スーパーGT:開幕延期に「悔しい」。ロータス加入の柳田真孝が“経験”を武器にシーズンに挑む

 いよいよ6月4日、変則的なかたちながら2020年のカレンダーが発表され、開幕へ向けて動き出したスーパーGT。今季GT300クラスには多くのトピックスがあるが、今オフ大きな話題となったうちのひとつが、GT500クラスで2回、GT300クラスで2回のチャンピオンを獲得した柳田真孝のCars Tokai Dream28への加入だ。シーズンへ向け、柳田に意気込みを聞いた。

■「正直不安があった」岡山テストで得た手ごたえ

 2003年にGT300の初タイトルを獲得、2010年に2回目の王座を得ると、2011〜2012年にGT500クラスで2連覇。合計4回のチャンピオンを誇る柳田は、2017年からはハンコックワークスのアトラスBXからの要請に応え、韓国のCJスーパーレースに挑戦してきた。その間、GT300にスポット参戦はしていたものの、2020年はいよいよGT300にフルシーズンでエントリー。本格復帰することになる。

 しかもその所属チームは、2019年にオーナーでドライバーであった高橋一穂がシートを退いたCarsTokai Dream28だ。高橋の後に収まるドライバーが誰なのかは今オフのストーブリーグの焦点でもあったが、長年高橋と組んでいた加藤寛規が声をかけたのが柳田だった。加藤と柳田は、ロニー・クインタレッリや松田次生らとともにカートトレーニングを積む間柄でもある。

 1月の東京オートサロンで体制が発表され、柳田起用が大きな話題となったが、以降なかなか柳田がチームに合流する機会には恵まれず、初ドライブとなったのが3月の岡山公式テストだった。四度の王者で、長年スーパーGTに参戦してきた柳田とはいえ、岡山テストは“不安”もあったという。

「本当にクルマもチームも初めて、加藤さんとスーパーGTで一緒に走るのも初めて。それにスーパーGTも実質2年ぶりですしね。正直不安はありました」と柳田は岡山テストに参加する前の心境を振り返った。それでも、加藤を中心にメニューをこなしながら、柳田もウエットやドライのコンディションを走りつつ、感覚をつかんだ。

 ちなみに柳田と言えば、2017年にHitotsuyama Audi R8 LMSをドライブしている。Cars Tokai Dream28が走らせるGT300マザーシャシー(MC)のシンティアム・アップル・ロータスと同じミッドシップのレーシングカーだが、やはりGT3カーとマザーシャシーの違いは大きいよう。

「GT3とマザーシャシーなので、根本的に違いますよね。MCの方が軽いですし、乗った印象はまったく違います。コーナリングの旋回は圧倒的にMCですし、今回履くヨコハマと、アウディのときのダンロップの違いはありますが、タイヤ自体の違いもありますからね」と柳田。

「ドライビングでは、フロントになかなか荷重が乗らないのでタイヤがすぐ冷えたりしますが、そのあたりはまたセッティングや乗り方で変えればアジャストできるんじゃないかな、と思っています」

2020年のスーパーGTに挑むシンティアム・アップル・ロータス
2020年のスーパーGTに挑むシンティアム・アップル・ロータス

■経験を活かせば結果は自ずからついてくる

 こうして2日間のテストを終えた柳田だが、「クルマもそうですし、チームとのやり取り、ヨコハマタイヤとのやり取りも含めて、すごくいいテストになったと思います」と充実したものであったという。「チームの雰囲気も一体感がありましたし、加藤さんという、ドライバーだけど監督のような立場の人もいますからね(笑)。経験もありますし、カートで一緒にトレーニングする仲でもあるので、僕のことも分かってくれています。スタッフも知っているメンバーもいますし、信太郎さん(渡邊信太郎エンジニア)ともやりやすかったです」

 チームメイトとなる加藤も、「柳田選手は、本領を発揮するのはレースだと思っています。経験があるので、ある程度の線引きや予測が彼のなかでできる。人生経験も豊富なベテランのふたりでいきたいと思います(笑)。この体制でやらせてもらっているんですから、表彰台はとらなきゃダメでしょ」と岡山でのテストを経て、柳田に期待を寄せた。

 ただ好感触を得た岡山テストの後、3月28〜29日から予定されていた富士公式テストは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で直前になって延期に。その後柳田はふたたびチームとともに過ごすことができなくなってしまった。自宅周辺をランニングしたり、エアロバイクでトレーニングをこなしたが、レーシングカーに乗ることがやはりドライバーにとっては重要だ。「感覚を取り戻すのが少し難しいかもしれませんね」という。レースが近づけば、またカートでその感覚を取り戻しに行くつもりだ。

 そして、せっかく岡山でつかんだ好感触ともらったチャンスを活かせない時間が続いたことを、柳田は「悔しい」という言葉で表現した。

「今年こうして大きなチャンスをもらいましたが、こうして新型コロナウイルスの影響で開幕できないことがすごく悔しいんです。みんなそうだとは思いますが……。すごく楽しみにしていたのにこういう状況になってしまった。でもそれはみんなにとってイコールですし、仕方がない」と柳田。しかし、開幕へ向けてスーパーGTは少しずつ動き始めた。

「ひさびさのスーパーGTですし、そう簡単にいかないとは思っていますが、チームに『なんで柳田雇ったの?』と言われないように、そして『柳田を使って良かったね』と言ってもらうようにしたいと思います」と柳田は、いよいよ近づくシーズン開幕へ向けて語る。

「自分のなかでも経験はある方だと思いますし、そういうものを存分に活かしていけば、結果はついてくると思っています。加藤さんをチャンピオンにしたい……というのが目標です」

 Cars Tokai Dream28は、実は2019年は予選Q2進出の常連ではあったものの、ここ4年ポイントが獲れていない。加藤と柳田のコンビはひさびさのポイント、そして表彰台をチームにもたらすことができるのか。シーズン開幕後のポイントのひとつだろう。

シンティアム・アップル・ロータス
シンティアム・アップル・ロータス


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