【崖っぷち折原コラム】どこまでギリギリで使えるか。レースでのタイヤのグリップ力と摩擦円の考え方

 わずかひとりだけの勝利を求めて、ギリギリ、そして崖っぷちで戦うドライバーたち。F1をはじめ、世界のさまざまなレースを撮影してきた折原弘之カメラマンが、その独自のレース観と美学を写真とともにお届けする。

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 スーパーGT、GT500のGT-Rのアクセルワークの話を、佐々木大樹選手に聞いたときにタイヤの使い方にまで話がおよんだ。実に興味深い話だったので、今回のコラムで書いてみようと思う。

 大樹が話す。「クルマを走らせる時にタイヤのグリップ力を限界まで使えれば、そのクルマの限界値を引き出せた事になります。そのためにブレーキやアクセル、ステアリング操作に細心の注意が必要になってきます。たとえばスタートや加速時にホイールスピンさせたり、ブレーキングでタイヤをロックさせてしまうのはタイヤのグリップ力を超えてしまった証拠。コーナリングでスピンさせたりリヤタイヤをスライドさせてしまうのも、タイヤのグリップ力を超えてしまった結果です。アクセル同様、繊細にタイヤのグリップをコントロールする必要があるんです」

 ではタイヤの限界で走らせるには、何をどう考えて車を走らせるのか。大樹はタイヤのグリップ力を数値に置き換えて考えると言う。

「クルマが加速や減速をしている時、タイヤのグリップは前後方向に100%使えます。それでもホイールスピンしたり、ブレーキロックさせてしまうのは100パーセントを越えてしまうからです。それでも直線方向だけなら、アクセルとブレーキだけで済みます。ここにコーナリングが入ると、タイヤの使い方が突然、複雑になってくるんです」

「タイヤのグリップの限界を100とした時に、加速からブレーキングまではタイヤの縦方向だけのグリップを考えます。ここにステアリング操作が加わると、縦方向のグリップ力を、横方向に分けてあげないといけなくなります。つまりコーナーの進入では、ステアリングを切って横方向に10グリップが必要ならブレーキを10抜く必要があります」

「横方向に10グリップが必要なのに、ブレーキが20残ればプッシュアンダーが出るし、1その逆ならタイムが出なくなります。そしてコーナー進入からクリッピングポイントにかけて、縦方向のグリップを95から徐々に5くらいに持っていきます。当然、横方向のグリップは5から95を使うようにコントロールしたいんです」

「簡単に言えば縦方向と横方向に使うグリップが、足して100パーセントになるのが理想なんです。どんなに戦闘力の高いクルマでも、タイヤのグリップをうまく使えなければレースでは勝てませんし、クルマを上手に走らせられません。ですからドライビング中は、頭の中で今Gフォースはどの方向に何パーセント掛かっているのか考えながら走らせています」

 アクセルの話し同様、理論的には理解できる。が、あのスピードで走らせている中で、何とも繊細な作業をしているものだと驚かされるばかりだった。カルソニック IMPUL GT-R 佐々木大樹

カルソニック IMPUL GT-R 佐々木大樹

カルソニック IMPUL GT-R 佐々木大樹

カルソニック IMPUL GT-R 佐々木大樹



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