2020年国内ストーブリーグ:セルモ/インギングの台数拡充で気になる脇阪寿一監督のゆくえ

 12月13日(金)発売のauto sport No.1521でスーパーGTとスーパーフォーミュラのストーブリーグ情報をお届けしたが、新たな情報が入って来た。12月27日(金)発売のNo.1522では最新情報をまとめているが、ここでは前編/後編に分けてその全貌をお届けしよう。

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 アレックス・パロウのインディカーシリーズ参戦がついに発表された。autosport webでも報じられているようにチームはデイル・コイン・レーシングだが、2020年シーズンはチームゴウとの共同プロジェクトとなり、エントラント名は『デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チームゴウ』としての挑戦だという。

 2004年にル・マン24時間で総合優勝を果たしたチームゴウは、長い沈黙を破り2019年にスーパーGT GT300クラスへ復帰した。そこで荒聖治のチームメイトに抜擢されていたのがパロウで、最終戦もてぎでの衝撃的なポールポジション獲得はいまだ忘れられない。

 スーパーフォーミュラでの活躍も含め、パロウには世界と対等に戦える実力が備わっていることを郷和道氏はいち早く見抜いていたのだろう。だからこそパロウとともに北米最高峰のインディカーシリーズ、そして世界3大レースのひとつ、インディ500へ挑む決断を下したものと考えられる。

 ちなみに、最終戦もてぎの現場ではレクサス陣営とニッサン陣営の関係者が「次々とパロウ獲得に向けてチームゴウのピットを訪れていた」という目撃証言がある。

 そのスピードセンスには、郷氏に限らず日本人レース関係者の誰もが(ただしホンダを除く)目を奪われていたわけだが、それは海の向こうでも同様だった。それはミドオハイオのテストでパロウを走らせた、デイル・コインの“あるベテランエンジニア”の言葉に象徴されている。

「自分は30年間、ここでエンジニアをやってきた。これまでに数えきれないほどのドライバーを見てきたが、アレックスのような才能に出会ったのは正直に言って“ふたり目”だ。まさかこれほどの逸材が、日本にいたとは!」

 あらためて考えると、日本のファンは“30年間でふたり目の逸材”と称される才能を目撃していたことになる。逆に言えば、それほどのドライバーを手放してしまったホンダの決断が、かえすがえすも悔やまれる。

■気になる脇阪寿一監督のゆくえ

 12月13日のauto sport No.1521発売から5日後に発表された話題といえば、セルモ/インギングのGT500/SF参戦体制拡充だ。GT500は2台体制となり“1号車”は大嶋和也/坪井翔組、38号車は立川祐路/石浦宏明組というラインアップが濃厚で、3台体制のSFは石浦宏明、坪井翔という2019年までの布陣に大嶋和也を加えた体制を敷いてくると思われる。

 一方、12月13日に発表されたWEC世界耐久選手権の2020/2021年シーズン暫定カレンダーにも驚きがあった。予想外だったのはWECの2020/2021年シーズンのなかにスーパーGTと同日程のレースがなかったことだ。

 それでも2019/2020年シーズンのル・マンテストデーが第3戦鈴鹿とかぶっていること、WECのカレンダーがあくまでも“暫定”であり変更される可能性があることを考えると中嶋一貴と山下健太のレギュラー登録は避けておきたい。

 ただ、一貴はトムス2台のどちらかに、山下は“1号車”か、かつて在籍していたバンドウなどで第3ドライバー登録してくる可能性も考えられる。

 また、トヨタ陣営内にまつわる噂としてパドックでささやかれているのは、名将・田中耕太郎エンジニアのサードからの離脱だ。もし、これが事実であれば、サードにとっては大きな痛手で、テコ入れが必要な状況となる。

 そして、何より注目したいのが脇阪寿一監督の去就だ。セルモ/インギングの台数拡充はチームルマンの活動方針変更によるものという見方が強いため、そのまま“セルモが走らせる1号車”の監督を務めるのが自然な流れではあるが、タイトル獲得というひと区切りついたタイミングで新たな役目を担う可能性もあるかもしれない。

 寿一監督は自身の現役引退発表の際、豊田章男社長からTGRアンバサダーを任命されており、毎年シーズン終了後に開催されている『TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL』(TGRF)では総合プロデューサーも務めている。

 その流れからすると、たとえばトヨタ陣営全体を取り仕切るTGRF総監督という立場を務める可能性もゼロではない。ただ、チームルマンを2017年ぶりにチャンピオンへと導いた功績からすれば、建て直しが急務となるサードのチーム監督という選択肢も充分にあり得る。

 サードといえば、チームルマンと同様に寿一監督がドライバーとして所属していた経験があり、自身にとって現役最後の優勝を果たしたチームでもある。ドライバーだけでなく“チャンピオン監督”の動向にも注目が集まっている。



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