スーパーGT:7点差の王座争い。最終戦もてぎに向け高まるWAKO’S LC500とKeePer LC500の熱量

 雨の戦いとなった2019年のスーパーGT第7戦SUGOを6位でフィニッシュしたレース直後、WAKO’S 4CR LC500のピット内では、大嶋和也、山下健太、脇阪寿一監督、阿部和也エンジニアのミーティングが続いていた。

 周囲ではブリヂストンとTRDのスタッフが、それが終わるのを待っている。4人の表情は暗くもなく明るくもなく、ただ淡々と難コンディションのレースを振り返り、自分たちに起きたことをレビューしているように見えた。

 4人の輪がようやく解けると、寿一監督の表情は少し和らいだ。「これで、もてぎで彼ら(KeePer TOM’S LC500)が勝っても、ウチは2位でいい。今回のミッションは達成」。タイトルを争うKeePerには、点差を7に縮められはした。それでも、有利な立場を維持していることに変わりはなかった。

 だが、阿部エンジニアの表情は少々硬い。

「お互いが意識してしまっていますね。とくにウチが、意識が強い。オートポリスくらいからそれが始まっているんだけど、あまり良くないですね。本来あるべき姿ではないと思っています」

 この週末、WAKO’S陣営とKeePer陣営の「意識のし合い」は金曜日から始まっていた。走行開始に向けたタイヤのマーキングは通常、ソフト側3セット・ハード側3セットとするのがセオリー。

 しかしこの2チームは3種類をマーキングすることに決めた。内訳はミディアム3セット、ソフト2セット、そして“種類違いのソフト”が1セットである。決勝が高確率でウエットスタートになることが見込まれていたことから、1セットのみの“予選スペシャル”を配備したのだ。

「6号車のマーキングを意識した部分はある」(KeePer小枝正樹エンジニア)と、相手の動向に合わせた選択でもあった。両陣営はこれをそろってQ2に投入。だが「あまり良くなかった」(ニック・キャシディ)「柔らかいタイヤだったので余計(ゴムが)動いてしまった。オーバーステアが強かった」(大嶋)と、予選では互いに“空回り”する形となった。

 決勝では2番手を走るKeePerがSC(セーフティカー)リスクを避けミニマム周回数でピットイン、レインのハードタイヤを交換せずに平川亮をコースに送り出した。これに合わせるかのようにWAKO’Sも翌周ピットに入り、同様に無交換を選択する。KeePerは首位、そしてWAKO’Sは3番手に立っていた。

 だがその後雨量は増え、ハードタイヤの作動領域から外れ始めた。KeePerは後続に差を詰められていき、WAKO’Sもポジションを落とす。この状況で、WAKO’Sが動いた。レインのソフトコンパウンドへと交換。阿部エンジニアは「相手に合わせるのではなくて、自分たちのレースをしなければいけないと思ったから、あそこで入れた」と振り返る。

 一方の小枝エンジニアはこの動きを見て「そこで行く?」と感じたという。KeePerは我慢して走り続けることを選んだ。

 雨は強さを維持し、WAKO’S寄りのコンディションかと思われたが、思ったほど上がらないタイムに、コクピットの山下は不安を覚えた。それでもDENSO KOBELCO SARD LC500を10周以上かけてなんとか攻略したが、KEIHIN NSX-GTまでは届かず。

 一方、耐えたKeePerはBS勢最上位の4位。レクサス頂上決戦を生き残った2台は、それぞれの道で“ベストリザルト”を手に入れた。

 意識しまいしまいとするほど、相手のことは頭の片隅にチラつくというもの。「チャンピオンシップのことは当然考えちゃってるから、それがプレッシャーといえばプレッシャーかも」(大嶋)というWAKO’Sと、「追う立場としては、変わらず全力でやるだけ」(小枝氏)という姿勢を見せるKeePer。

 互いを意識しすぎれば、今回の予選のような“ハズし”も待っている。最終戦では2チームの「心の持ちよう」にも注目したい。

ソフトタイヤへの交換は「亮は(トップだから)視界が開けていたけど、健太は視界が悪いこともあってタイヤのウォームアップがなかなかうまくいかない状況だった」(寿一監督)ことも決め手となったようだ。残り8周のS字の立ち上がりで、なんとかDENSO LC500攻略に成功する
ソフトタイヤへの交換は「亮は(トップだから)視界が開けていたけど、健太は視界が悪いこともあってタイヤのウォームアップがなかなかうまくいかない状況だった」(寿一監督)ことも決め手となったようだ。残り8周のS字の立ち上がりで、なんとかDENSO LC500攻略に成功する



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