スーパーGT:“暗”の土曜から“明”の日曜へ。新たな気付きもあったModulo NSXの特別交流戦

 11月22~24日に行われたスーパーGT×DTM特別交流戦の週末、他のどのチームよりも“その怖さ”を思い知ったのはModulo Epson NSX-GTだろう。Modulo Nakajima Racingは通常のシリーズ戦において唯一のダンロップユーザーであり、他チームと比べてタイヤにまつわるデータ不足は否めない。

 しかし、この特別交流戦では全車がハンコックを履く。彼らにとってみれば、他チームと同一条件で走ることで、自チームの純粋なパフォーマンスを示す絶好の機会だった。

 実際に木曜日のドライ、金曜日のヘビーウエットと路面コンディションを問わず、つねに上位につけていたModulo NSXは、日曜日のレース2でナレイン・カーティケヤンが勝利を収めた。しかし、本命と目されていた牧野任祐は、土曜日のレース1で予選20番手に沈み、決勝はリタイアに終わった。なぜこれほどまでにくっきりと明暗が分かれたのか?

「そもそも週末に向けた持ち込みセットはJ SPORTSで見たDTMのレースを参考に決めました」と語る加藤祐樹データエンジニアは「彼らのクルマが低速コーナーで火花を散らしていることに注目した」という。

「事前にいろいろな情報が耳に入ってきていましたが、やはり映像でイメージをつかんだのは大きいです。ダウンフォースの少ない低速域であれだけ火花を散らしていることからいろいろと推測してきました」

 中継映像のイメージを根拠に「空力とメカニカルグリップの妥協点を“思い切りメカグリップに振った”持ち込みセットは、ロールもピッチも普段の半分程度の硬さ」で、これが見ごとに決まっていた。

 ところが、ダンプコンディションの土曜日午前中の予選で状況は一変。「出て行った周のBコーナー(ダンロップコーナー)ではすでにタイヤの剛性感がなくなっていた」(牧野任祐)Modulo NSXは、前日までのスピードを見せることなく消化不良のまま予選を終えることになってしまった。

「牧野から『ぐにゃぐにゃする』という無線が入った。それを受けてピットでは残り1セットのタイヤの内圧を調整したのですが、この対応が逆でした」と明かすのは岡田淳エンジニアだ。

「構造やサイドウォールが動くことによる『ぐにゃぐにゃ』かと思っていましたが本当は違った。実際には熱が入りすぎていたことでブロックが『ぐにゃぐにゃ』していたんです。本来であれば、タイヤの内圧をもっと大胆に下げるべきところだったのですが、ハンコックタイヤに対する理解が足りなかった」(岡田淳エンジニア)

 このときの、たった一度の判断ミスが土曜日の不発を招いた要因だった。Modulo NSXにとっては出入りの激しい週末となったが、新たな発見もあったと加藤エンジニアは語る。

「これまでに試したことのない『外挿領域の、さらに向こう側』にも、じつは結構おいしいところがあることに気づけました。この経験は今後のセッティングやタイヤ開発につながります。牧野選手には申し訳ないことをしましたが、収穫もあった週末でした」



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