ついに今週末11月23~24日に、富士スピードウェイで開幕する“ドリームレース”、DTMドイツ・ツーリングカー選手権のマシンが日本に飛来して、同じ“Class 1”規定のスーパーGTのマシンと対決するスーパーGT×DTM特別交流戦。すでに走行セッションが開始され盛り上がりを見せているが、今回はそのタイミングに合わせ日本のGT500勢と対峙するDTMマシンに注目する。
海の向こうのハコレース最高峰、そこには紆余曲折を経ながらも35年近い歴史があったのだった。ここでは現在発売中の雑誌『新旧DTMマシンのすべて』に収められている車両解説記事から3台をピックアップしてお届けする。
全3回でお送りする第2弾は1993~96年までのDTM最隆盛期=クラス1ツーリングカー規定下を代表する1台である『アルファロメオ155 V6 TI』だ。
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1993年、車両規定がクラス1ツーリングカーとなったDTMに、前年のイタリア・スーパーツーリズモ選手権を155 GTAで制したアルファロメオは新開発の『155 V6 TI』を擁して乗り込んだ。
155 V6 TIは155 GTAを基本に開発された車両だったが、レース用の155 GTA自体は市販車の155 Q4をベースとする4WDモデルで、アルファロメオと同じフィアットグループのランチアがデルタ・インテグラーレで採用したエンジンとドライブトレイン系がそっくり搭載される車両だった。
WRC世界ラリー選手権のグループA仕様デルタで競技用4WDシステムの豊富なノウハウを持つランチアのメカニズムが、サーキットレースでも155 GTAの活躍をアシスト。これがDTM車両の4WD化に大きな影響力を発揮した。
155のエンジンはクラス1の規定が2.5リッターであることを受け、2498ccの60度V6純レーシングエンジンとして新たに開発された。155にV6搭載車の設定はなかったが、上級車種の164にV6搭載車があることから、155へのV6エンジン搭載も認められた。
クラス1ツーリングカーのエンジンは内容的には2.5リッターのF1エンジンと言えるほど高性能な仕様が可能であり、アルファロメオの場合は初期仕様で420psと、1トンそこそこしかない車重のボディに組み合わせるとパワーウエイトレシオは2.5kg/psを切るという、すさまじい値を叩き出していた。
4WDシステムの採用によって1輪当たりの負担出力は100ps強となったため、駆動バランスが向上、タイヤにとっても有利に働いた。そのため、路面μが低下する雨天のレースで155 V6 TIは無類の強さを発揮した。
155 V6 TIは96年のITC国際ツーリングカー選手権まで使われたが、途中構造変更などを経て、最終的には2499ccの90度V型6気筒エンジンとなり、490psもの出力を得るまでに至っている。
戦績は投入初年の93年に11ラウンド22レースで13勝を記録。このうちニコラ・ラリーニが11勝と圧倒的な強さでドライバーとマニュファクチャラーのタイトルを獲得している。
1994年、95年はメルセデスベンツCクラスの後塵を拝する展開となったが、ITC最終年となる1996年、戦力の立て直しを図った車両でシーズン最多勝を記録。155の健在ぶりを示すことができた。
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サンエイムック『新旧DTMマシンのすべて 1984-2019』は11月5日より好評発売中。
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