「リグをかけたいと言ってきたメーカーがある」と最終戦土曜日の公式会見で坂東正明GTA(GTアソシエイション)代表は明らかにした。
11月23~24日に富士で開催されるスーパーGT×DTM特別交流戦に向けて、ここで履くことになっているハンコックタイヤに合わせたセットアップを出すために、7ポストリグを掛けたいとの要望がメーカーから出たのだ。
それだけメーカーがこのレースに本気になっている……というわけではない。クラス1規定でGT500とDTM車両が統一されてイコールコンディションでレースできるのは2020年以降のことであり、今回はエキシビジョンレースの要素が濃い。
それでもリグテストの話まで出るのは、それだけハンコックタイヤがいつも使っているGT500用タイヤとはかけ離れているからだ。
ホッケンハイムDTM最終戦での惨敗を受けて、知り尽くした富士が舞台だけに、ここで初めてDTM車両を走らせるドイツのメーカーを相手にあまりみっともないレースはできないと危機感を抱いているメーカーがあるということだ。
実際ハンコックタイヤはどんなフィーリングなのだろうか? ホッケンハイムでGT-Rを走らせた松田次生は「木できているかと思うくらい硬いです」と表現する。
コントロールタイヤとしてDTMに採用されているハンコックは当然、どのようなコースやコンディションでも安全にレースできることを第一に製造されているので、コンペティション前提のGT500用タイヤと比較することはナンセンスだが、それでも想像を超える違いがあるようだ。
なおかつドライタイヤには内圧下限規制があり、グリッド上でもオフィシャルが計測して回る(富士での対応は今後確定)。その結果、走行時にダッシュモニターの内圧表示は見たことのない高い値を示していたと松田は語る。
そんなハンコックタイヤを使いこなすDTM勢のセッティングはGT500とは大きく異なり、相当に柔らかいスプリングを使用しており、その結果1G状態での車高が高くなる。NSXをホッケンハイムで走らせた伊与木仁エンジニアは「走っている状態でもかなりDTM車両の車高が高い」とジェンソン・バトンがコメントしていたことを教えてくれた。
GT500では規定ぎりぎりの低い車高を狙ってセッティングして、下面のダウンフォースを最大限活かすのがセオリーとなっている。タイヤ開発もそれを前提として進んできた。
ところがDTMでは車体を大きくピッチングやロールさせて硬くグリップの低いタイヤに荷重を与えることを最優先でセットアップが進化してきた。言ってみればほぼ同じような規定の車両であるものの、使い方がスーパーGTとDTMでは全く違い真逆の位置関係にある。どちらが上か下かではなくセットアップの点でも違うゲームをしている。
となると場所は富士であっても、タイヤがハンコックである以上DTMのルールでゲームを進めなければならない。
迎え撃つスーパーGT勢は、これまでのセットアップシートを捨てて、いつものミリ単位のセットではなく、大きなストロークをどのように制御するのかにフォーカスしなければいけないだろう。発想を180度転換する必要がある。
となると冒頭の「リグに掛けたい」という要望も理解できる。ドライバーもいつものフィーリングを追うのではなく、違う乗り物を扱うくらいの切り替えが必要になるであろうし、「いつもの感じ」を出そうと固執していたらセッティングも迷路にはまるのは必至だ。
誰が週末に正解にたどり着くのか、木曜日と金曜日の練習走行が楽しみになってきた。
from 【スーパーGT×DTM特別交流戦】襲来する7台のDTMマシンにこのままだとやられる
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