【スーパーGT基礎講座】レースウイークの流れをおさらい。“速さ勝負”の予選日と“強さ勝負”の決勝日

 年々観客動員数も増加し、2020年からドイツのツーリングカーシリーズ、DTMドイツ・ツーリングカー選手権との共通車両規定『Class1(クラス1)』も導入されるなど、世界的にも存在感を増しているスーパーGT。日本国内に目を向ければグランツーリスモSPORTにマシンが収録され、ゲームセンターではシリーズをイメージにしたゲーム機が稼働するなど、さらに認知度、ファン層が広がっている。

 残念ながら2020年シーズン第1~3戦は新型コロナウイルス(COVID-19)で延期となってしまったが、これからスーパーGTをチェックしようというかたのために、あらためてシリーズの歴史やレースフォーマットをおさらいする。熱心なスーパーGTファンのかたも、スーパーGTの魅力を再確認する機会になれば幸いだ。第2回目はレースウイークの流れについて取り上げる。

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 2020年シーズンのスーパーGTのレースウイークは1ラウンド2日間の日程で開催される。レースウイークは基本的に週末の土~日だが、祝日が被るなどイレギュラーがある場合はこの限りではない。2008年まではF1と同じく3日間の日程で開催され、レースウイークの初日に公式練習が行われていた。しかしコスト削減などの理由もあり、翌年から現在の2日間フォーマットへと移行されている。

■予選日

 レースウイーク初日である“予選日”には公式練習と予選が行われる。公式練習は後に控えた予選、そして決勝に向けた車両セッティングやタイヤのチェックはもちろん、無線、給油機器等の装備が正しく動作するかといった細かな確認を行う時間でもある。

決勝日の午前中に行われるウォームアップ走行は、決勝前に各コンディションを最終確認できる場だ(写真は2019年第5戦富士)
決勝日の午前中に行われるウォームアップ走行は、決勝前に各コンディションを最終確認できる場だ(写真は2019年第5戦富士)

 また、スーパーGTにデビューしたてのルーキードライバーにとってはコース習熟という面に加え、スーパーGTならではのGT500&GT300混走というシチュエーションに慣れるために、走行経験を積めるという意味でも貴重な時間である。

 レース観戦に訪れるファンにとっては、週末最初にコース上で走るスーパーGTマシンの迫力を体感できる機会であり、またその後の予選、決勝をどこで観戦するか、お気に入りスポットを探すにも最適な時間だ。

公式練習終了後には、スーパーGTマシンが走行しているコース上を観光バスに乗って走れるサーキットサファリが行われることも(写真は2019年第5戦富士)
公式練習終了後には、スーパーGTマシンが走行しているコース上を観光バスに乗って走れるサーキットサファリが行われることも(写真は2019年第5戦富士)

 公式練習の後には公式予選が行われる。翌日に控えた決勝レースのスターティンググリッドを決定するセッションだ。

 スーパーGTが採用しているノックアウト予選はF1や全日本スーパーフォーミュラ選手権と異なり、予選をQ1とQ2の2セッションに分けて行われる。参戦台数が増えているGT300クラスについては一部サーキットでQ1をさらに2組に分ける“組み分け”が行われることもある。

 予選Q2に進出できるのはGT500クラスのQ1上位8台と、GT300のQ1上位16台。GT300のQ1で組み分けがある場合はQ1各組上位8台ずつの計16台がQ2進出対象だ。いずれのクラスもQ2に進出できなかった車両はQ1結果がスターティンググリッドとなる。

スーパーGTの公式予選は各クラスごとに行われ、それぞれQ1~2のノックアウト方式で争われる。(写真は2019年第5戦富士)
スーパーGTの公式予選は各クラスごとに行われ、それぞれQ1~2のノックアウト方式で争われる。(写真は2019年第5戦富士)

 このノックアウト予選ではQ1、Q2ともに限られた時間でタイムを刻む必要がある上、その後の抽選で選ばれたQ1、またはQ2予選で履いたタイヤを使って決勝レースをスタートしなければならないというレギュレーションのため、決勝も見据えたタイヤマネジメントも求められる。

 こういった難しい条件が重なるなか、決勝レースでは見られない”本気の一発アタック”が繰り広げられるのが予選の魅力だ。

 ちなみにスーパーGTでノックアウト予選が導入されたのは2007年の第7戦から。それまではマシンが1台ずつアタックするスーパーラップ予選や、時間内に全車が走行して最速タイムを決める一般的な計時予選などが採用されていた。

