スーパーGT:世界中から注目を集める新型フェアレディZ。GT500クラス投入は2022年か

 9月16日、ニッサンは2021年に発表予定の新型『フェアレディZ』プロトタイプをオンラインで全世界に公開した。その詳細は「V型6気筒ツインターボエンジンの搭載」と「6速MTの採用」に加え、ボディサイズやタイヤ/ホイールサイズがアナウンスされただけで、いまだ多くがベールに包まれたままだ。

 しかし、初代『S30』を筆頭に、歴代Zへのオマージュが随所に散りばめられたデザインが話題となり、早くも世界からの注目を集めている。こうした新型Zに対する反響を見るとレース界での活躍を期待せずにはいられない。

 現在、ニッサン/ニスモのモータースポーツ活動はスーパーGTとABBフォーミュラE選手権の2本柱だが、この新型Zのプロモーションに適しているのは、言うまでもなくスーパーGTだ。そのためだろうか。日産自動車でチーフプロダクトスペシャリストを務め、量産車の新型Zの開発を担当する田村宏志氏を「スーパーGTの現場で目撃した」という情報が伝わってきている。

 そればかりか、auto sport本誌は「今年のスーパー耐久開幕戦富士24時間で田村氏を見かけた」という情報もつかんでいる。田村氏のサーキット来訪が意味するところは、スーパーGT GT500クラスを筆頭にFIA-GT3やFIA-GT4といったカスタマーレーシングまでを含めて、新型Zがモータースポーツのフィールドで戦うための準備・視察ととらえるのは考えすぎだろうか。

2020年9月16日日産フェアレディZプロトタイプ発表会
2020年9月16日の日産フェアレディZプロトタイプ発表会でお披露目された新型Z
2020年9月16日日産フェアレディZプロトタイプ発表会
2020年9月16日の日産フェアレディZプロトタイプ発表会でお披露目された新型Zのリヤビュー

■GT500クラス投入に向けた課題

 ここから先はGT500クラスに限定して話を進めよう。新型Zプロトタイプの発表から10日を過ぎた段階で、ニッサン陣営からGT500クラスに関わるアナウンスはない。しかし、現在投入されているR35GT-Rは、2007年に市販車がデビュー、2008年からGT500に投入され、今季で13年目を迎えている。この間、規則に沿って中身は変わってきたものの、外観は一貫してGT-Rを保ってきた。量産車のプロモーションという観点で見れば、その発表に合わせてベース車両を新型Zにスイッチするのは極めて自然な流れだ。

 また、今季第3戦鈴鹿で23号車が優勝を遂げたものの、スープラとNSXに対して、GT-Rは劣勢にある。要因は決してひとつではなかろうが、そのなかのひとつにはボディの上面形状が含まれるようだ。『クラス1+α』施行初年度にあたる今季開幕戦の現場では、ニッサン陣営の松村基宏総監督に対してGT-Rの空力、おもに上面形状に対する質問が飛んだ。

 これについて松村総監督は「デビュー当初、我々の車両は(他社の車両よりも)ドラッグが少なかったと思いますが、いまは逆(空気抵抗が大きい)ではないでしょうか」と述べていた。同時に、その対策は「(現行規定下では)ベース車両のデザインが変わらない限り難しい」とも語っていた。

 裏を返せば現在の劣勢から巻き返すためにも新型Zが投入される可能性は高い。その時期だが、市販車の新型Zが「2021年夏以降の正式発表」と言われている一方で、現時点でレース活動に関わるアナウンスが何ひとつない状況を踏まえると、2022年からの参戦が現実的か。

 しかし、気がかりなこともある。いまのGT500クラスは、コストダウンを大命題としてDTMとの共通パーツ化が推し進められてきた。2014年から始まったその流れは『3年周期』を基本として、コストダウンを目的に車両開発の年次改良を制限したり、部分的に許可したりなどを繰り返してきた。そうした流れから推測する限り、現在の車両も2022年いっぱいまでは(一部、許可される箇所を除いて)大幅な変更は許されないことになっているはずだ。

 したがって、もしもニッサン陣営が2022年開幕からベース車両を変更するのであれば、GTAや他2社との調整が必要となる。共通パーツ化が進んでいるとはいえ、ボディ上面の形状変更やエンジンルーム内のレイアウト(冷却系の取り回しなど)の見直しはマシンの戦闘力に大きな影響をもたらすためだ。

 トヨタとホンダの両陣営に対しての公平性をどのように保つのかにも注目したい。ちなみに、本来であれば開発にかかる手間や予算、さらに規則への適応ということを踏まえ、今年から“フェアレディZコンセプトGT”のようなかたちで投入していれば何の問題もなかったのだが……。

 ともあれ、新型ZのGT500クラス参戦はレースファンだけでなく、世界中のクルマ好きから多くの注目を集めることは間違いない。雨の日も晴れの日も、これまでグランドスタンドで大きな応援旗を揺らしてきた熱烈なファンは、ニッサンが新型ZでV字回復をする日を心の底から待ち望んでいる。

2004年にJGTC(全日本GT選手権)を戦ったザナヴィ・ニスモZ
2004年にJGTC(全日本GT選手権)を戦ったザナヴィ・ニスモZ



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