8月8〜9日、富士スピードウェイでスーパーGT第2戦『たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE』が開幕する。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今季のスーパーGTは大きくカレンダーが変更され、7月18〜19日に開催された第1戦富士で幕を開けていたが、このレースでは今季からスポーティングレギュレーションにも盛り込まれたフルコースイエロー(FCY)は導入されなかった。現在、どんな状況になっているのか、スーパーGTの服部尚貴レースディレクターに聞いた。
スーパーGTでは、2020年からレース中にアクシデントが発生した際の安全策として、これまで使用されてきたセーフティカーとともに、フルコースイエロー(FCY)を導入する予定となっていた。すでにFCYは海外をはじめ、日本でも他シリーズで運用されているが、スーパーGTで使用を予定しているのは、正確に運用ができるシステムを車両とコースに導入する、プロフェッショナルシリーズに相応しいものだった。
導入に向け、2020年から正式にスポーティングレギュレーションに明文化されたほか、3月の岡山公式テストや6月の富士公式テストで、FCYシステム運用に向けたテストが行われてきたが、第1戦富士では二度のアクシデントではどちらもセーフティカーが導入されたほか、FCYのシステムとも連動するフロントウインドウの順位/ドライバー表示も点灯していなかった。
この状況について服部レースディレクターに聞くと、現段階ではFCYシステムに「どうしてもタイムラグがある」のだという。FCY導入の際には、レースディレクターからFCY発動まで10秒間のカウントダウンが行われるが、コース上の車両の位置によって、電波を拾いきれないマシンがおり、10、9、8……というカウントダウンの途中で、いきなりゼロになってしまうケースがあるのだという。
全車が均等に、正確にカウントダウンされなければ危険も増えてしまうほか、正確な運用がされなければ不公平にも繋がってしまう。ただ、このシステムは海外でも使用されている実績があるシステムで、スーパーGTだけがきちんと運用できない理由はなんなのだろうか。
大きな違いは、レースコントロールからの指示を飛ばすための電波が関わっていそうだ。服部レースディレクターによれば、スーパーGTでは送信にはWi-Fiを使用しているという。ただ、海外(および日本で開催される世界選手権レース)で使っている電波とは異なる。「通常の電波を飛ばすことができれば解消できる可能性は高い」と服部レースディレクターは語る。
ただ、日本には電波法の壁があり、この電波は使用できないのだという。この電波法はスーパーGTのみならずモータースポーツ界では大きな障壁のひとつで、海外レースでは当たり前のライブでのオンボード映像が日本では実現できない理由もここにある(世界選手権では関係省庁が入り、電波が使用できる)。
このラグが解消できない以上、スーパーGTのFCYはプロフェッショナルレースとして“アバウト”での運用はできない。「開発を進め、来年に向けて……という状況になってしまっています」と服部ディレクター。
「なかなかテストもできない状況ですし、新型コロナウイルスの影響がこういうところにも出ていますね。無理に使うのではなく、今年は開発を続けていく方向で進めています。第3戦鈴鹿の公式練習では、バージョンアップしたものをトライする時間を作る予定になっています」
また、8月9日に行われたGTA定例記者会見のなかでも、坂東正明代表はこの件に触れた。坂東代表によれば、今回表示の運用を行い、FCYシステムについては今後テストを行い、ソフト等の改良を行いながら、「来年度の第1戦から導入できるように行っていきたい」としている。
なお、今回からフロントウインドウのディスプレイでの順位表示、ドライバー識別表示は運用がスタートする。表示は、ドライバーの表示が4秒、順位が2秒という間隔で点灯し、GT500クラスは白、GT300クラスは青で表示される。ドライバー識別は「3ケタの表示ができるディスプレイですが、左側に寄っているイニシャルがAドライバー、右側に寄っているイニシャルがBドライバーになります」とのことだ。覚えておくとJ SPORTSでの中継でもより楽しめるはずだ。
from スーパーGT:FCYシステムは2021年第1戦の導入へ向けテストを継続。順位表示は第2戦から
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