タイヤ無交換vs交換組による大混戦バトルを制したK-tunes RC FがGT300初優勝

 2018年のスーパーGT第3戦は5月20日、鈴鹿サーキットで52周の決勝レースが行われ、スーパーGT300クラスはタイヤ無交換組とタイヤ交換組による大混戦を制したK-tunes RC F GT3がポール・トゥ・ウィン。シリーズ参戦3戦目でチーム初優勝を飾った。

 予選日同様、快晴に恵まれた第3戦鈴鹿の決勝日。しかし、決勝前にサーキットの計時システムにトラブルが発生した影響でスタート時刻がディレイ。当初の予定より40分遅い15時20分に決勝レースがスタートすることになった。

 三重県警察先導によるパレードラップ時に30号車TOYOTA PRIUS apr GTの動き出しが遅れる場面があったものの、29台全車がそろってパレードラップが行われ、セーフティカー先導のフォーメーションラップに参加。その後に迎えたレーススタートではK-tunes RC F GT3に2番手スタートのHOPPY 86 MCが並びかけたが、ここはポールシッターのK-tunes RC Fがポジションをキープして1~2コーナーを立ち上がった。

 トップのK-tunes RC Fがギャップを広げていく一方で、HOPPY 86は硬めのタイヤを履いているのかペースが上がらず。グッドスマイル 初音ミク AMGやSUBARU BRZ R&D SPORTなどに交わされ、1周目を終えた時点で6番手までポジションを落としてしまう。

 3周目を終えた時点でトップを行くK-tunes RC Fは2番手の初音ミク AMGに対して3.052秒ものギャップを構築。早くも独走状態に入る。また、初音ミク AGMと3番手SUBARU BRZは約0.9秒差、SUBARU BRZと4番手SYNTIUM LMcorsa RC F GT3は約1.4秒差とほぼ等間隔で続いている。

 快走を続けるk-tunes RC Fの新田守男は、10周を終えた時点で6秒以上のリードを拡大していったが、12周目に入ったタイミングでGT500クラスのDENSO KOBELCO SARD LC500が立体交差のデグナーカーブの立ち上がりでクラッシュ。マシンがイン側ランオフエリアにストップしたためセーフティカーが導入され、レースがリセットされることに。

 また、このセーフティカーラン中にトラブルか、マッハ車検 MC86 Y’s distractionがS字手前で自らランオフエリアにマシンを進めてストップしている。

 ストップした車両の回収、隊列整理などを終えて、セーフティカー導入から約17分後、GT300クラスが16周目を終えた時点でレースが再開されると、HOPPY 86とUPGARAGE 86 MCが先陣を切ってピットイン。ともに“お家芸”とも呼べるタイヤ無交換作戦を敢行する。

 しかし、HOPPY 86がピット作業に手間取っているうちにUPGARAGE 86が逆転に成功。それぞれ、HOPPY 86が暫定20番手、UPGARAGE 86が暫定19番手でコースに復帰した。

 上位陣ではK-tunes RC Fがレース再開後も着実にペースを広げる一方、初音ミク AMGとSUBARU BRZによる2番手争いが接近していくが、SUBARU BRZはオーバーテイクには至らず、23周目終わりにルーティンのピット作業へと向かった。

 ここでSUBARU BRZは山内英輝から井口卓人にドライバー交代、給油を行ったものの、タイヤは換えず、無交換作戦を決行。大幅にピット作業時間を縮めてコースに復帰したが、先にピットを済ませていたUPGARAGE 86に交わされ実質トップの座は奪えず。実質2番手となる暫定12番手でコースに戻っていった。

 トップを快走していたK-tunes RC Fは24周目終わりにピットイン。タイヤ交換と給油、ドライバー交代のフルサービスを行ってコースに戻ると、好ペースで周回していたUPGARAGE 86に交わされ、実質トップの座から陥落。また後方からはタイヤ無交換で攻めるSUBARU BRZが迫られる状況になる。

 しかし、K-tunes RC Fの中山雄一は冷えたタイヤで着実にアウトラップを走りきりBRZの井口を寄せ付けず。熱が入ったフレッシュタイヤで前を走るUPGARAGE 86を追いかける展開となった。

 GT300が29周を終えた時点での暫定トップは初音ミク AMG。2番手にHitotsuyama Audi、3番手にRUNUP RIVAUX GT-Rと続く形なるが、この3台を含めた上位5台はピットを終えておらず。すでにピットを済ませたなかで最上位のUPGARAGE 86は6番手という展開に。

