11月8日、ツインリンクもてぎでスーパーGT第7戦の決勝が行われた。GT300クラスはセーフティカータイミングの影響による混乱を抜け出したリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rの藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組が第5戦富士に続く、2勝目を飾り、ポイントランキングでもトップに躍り出た。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により3カ月遅れで開幕した2020年シーズンのスーパーGTも残すところ2戦となった。もてぎでの開催は今シーズン2度目となるが、第5戦から観客を迎え入れており、ここもてぎでもさまざまな制限があるものの、ファンが見守るなかで第7戦が開催された。
もてぎ決戦は例年、最終戦の舞台となっており、ハンデがないなかでタイトルが争われてきたが、今回はGT300クラスはポイント×1.5kgのウエイトハンデを搭載して行われる。第4戦もてぎもウエイトを搭載したレースだったが、そのときとは大きくコンディションが異なるため未知の300kmレースとなる。
前日に行われた予選では現在ランキング5位につけているSUBARU BRZ R&D SPORTが2019年SUGO以来となるポールポジションを獲得。SUBARU BRZ R&D SPORTは第6戦でセーフティカーのタイミングの影響を受け、勝利を逃している。それだけに今回のもてぎ戦ではなんとしても優勝を手にしたいところだろう。チャンピオンシップを考えても大量ポイントを獲得して、最終戦に望みをつなげたいはずだ。
フロントロウには第6戦の公式練習で大クラッシュを喫し、リタイアせざるを得なかったたかのこの湯 RC F GT3が並んだ。今回、たかのこの湯 RC F GT3はトヨタの協力を受け、イベント用のマシンを借りることができて第7戦への参戦が叶った。残念ながらレースではシャシー交換によるペナルティが課せられるため、厳しい戦いが予想される。
現在ランキング2位につけ、予選では3番グリッドを獲得したGAINER TANAX GT-Rは、ランキングトップのLEON PYRAMID AMGが予選20番手と沈んでいるため、好結果を残してポイント差を縮めておきたい。一方、そのLEON PYRAMID AMGはここもてぎでタイトル獲得の可能性があるが、予選の結果が奮わず、後方からどこまで追い上げられるか。
レースの直前に行われたウォームアップ走行ではARNAGE AMG GT3が1コーナーでコースオフを喫し、グラベルにマシンを停めてしまうシーンも見られたが、その他、各車は精力的に周回を重ねていた。セッション終了3分前、マッハ5G GTNET MC86 マッハ車検がスロー走行から、V字コーナーの立ち上がりでコース上にマシンを止めてしまったため、赤旗が提示される。この赤旗をもってウォームアップ走行は終了となっている。
マッハ5G GTNET MC86 マッハ車検はグリッドへの出走までに修復が間に合わず、ピットスタートとなる。またSYNTIUM LMcorsa RC F GT3とT-DASH ランボルギーニ GT3の2台もピットからのスタート。
定刻13時、セーフティカー先導のもと、フォーメーションラップが行われた後、GT500クラスに続いてGT300クラスの決勝レースが幕を開けた。1コーナーを制したのはSUBARU BRZ R&D SPORT。その後方では3番手スタートのGAINER TANAX GT-Rが2番手のたかのこの湯 RC F GT3に並びかけるが、ここはたかのこの湯 RC F GT3の久保凜太郎がなんとか抑え切った。たかのこの湯 RC F GT3は2周を終えた段階でピットに入り、ペナルティを消化している。
3周目に入ると、後方の集団にGT500の集団が追いつく。ここから2クラスの混走が始まった。なお、ウォームアップ中にコース上にマシンを止めてしまったマッハ5G GTNET MC86 マッハ車検にはドライブスルーペナルティが課せられることになった。
GT300クラスの周回数で8周目、後方では5番手争いが加速する。HOPPY Porsche、グッドスマイル 初音ミク AMG、ARTA NSX GT3、TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT (31号車)がそれぞれ0.5秒以内のギャップだ。
9周目のメインストレートでHOPPY Porscheの佐藤公哉とグッドスマイル 初音ミク AMG の片岡龍也がサイド・バイ・サイドの展開に。この勝負は片岡に軍配が上がり、グッドスマイル 初音ミク AMG が5番手にポジションアップ。さらにARTA NSX GT3にも1コーナでインを奪われHOPPY Porscheはポジションをふたつ落としてしまった。TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT (31号車)もその流れに乗りたいところだったが、コースオフを喫し、12番手まで順位を下げている。
14周目、ポールスタートのSUBARU BRZ R&D SPORTは2番手のGAINER TANAX GT-Rとの差を約3秒引き離すことに成功していた。そのGAINER TANAX GT-Rは3番手のRUNUP RIVAUX GT-Rに迫られ、2番手争いが白熱の様相を見せる。だが、GAINER TANAX GT-Rはウエイトハンデが厳しいか、17周目に入ったところでかわされ、2番手が入れ替わった。
レースの3分の1を過ぎるとグッドスマイル 初音ミク AMGやリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rがいち早くピットへ。20番手スタートだったランキングトップのLEON PYRAMID AMGも早めにピットへ入り、ドライバー交代のみを済ませ、第4戦のもてぎと同じようにタイヤ無交換で大幅ポジションアップを狙う。
