GT500フルシーズンデビューから13年目、自身99戦目となるスーパーGT第3戦鈴鹿で初のポールポジションを獲得したModulo NSX-GTの伊沢拓也。決勝ではスタートを担当し、序盤からセーフティカーが入る荒れた展開のなか、ZENT GRスープラ、MOTUL AUTECH GT-Rと抜きつ抜かれつのトップバトルを展開するも、15周目には一気に首位から7番手まで順位を下げてしまった。その伊沢にレース後、聞いた。
2番手にコンマ4秒差を付けての圧倒的なポールポジションから、7番手で前半スティントを終えた伊沢。さぞ悔しい思いをしているだろうと想像していたが、その表情は意外だった。
「勝ちたかった! 悔しい! けれど、ちょっとうれしい(苦笑)。というのが正直なところです。チームの士気もそうだけれど、僕らも、この上位の位置で戦うことで見えてくるものがたくさんあったと思う。このスピードをずっと出していれば、そのうち自分たちの力で勝てるときが来ると思います」と、充実したような笑顔で話す伊沢。
Modulo NSX-GTは後半スティントの大津弘樹がサバイバル戦をくぐり抜け、表彰台まであと一歩の4位でレースを終えていた。
「期待していたところもありますが、今年は最初の2戦では本当に何もなくビリを走っていた。今回、こういう位置で大きく状況が変わってチャンスだったと思うんですけれど、大きなステップを踏むことができた。チームもダンロップも、みんなこの先が楽しみになるかなと思っています」
伊沢が担当した前半スティント、序盤は23号車MOTUL AUTECH GT-Rを序々に離しはじめたかに見えたところで、途端に後続に差を詰められてしまった。
「まぁ、ちょっとピックアップ(自車、または他車のタイヤカスが表面に付着してグリップダウンを招く現象)してしまいましたね。ただ、たとえ今回ピックアップがなかったとしても、レースペースでは正直、勝てるスピードまではなかったかなと思います。それでも、まずは速いクルマを作ることが大事で、それができればレースペースはこれから頑張るだけです」
15周目、それまでなんとか守っていた首位だったが、伊沢はダンロップコーナーでMOTUL AUTECH GT-Rに並ばれ、オーバーテイクうを許してしまった。その場面もピックアップの影響でラインを乱してしまったのだろうか。
「ラインを外したと言うか、相手のスピードがちょっと違いましたね」
その直後のデグナーひとつ目では、ラインを大きく外して一気に5台に先行されてしまった。
「デグナーでは他車に追突されてしまって、姿勢を乱してしまった」
これまでの伊沢だったら、追突されたことに悔しさや怒りの表情を浮かべていたに違いない。だが、この日の伊沢は最後まで、清々しい表情のままだった。
「今回は、みんなに楽しんでもらった気がします」
今年のスーパーGTは、もう一度、第6戦が鈴鹿サーキットで行われる。Modulo NSX-GTとダンロップが得意な鈴鹿で、再びチャンスが訪れることは間違いない。いや、次の第4戦もてぎでもライバルたちの脅威になるポテンシャルが十分にあることを、Modulo NSX-GTと伊沢が今回の鈴鹿で見せた。
from 99戦目初ポールがら勝利を逃したModulo NSX-GTと伊沢。前半ペースダウンの要因と今後への手応え
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