 30周目、暫定2番手を走っていたHitotsuyama Audiの右リヤタイヤがダンロップコーナー付近でバースト。コースの3分の2近くを3輪で走行しなければならず、大きく順位を落とすことに。

 そして30周目終わりにトップの初音ミク AMGがピットインすると、クルーはタイヤをチェックするだけで交換はせず。JAF-GT、マザーシャシーのお株を奪うタイヤ無交換作戦でUPGARAGE 86の前でコースに復帰してみせた。

 最後までピット作業を延ばしていた植毛 GT-Rがピットを終えた34周目、初音ミク AMGが見た目上でもトップに返り咲き。わずか0.606秒差でUPGARAGE 86が続く。

 トップを走る初音ミク AMGの谷口信輝がベテランならではのライン取りでUPGARAGE 86の小林崇志を抑え込んでいると、フレッシュタイヤで追い上げてきたK-tunes RC Fがトップ争いに接近。その後方からはSUBARU BRZ、HOPPY 86も迫ってくる。

 このなかで唯一タイヤ交換を行っているK-tunes RC Fはライバルよりライン取りに余裕があり、35周目の日立オートモティブシステムズシケインの飛び込みでUPGARAGE 86、初音ミク AMGに並びかけるが、ブレーキングでややオーバーシュート。それでもUPGARAGE 86を交わして2番手に浮上した。

 この攻防で最終コーナーの立ち上がりが鈍ったUPGARAGE 86はホームストレートでSUBARU BRZに交わされ4番手に後退。さらに38周目のシケインではHOPPY 86にもオーバーテイクを許し、5番手までポジションを落としている。

 初音ミク AMGとK-tunes RC Fによるトップ争いは、前を走る谷口が3周に渡り中山の猛攻を防いでいたが、38周目、またも日立オートモティブシステムズシケインへのブレーキングで中山がアウトから谷口を攻略。トップの座を奪い返してみせた。

 前が開けたK-tunes RC Fはひとり2分1秒台のペースで後続を引き離していくが、タイヤ無交換の2番手初音ミクAMG以下、SUBARU BRZ、UPGARAGE 86、HOPPY 86は団子状態に。

 3番手を走るBRZの井口はS字やシケインの飛び込みなどで再三、初音ミク AMGの攻略に挑むが、谷口が巧みにブロックしてオーバーテイクには至らず。この間に後方からマネパ ランボルギーニ GT3、SYNTIUM LMcorsa RC F GT3なども追いついてきて2位争いは大混戦に発展する。

 数周に渡って繰り広げられた井口と谷口の攻防は44周目、シケインへのブレーキングでインに飛び込んだSUBARU BRZの谷口が初音ミク AMG谷口を交わして、井口に軍配。さらに後方からHOPPY 86の坪井翔も谷口を攻略していく。

 その後、谷口はペースが上がらず8番手までポジションを下げている。

 10周以上に及ぶ2位争いはこれで幕をおろしたかと思われたが、46周目にダンロップコーナーでHOPPY 86の坪井がSUBARU BRZ井口のインを刺してオーバーテイク。HOPPY 86が2番手までポジションを戻す形となった。

 トップの座を奪い返したK-tunes RC Fは最終的に15秒以上までリードを広げてポール・トゥ・ウィン。K-tunes Racing LM corsaがシリーズ参戦3戦目で栄光を手にした。

 また、新田守男はこれでGT300通算19勝目となり、第2戦富士で高木真一に奪われた最多勝記録をタイに持ち込んでいる。

「最初SCが出た時は「なにしてくれてんだ」と思いましたけど、クルマのパフォーマンスがよかった。鈴鹿に130Rがなければ勝てなかったくらい(笑)」と中山。

 また前半スティントを担当した新田は「まさか、ここで(GT300最多勝記録を)元に戻せるとは思いもしませんでした。僕のスティントもクルマの調子が良かったので、中山にバトンを渡せばなんとかしてくれると思っていました。ただバトルの中では何が起きるかわからないので、ピットではハラハラしてましたよ」とレースをふり返った。

 2位はHOPPY 86、3位はSUBARU BRZ、4位はマネパ ランボルギーニが獲得。

 結果的にはK-tunes RC Fがポール・トゥ・ウィンを飾った第3戦鈴鹿だが、タイヤ無交換のJAF-GT、マザーシャシー、FIA-GT3、タイヤを交換したFIA-GT3による濃密バトルが展開されたことで、あらため今のGT300のハイレベルさが表れた1戦となった。

 2018年のスーパーGTはこのあと1カ月のインターバルに突入。第4戦は6月30~7月1日にシリーズ唯一の海外ラウンドとしてタイ・ブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットで行われる。



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