ウエットコンディションとなった、スーパーGT×DTMの特別交流戦の金曜日。事前に予想されていたとはいえ、前日のドライコンディションとは勢力図がまるっきり入れ替わり、DTM勢がふたつのセッションともトップになった。そしてハンコックのレインタイヤに苦しむ日本勢。そのなかでも、特に苦しんでいるZENT CERUMO LC500の立川祐路、RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴、そしてDTMではあるがBMW M4で参戦する小林可夢偉に話を聞いた。
富士マイスターであり、富士のウエットコンディションではいつも速さを見せる立川が苦しんでいる。午後の練習走行ではウエットのコカコーラ・コーナーでは何度か飛び出し、コース上にマシンを留めるのがやっとの状況に見えた。
「ブレーキが全然温まらなくて効かない。今日は朝からとにかくブレーキが効かなくて、1コーナーで他のクルマよりも50メートルくらい手前で踏んでも止まりきれない。それが一番の問題」と、セッション後の立川。
ブレーキで止まれずタイヤに荷重が掛けられなくなり、タイヤも温まらずグリップが出ない。何周走ってもブレーキとタイヤの状況は変わらず、立川はセッション終了前にマシンをガレージに入れた。
「ブレーキのダクトを全閉にしても温まらない。他のクルマは上がっているのに、その原因が分からない状況です」と頭を悩ます立川とZENT CERUMO LC500。
午前の練習走行でステアリングを握った石浦宏明も同じ状況で、走り終えたマシンは「メカニックがブレーキローターを触れるレベルだと聞きました」と石浦。手の打ちようがない状況に、ZENT CERUMO LC500陣営の雰囲気は重い。
同じく絶望的に苦しんでいるのがRAYBRIG NSX-GT。ホッケンハイムで走行した経験があるとはいえ、この富士では原因不明の不振に陥ってしまった。
「何に苦しんでいるのかも分からない状況です。まずはタイヤがまったく温まらない。走ってピットに戻ってきてもタイヤが冷たい。セッティングとかクルマのバランスがどうとかのレベルではなくて、とにかくタイヤが発動しないので常にアウトラップの状態で周回している感じです」と、金曜日の走行を振り返る山本尚貴。
「もちろん、ドライバーとしてはタイヤに熱が入るようにいろいろ乗り方を工夫していうのですが、何をやっても温まらない。他と比べて、全然違う次元にいる感じです」と山本。
前日、木曜日のトップタイムは1分30秒台で、ウエットになった金曜の午後のトップタイムは1分50秒台。同じコースで20秒差となれば、まったく違うカテゴリーのクルマになるとっても過言ではない。もちろん、雨量やサーキットの違いにもよるが、スーパーGTではドライとウエットの差は5秒から大きくても10秒程度。20秒の差は、まさに異次元と言える。
「同じアウトラップなのに、1コーナーで曲がって100Rに行くまででもペースのいいクルマに離される状況。同じくタイヤが温まっていない状況なので、クルマの素性の違いなのだと思います。とにかくタイヤに入力が掛けられなくて、ずっとホイールスピンしている状況です」と、山本はお手上げ状況になっていることを明かす。
状況は違えど、別な事情で苦しんでいるのは今回、BMWから参戦している小林可夢偉だ。
「BMWのマシンに乗るのも今回まったく初めてで、ハンコックタイヤも初めてです。チームともこの富士で初めて会いました。GTでウェットを走るのもウインターテストで2周目に刺さった時以来です」と可夢偉が話すように、とにかく初めてのオンパレード。さすがの可夢偉でも、状況があまりに厳しい。
それでもスーパーGTマシンとDTMマシンの特徴の違いについては「スーパーGTと比べてタイヤが違うのでクルマの差が発見できないですけど、エンジンは明かに違いますね。DTMの方は全然、パワーがないですよ。スーパーGTの方が全然、トルクがあるし、ドライバビリティもいい。最初に乗ったときは『あれっ』と思うくらい」と可夢偉。
「そこで僕らはエンジンパワーがないなかでダウンフォースを削るから、結構、悪循環ですよね。タイヤは全然違いますね。BMW勢が全体ではまっている感じです」と苦しい状況を明かした。
DTMとの交流戦は、ある意味ドライバー、チームの新たな一面を見ることのできる貴重な機会とも言える。果たして立川に石浦、そして山本、可夢偉と経験豊富なドライバーたちがこのどん底とも言える状況からどのように抜け出して、いつものパフォーマンスを発揮するのか。
from 「何に苦しんでいるのかも分からない」ウエットで苦しむ山本、そして立川。初めてづくしで苦戦する可夢偉
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