レース23周目、コース上にマシンを停めてしまった車両の回収のために、セーフティカーが導入。これによりまたしてもセーフティカーのタイミングが勝敗に影響を及ぼす結果に。ただし、LEON PYRAMID AMG、シンティアム・アップル・ロータス、K-tunes RC F GT3など後方グリッドからスタートしていたマシンは、セーフティカーの導入タイミングが奏功せず、ポジションをあげることはできなかった。
レースは27周目にリスタート。それと同時にRUNUP RIVAUX GT-R、ARTA NSX GT3、Modulo KENWOOD NSX GT3など、多くのマシンがピットへ入ってきた。翌周にはGAINER TANAX GT-Rが、さらにその翌週にはポールスタートのSUBARU BRZ R&D SPORTもピットイン。SUBARU BRZ R&D SPORTはリヤ2本交換のみでコースへ復帰している。
全車がピットストップを終えた32周目時点での順位はグッドスマイル 初音ミク AMG、リアライズ 日産自動車大学校 GT-R、UPGARAGE NSX GT3、埼玉トヨペットGB GR Supra GT、SUBARU BRZ R&D SPORT、HOPPY Porsche、T-DASH ランボルギーニ GT3、ARTA NSX GT3、RUNUP RIVAUX GT-R、GAINER TANAX GT-Rのトップ10の顔ぶれが並んだ。
レース33周目、リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラはグッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝を90度コーナーで捉えると、メインストレートでは軽くマシンのサイドをぶつけながらグッドスマイル 初音ミク AMGをオーバーテイク。33周目の1コーナーでトップに立った。なお、セーフティカー中にピットへ入り、タイヤ交換を行ったUPGARAGE NSX GT3にはピット作業で違反があったとしてドライブスルーペナルティが課せられている。
43周目、セーフティカーのタイミングで大きな恩恵を受けたリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rとグッドスマイル 初音ミク AMGは3番手以下に1分近いギャップを保ち、周回を重ねていく。後方ではGAINER TANAX GT-RがHOPPY Porscheをパスして6番手に。さらに4番手に落ちてしまったSUBARU BRZ R&D SPORTもトップの2台に追いつくのは厳しいが、なんとか表彰台を獲得しようと3番手の埼玉トヨペットGB GR Supra GTを攻め立てる。
しかし、その2台が争っている間にペースを上げて迫ってきていたGAINER TANAX GT-Rが48周目にSUBARU BRZ R&D SPORTの真後ろにピタリとついた。GAINER TANAX GT-Rの平中克幸はSUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人)の隙を突こうと狙いを定めるものの、井口も絶妙なラインどりでポジションを守る。その後ろからはRUNUP RIVAUX GT-Rもタイム差を詰めてきたため、最後まで接戦のポジション争いが繰り広げられていった。
GT300クラスの周回数で55周目、このままの状態でチェッカーが振られる可能性も考えられ始めたなかで事件は起きた。5コーナーでグッと距離が縮まったSUBARU BRZ R&D SPORTとGAINER TANAX GT-Rだが、立ち上がりでSUBARU BRZ R&D SPORTのリヤにGAINER TANAX GT-Rがわずかに接触。SUBARU BRZ R&D SPORTはスピンを喫してしまった。大きなダメージはなくコースに復帰できたものの、6番手にポジションを落とすこととなった。
これで4番手に上がったRUNUP RIVAUX GT-Rがファイナルラップを目前に気を吐く。3番手の埼玉トヨペットGB GR Supra GTをダウンヒルストレートで捉えると、メインストレートでオーバーテイク。第4戦では決勝レースの最後でガス欠に見舞われ、悔しい思いをしたRUNUP RIVAUX GT-Rが、今シーズン2度目となったもてぎ戦で表彰台を獲得する結果となった。
GT300クラスの決勝レースはトップが60周で終了。リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rが第5戦富士に続く今シーズン2勝目を飾った。2位にはグッドスマイル 初音ミク AMG、3位にRUNUP RIVAUX GT-R、4位、埼玉トヨペットGB GR Supra GTという上位の並びになった。
5番手でチェッカーを受けたのはGAINER TANAX GT-Rだったが、SUBARU BRZ R&D SPORTへの接触が『危険なドライブ行為』と判断され、決勝結果に30秒加算のペナルティが課せられたため、5位にはSUBARU BRZ R&D SPORTが入利、GAINER TANAX GT-Rはレース終了時点で9位の暫定結果が出ている。
編集部集計のポイントランキングでは勝利したリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rの藤波清斗/オリベイラ組が56ポイントとなり、ランキングトップへ。2位はトップを明け渡す形となってしまったLEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥/菅波冬悟組が5ポイント差の51ポイント、3位はGAINER TANAX GT-Rの平中/安田裕信組が43ポイントとなっている。
次戦はいよいよ最終戦となる。ウエイトハンデなしのガチンコバトルでタイトルが争われる最終戦はどのチームが制し、そして2020年シーズンのチャンピオンの座はどのチームの手に渡るのか。第8戦は11月28~29日、富士スピードウェイにて行われる。
from 鈴鹿戦を彷彿とさせるような展開。リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rが今季2勝目で選手権首位に【第7戦もてぎGT300決勝】
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