【試乗記】テスラ P90D Ludicrous 、そろそろしゃべっても良い気がする(笑):山田弘樹

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遠く開けた北陸自動車道の合流。ここぞとばかりにアクセルを強く踏み込むと、不思議な加速感に体中の細胞がじわっと昂揚した。
EVといえば、良く言われるのはその圧倒的なトルク感。内燃機関とは違い、ゼロからいきなりマックストルクを出力できるモーターの特性により、駆動伝達系のロスはあるものの、カタパルト発進のような加速感が得られることをよく取り上げられている。

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しかし今回乗った最新版のモデルS「P90D Ludicrous」は、そのアウトプットが洗練されており、相変わらずの圧倒的なトルク感を内包しつつも、その加速が穏やかさに包まれる。聞けばこのモデルはフロントにもマックスパワー262PSのモーターを配置した4WDらしい。
それはまるでリニアモーターカーを自分で運転しているかのような、不思議な加速感なのだ。エンジンがなく、静かな室内環境もそれに拍車を掛けているのだろう。
ちなみに"Ludicrous"という言葉は"ありえない!"みたいな言葉で、映画なんかでよく「ルーディクラス!(馬鹿げてるぜ!)」と役者が叫んでいたりする。その加速感をしてLudicrous!ということなのだろうが、ボクはそこに意外や包容力を感じた。


またこのテスラSというセダンは、速さだけでなく走りのバランスもいい。これは多くのEVにも言えることだが、一番の重量物であり動力の源となるバッテリーを床下配置することで、ロールやピッチングモーメントによる重心移動が最小限に抑えられるからだ。ロールしないでスムーズに曲がってくれる感覚は、やっぱり独特。
またテスラはそのバッテリーセル自体も剛性部材として利用している。遮音性や防振性が高いのか、軽量化を目指したシャシーはアルミ特有の反発や共振が押さえ込まれており、その若々しい軽快さが表に出ている。ここにエアサスの乗り心地が加わると、近未来的な"魔法の絨毯フィール"が味わえる。

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ただその柔和な乗り心地に対して、ステアリングのゲインは高い。しかしそれは、EPSだけのせいではないだろう。その車重を支えるべきタイヤとして、普通なら格式的に同じミシュランでもプライマシーLCあたりのコンフォート性を与えそうなはずが、その足下にはスポーツモデルの最上級グレードであるパイロット・スーパースポーツの21インチ!を履かせている。だから無造作にステアすればピピッ!とクルマが過剰反応してしまうのだ。この車重を支えきり、もっと荷重に対して柔らかくグリップが追従する専用タイヤの登場が今後は求められるのではないか。


だからEPS自体は急激な入力を防ぐかのように、適度に重たくセットされている。いわゆるN感(舵角ゼロから10°くらいまでの、よい意味での反応の鈍さ)はない。加えてサスペンションのストロークがそれほどたっぷり取られているようにも見えないのだが(車高が低い!そしてカッコイイ(笑))、落ち着いて運転する限りは近代的なアメ車のソフトライド&ハンドリングをしっかり実現しているのだから面白い。
そんなEPSにおけるN感のなさは、テスラが次世代を睨むオートパイロット機能を着実に現実のものとするためのものだろう。機械がステアリング操作をする上で、入力に対してズレのない反応を示すことは必須である。


そう。このモデルSは、未来のモビリティに向けて歩を進めるために、制御側も進化し続けている。具体的には8台のサラウンドカメラが最長250mまで360°の視界を捕らえるようになり、12個の超音波センサーが、以前の2倍の距離まで検知可能となった。またその情報を解析するハードウエアは登場当初に比べて40倍以上! の処理能力を持たされた。


そしてこれらを制御するソフトウェアが「7.2」から「8.0」へとバージョンアップされたというのである。


実際にひと目を引くのはセンターコンソールに鎮座する17インチの巨大モニターで、その車両情報やモード切り替え、音楽ソースを楽しむインフォテイメント機能やエアコンの調整などが全てここで行えることが楽しさを演出している。新たに加えられたデスティネーションチャージャーが、「スーパーチャージャー」や「CHAdeMO」等の充電ポイントを表示するようになったのも、ただでさえ長い航続距離に加えて嬉しいポイントである(ちなみにこの90Dは、時速80キロ平均で509kmの航続距離)。


しかしドライバーにとって興味深いのは、メーターナセル内のモニターが自車と他車の状況を可視化して、さらには制限速度などの交通情報を細かく教えてくれることだ。目の前には現実空間があるのだが、メーターの中にデジタルで同じ空間が再現されているのは箱庭を見ているようである。そしてその描写能力は、一点を注視しがちなドライバーよりも意外と情報量が多い。

これにオートパイロット機能を組み合わせると、運転は新たなフェーズへと片アシを踏み入れる。前車(のみならず全方位だが)との間合いを読み、かつ自分を安全なところへ置くブレーキ操作や、オートレーンチェンジから一歩先に進んだハンドル操作は、我が子の運転を見守るような気持ちになる。


まだ信号を把握できなかったり、田舎道では薄れた車線の判定ができなかったりする場面はある。またオートパイロットというとどうしても完璧なロボトミー操作を最初から期待してしまうが、現段階で重要なのは注意が散漫になる状況での安全アシスト。特に北米や、日本のように最高速度が極めて低く、慢性的な渋滞に悩まされる地域で事故を防ぐには有効だろう、とボクは理解している。要するにロボトミーとしてはまだまだでも、飛ばせないから注意散漫になり、渋滞するから脇見運転してしまう人々の安全を確保する技術としては意義がある。

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【試乗記】テスラ P90D Ludicrous 、そろそろしゃべっても良い気がする(笑):山田弘樹 originally appeared on Autoblog Japan on Wed, 30 Nov 2016 03:00:00 EST. Please see our terms for use of feeds.

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