【2020年スーパーGT GT500新車分析:NSX-GT】なぜFRに踏み切ったか。規則の流れから考える

 JAFのGT500車両規則の改定にあわせて2020年からホンダNSX-GTは『Class1(クラス1)』に完全準拠した車両となる。つまりミッドシップからフロントエンジン、リヤドライブ(FR)に変更されるのだ。

 時代をさかのぼって振り返ると、ホンダが本格的にJGTC全日本GT選手権に開発車両を投入した1998年から2009年まで、HSV-010(FR)を投入した2010~2013年までを挟んで、2014~2019年と長年にわたり、GT500におけるミッドシップに対する参加条件(FRに対してどれだけ有利か)をめぐる議論は続いてきた。

 1998年からの状況と、2014年以降の状況が違うのは、その元となる規則が大きく違う点である。1998年~2008年のJAF GT500車両規則は何度かの変遷をへているものの、コンセプトとしては自由な開発を許した上で、エアリストリクターと車両重量で性能調整を実施して均衡を図っていくことを基本としてきたのに対して、DTMと車両規則統一を目指した2014年以降は、共通部品導入に象徴されるように、スペックを統一しながら限られた範囲での技術競争を促すものだった。

 大ぐくりにみると、1998年からの“前期”が車両のパッケージングから検討できる量産開発にも通じるような部分があったのに対して、2014年からの“後期”は、空力やエンジンなど狭い領域で突き詰めた競争が繰り広げられていた。

 競争する領域が狭く、深い分、基本要件の違い、つまり駆動方式の違いを性能調整によって埋める作業は困難を極めた。ホンダ側からみれば、技術開発によってライバルを上回っても、駆動方式の違いを理由に性能調整が実施されるのであれば、参戦意義自体が問われてしまう……。

 NSXはホンダを象徴するスーパースポーツだけに、社内の調整は難航したようだが、大きな決断が下された。

 これで2020年に向けてはクラス1に完全準拠、3メーカー全く同条件で技術競争が繰り広げられることになる。クラス1によって開発領域がさらに狭くなったのは事実だが、GT500車両15台が同条件での真の技術競争はここから始まる。 

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 9月26日(木)発売のスーパーGTファイルVer.7ではクラス1とクラス1+αの開発を総力特集。GT500の2020シーズンを語る上で外せない内容が満載です。



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