「同じクルマでも(スーパーGTとDTMでは)、ボクシングとキックボクシングぐらい違う」と語るのは36号車au TOM‘S LC500の東條力エンジニア。『【スーパーGT×DTM特別交流戦】襲来する7台のDTMマシンにこのままだとやられる』で書いたように、スーパーGT✕DTM交流戦で全車が履くハンコックタイヤへの対応が、このレースにおける最大のポイントだ。東條エンジニアにどのような考え方でこのレースに臨むのかを聞いた。
「基本、雨セットするのと同じですよ。グリップがそれぐらいなんだから、そうせざるを得ない。一発は今の(シリーズにおける)セットでも大丈夫かもしれないけど、それではタイヤがもたない。それにいくらセットを出してもタイヤはタレるから、それをドライバーがなんとかする。DTMはそこを見せようとしている。ドライバーにフォーカスしているよね。僕は面白いと思います。もちろんシリーズがワンメイクになってしまうのは断固反対だけど、1戦だけなら楽しんでやればいい。F3だって、マカオに行くと全然違うレースじゃないですか。それと同じ」
「セットの違いだけでなくて、ドライバーの感覚もいっしょで、こっちで1年やると(外国人ドライバーだったとしても)そのグリップに慣れてしまう。ホッケンハイム(スーパーGT車両3台が参加したDTM最終戦)の雨だと、向こうのドライバーは全員、10秒ラップタイムが速かったからね。グリップがいいクルマがしか乗っていなくて、そこに慣れてしまっているドライバーは苦労すると思う」
では、今週末GT500勢で波に乗れるのは誰か? 予想の元となるデータは皆無なものの、東條エンジニアのコメントを元に妄想を膨らませることはできる。ドライバーとエンジニアがどの程度「ローグリップ環境」の経験を持ち、その感覚が残っているかどうかが判断材料となりそうだ。
トップカテゴリーでダウンフォースの効かないローグリップ環境があったのは90年代に開催されたJTCCだ。この経験を持つドライバーは立川祐路のみ。エンジニアでは東條エンジニアや、サードの田中耕太郎エンジニアが挙げられる。バンドウの林寛幸エンジニアは、JTCCよりも前、グループAでGT-Rを走らせていた。
現行カテゴリーでローグリップといえばスーパー耐久がある。平手晃平、山下健太、野尻智紀、坪井翔、石浦宏明、中山雄一などがスポットを含めてこの1~2年で乗った経験を持つ。
さらには鈴鹿10hでピレリタイヤを履いた松田次生もローグリップの感覚が残っているかもしれない。高星明誠がブランパンシリーズに参戦したのは16年。東條エンジニアの「1年も乗っていたらそのグリップに慣れる」との説からすると、少し感覚は遠くなっているか?
欧州のサーキット路面はミューが低いコースも多く、その経験値の豊富さでは昨年FIA-F2に参戦した牧野任祐が挙げられる。今年のスーパーGTでは満足のいく結果が残せなかっただけに、このレースに向けたモチベーションが高いとの情報もある。
さらに欧州でのレース経験が豊富なのはフレデリック・マコヴィッキィ。WECでGTE車両を14~15年、16~18年シリーズにおいて走らせており、雨での速さは第7戦SUGOの優勝で証明している。
究極のローグリップ経験は全日本ラリーに参戦しているヘイキ・コバライネンか。となるとコバライネン✕田中耕太郎エンジニアのコンビネーションが最強の予想が成り立つ!?
富士スピードウェイという、ドイツ側のアウェイであるサーキットにも関わらず、セットアップとタイヤへの経験値で優位に立つDTM勢にGT500勢はどのように対抗するか。ドライバーとエンジニアの対応力が試される。
from 試されるローグリップへの対応力。DTM優位のなかでGT500クラスの交流戦最強ドライバーは誰か【スーパーGT×DTM特別交流戦】
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