スーパーGT、全日本スーパーフォーミュラ選手権、さらにピレリスーパー耐久シリーズと、各シリーズで新たなカレンダーが決まり、いよいよ日本国内のモータースポーツも新型コロナウイルス禍から抜けだそうとしつつある。ファンにとっては嬉しいところだが、大きな問題もある。それは、外国人ドライバー、スタッフの日本への入国だ。
近年、DTMと車両規定を同じくするGT500クラス、さらに2クラス制でタイヤコンペティションがあり、ヨーロッパの自動車メーカーも注目するGT300クラスと、スーパーGTは世界的に存在感があるシリーズとなっている。またスーパーフォーミュラも、F1に比するコーナリングスピード、高いコンペティションレベルと、こちらも世界的に注目されるシリーズに成長した。アジアはもちろんヨーロッパからも熱視線が注がれているのは間違いない。またピレリスーパー耐久シリーズも、アジアのジェントルマンドライバーをはじめ多くのチームが参戦を希望するシリーズとなっている。
ただ、そんな国際的なレースに成長した各シリーズだが、開幕に向けて動き出したものの、大きな問題がある。それは、国際的になったが故の外国人ドライバー、スタッフが来日できないことだ。ドライバーは以前から多くが日本のレースには参加してきたが、スタッフの多さは以前に比べて確実に増えている。
まずスーパーGT GT500クラスではTGR TEAM SARDのヘイキ・コバライネン、KEIHIN REAL RACINGのベルトラン・バゲットが現在それぞれ母国に滞在している。他ドライバーは日本に滞在しているため参戦は可能だが、ふたりは6月11日の段階で、新型コロナウイルス感染拡大防止の水際対策にともない、日本への入国制限がされている状況だ。
ふたりはお互いに連絡を取り合っているほか、チームとしてもどういった対処策があるのかさまざまな検討を重ねている状況だという。また、GTアソシエイションからも関係各所へのレターを提出するなど、できる限りの努力は進められている様子だ。
現段階ではヨーロッパからの来日は厳しい状況ではあるが、6月27〜28日に富士スピードウェイで行われる公式テストは、最悪の場合ひとりのドライバーでもこなすことはできる。ただし、レースではやはりふたりのドライバーが必要だ。第1戦富士は7月18〜19日。7月に入り、もし仮に入国が緩和されれば、14日の隔離期間を含めても開幕戦の参戦は可能だ。ただし、第2戦は8月8〜9日にあるため、その間はずっと日本に滞在することが求められるだろう。
■外国人はGT300でも重要。エンジニア派遣はしばらく無しか?
外国人ドライバーは、もちろんGT300クラスにも数多く参戦している。起用チームに話を聞いたが、こちらも状況はかなり厳しい。すでに日本人ドライバーの“代打”を検討しているチームがあった。ただ、メーカー等によっても状況は異なるようで、こちらも公式テスト、さらに開幕戦までを見据えながら、まだまだ現状を探っている状況だ。またインターナショナルチームも状況は同様だろう。なお、こちらもGTAなども協力しているという。
とはいえ、そのドライバーの国によって状況は違うようで、「おそらく無理」という声と「まだ分からない」という声があった。チームによってはメーカーからのドライバー派遣が込みの契約になっているチームもあるようで、当初予定していたドライバーと別の外国人ドライバーを検討しているチームもあった。
また、GT3使用チームにとって重要なのは、メーカー派遣エンジニア。カスタマーレーシングカーであるGT3は、いざトラブルがあったとき等、車両のことを知り尽くしているメーカーのエンジニアが帯同していることがスーパーGTでは多い。特に重要なのはターボエンジン車で、これを動かす際には、メーカー派遣エンジニアが必須とも言えるのだとか。
ただし現段階では、参加が厳しいメーカーは多そう。とはいえドライバーとは異なり、エンジニアの場合はオンラインでの対応を検討しているという。日本時間に合わせて待機し、何かあった際にはネットを使って対応する体制だ。
また興味深いのは、BMW Team Studie×CSLの場合。以前はドイツからBMWモータースポーツのエンジニアが毎戦訪れていたが、近年は各地域に委託されたエンジニアリング企業があり、そこからエンジニアが派遣される。アジア圏の場合は、時差がないオーストラリアから派遣されているそう。オーストラリアは現在入国緩和に向けた交渉が進んでおり、公式テストから参加できる可能性が出てきそうだ(その点では、オーストラリア、ニュージーランド、タイのドライバーは参加の可能性が出てくる)。
GT500もGT300も、代打で起用された日本人ドライバーにとってはある意味ピンチをチャンスに変えることができるかもしれないが、チームとしては本来の戦力で戦うことが前提だ。今後、7月の第1戦までにどう状況が変化するのかは非常に気になるところだ。
また、この状況はスーパーフォーミュラでも同様だ。外国人ドライバーを起用しているチームのうち、ニック・キャシディやサッシャ・フェネストラズは日本にいるものの、他ドライバーは多くが国外。また外国人スタッフが多いチームも、今後の体制構築は悩ましい状況になっているようだ。
現段階でも、ビザの取得が入国に重要になりそう……などの情報が飛び交っている状態だ。F1日本グランプリも開催できないなど、2020年は新型コロナウイルスの影響でスポーツ活動を再開するにも“地域ごと”の活動が強いられそう。特にそれぞれ14日間の隔離がおよぼす影響がはしばらく大きいかもしれない。
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