荷がひとつ下りた印象です。ホッとしました。このまま0勝で終わってしまうのと、ひとつ勝つのではやっぱり大きく違いますから。それとGT300については、全員が良くやったと思うし、シリーズランキング5位という結果は素晴らしいと思いますけど、さすがに勝ちきれなかったというところに課題が残ったかな……と思いますね。あのメンバー、クルマ、エンジニア、ふたりのドライバーの顔ぶれなら勝ってもおかしくはないと思いましたけど。サッシャ(フェネストラズ)も平峰(一貴)も良くやったと思いますけど、今のGT300は本当に勝つのが大変ですから。
Q:その点では、やはりGT300では第4戦タイが悔しいレースでした。
MK:悔しいですね。終盤、あそこでGT500とGT300でガチャンとやってしまったけれど……(GT500のリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rがリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rをかわそうとした際に、GAINER TANAX triple a GT-Rがトップを奪った)。たまたまウチのチーム同士で、無線で『もう少ししたら平峰がいるよ』と僕が言おうか言うまいか迷ってしまった。ただGT300はうしろから追われていて、GT500は前を走っていたバンドウ(WedsSport ADVAN LC500)を狙っていた。GT300の方は、15〜16秒を10周くらいで追いつかれているんですよね。そこがやはり弱かったかもしれません。ただそれは結果論であって、その日の夜はずっと『とにかく僕の指示系統が悪かった』と反省しっぱなしでした。
■「とにかく早く結果を出さなければ」
Q:2020年の活動については、今後各メーカーから発表されると思いますが、今の段階で話せることは何かありますか?。
MK:基本的に、2019年と参戦するカテゴリーは変わりません。それとどのチームも同じだとは思いますが、ドライバーの残留と入れ替わりは割とありますね。それから、スタッフについては、エンジニアについての動きも少しあって、これはポジティブな方に調整中です。
Q:最後に、ファンの皆さんに2020年に向けて何かメッセージがあれば。
MK:もう僕たちのチームは『若手ですから』なんて言ってられなくなってきている。インパルさんやトムスさんに胸を借りて頑張ります……なんて言う立場ではなくなっているのも分かっていますので、とにかく早く結果を出さなければいけないと思っています。だから成績が悪ければお叱りをいただき、良かったら褒めていただければなと。
ただレーシングチームをやっている以上は、いつも勝ちにこだわって、先輩チーム、後輩チーム関係なくガンガン攻めていきたいです。すごく華やかでカッコ良く、強いチームを目指していますので、KONDO Racingらしく2020年を戦えればと思っています。ぜひ応援してください。
from 初のニュル挑戦、山下のSF初優勝。嬉しさと悔しさが残る2019年/KONDO Racing・近藤真彦監督インタビュー
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