 この予選日は、レース観戦に訪れたファンがより間近にマシンやドライバーを感じられるイベントとして、早朝にオープンピット、お昼ごろにピットウォーク、夕方にキッズウォークが行われるのが一般的。いずれもふだんは入れないピットエリアに入場できるチャンスだ。

2019年スーパーGT第5戦富士、ピットウォークの様子
2019年スーパーGT第5戦富士、ピットウォークの様子

 特にピットウォークは、ドライバーやチームに華を添えるレースクイーンたちがピットエリアに出てきてサイン会や記念品のプレゼント、写真撮影といったファンサービスを行う人気のイベント。どのラウンドでも身動きが取りにくくなるほどファンが集まるほどだ。

 このピットウォークに参加するには別途参加券が必要で、当日販売が行われることもあるが売り切れてしまうことが多い。必ず参加したいというかたは事前購入をお忘れなく。

 予選終了後に行われるキッズウォークは中学生以下のお子さまを連れた親子が対象のイベントで、基本的には参加無料。ピットウォークと同様にドライバーやレースクイーンによるファンサービスも行われる。

 ピットウォークと違い、中学生以下のお子さま連れが対象ということもあり、ピットウォークと比べれば比較的スムーズに移動することができる。小さなお子さま連れの場合は、こちらのキッズウォーク参加を積極的に検討したいところだ。

■決勝日

 予選日の翌日、レースウイーク2日目である“決勝日”はウォームアップ走行と決勝レースが行われる。20分間のウォームアップ走行では決勝レースに向けてタイヤのロングラン性能の確認や、マシンの最終チェックなどをメインに作業が行われる。

 予選から1日経つことで当然天候や路面コンディションなどが変わっているため、その状況確認やコンディションにあわせたタイヤのライフ確認、セットアップの最終調整などが行われる。各車とも決勝を見据えた走りとなるので、観戦時にはこのセッションで各車の続走行タイムに注目したい。

 ウォームアップ走行を終えると、ついに決勝レースの時間を迎える。スーパーGTの決勝走行距離はレギュレーションで「最短250㎞から最長1000㎞を超えた最初の周回」と規定されている。具体的な決勝レース距離はラウンドによって異なっており、ほとんどのラウンドが300kmレースとして行われている。

 ただ、ここ数年はゴールデンウイークの富士大会が500km、もてぎでの最終戦が250kmとなっているほか、夏には鈴鹿1000kmや富士500マイルレースといった長距離戦も組まれてきた。

 この決勝レースも、もちろんGT500とGT300の両クラスが混走する形で行われ、GT500では周回遅れの“バックマーカー”となったGT300を使った攻防が、GT300では速度で勝るGT500車両を使った攻防が、コース各所で繰り広げられる。

スーパーGTの決勝レースではピット作業で大きく順位が動きやすい。スタート以上に緊張感が高まる瞬間とも言えるだろう(写真は2019年第5戦富士)
スーパーGTの決勝レースではピット作業で大きく順位が動きやすい。スタート以上に緊張感が高まる瞬間とも言えるだろう(写真は2019年第5戦富士)

 またスーパーGTは1台のマシンをふたりのドライバーがシェアする形で争われており、決勝レースではドライバー交代を含めたピット戦略、タイヤ戦略が勝利の鍵を握る。

 特にタイヤについては複数メーカーが競う“タイヤ戦争”が行われているスーパーGTでは、タイヤの摩耗度合いがギリギリの状態で戦うため、ピットイン前後での順位変動が多く、また事前にタイヤを温めておくタイヤウォーマーの使用が禁止されているため、コールドタイヤでのアウトラップがひとつの勝負どころにもなる。

 ほかのシリーズ以上にコース上でのドライバーの意地と技術、そしてピットで見守るチームの頭脳がぶつかるのがスーパーGTが持つ魅力のひとつだ。

 ちなみに決勝日もレース開始前にピットウォークが行われ、ドライバーなどと交流する機会がある。日曜日のピットウォークではレースクイーンたちはホームストレート側で撮影に応じてくれる。

 また決勝レース直前にはマシンが並ぶホームストレート上へ入ることのできるグリッドウォークも行われる。このグリッドウォークでは目前に迫る決勝レースに向けて緊張感高まるドライバー、チーム監督、チームスタッフの雰囲気をたっぷり堪能できるはずだ。

 決勝日のピットウォーク、グリッドウォークは、どちらも別途参加券が必要なので、気になる方は事前のリサーチとチケット購入をお忘れなく。

 次回はより具体的に予選、決勝の流れやレギュレーションを解説する。



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