MaxRacing 2020スーパーGT第7戦もてぎ レースレポート

MaxRacing
レース結果報告書
2020 SUPER GT Rd.7ツインリンクもてぎ

日時 2020年11月7~8日
■車両名 たかのこの湯 RC-F GT3
■場所 ツインリンクもてぎ
■ゼッケン 244
■監督 田中哲也
■ドライバー 久保凜太郎/三宅淳詞
■チーム MaxRacing
■リザルト 予選2位/決勝15位

オープニングラップ意地のクロスライン

 今シーズンからスーパーGTGT300クラスに参戦する新チームMaxRacingのレースレポートを熱血田中哲也監督の目線でお届けします。メンテナンスはつちやエンジニアリングとRS中春がジョイントして担当。監督を含めて経験豊富な体制ですが、ドライバーはスーパーGTへ1シーズンぶり復帰の27歳久保凜太郎と、FIA-F4で19年ランキング2位となった21歳三宅淳詞がコンビを組みます。

 若いふたりをどれだけ成長させられるかが、今シーズン、チームの大きなテーマでもあります。上位にはGT500経験を持つドライバーが名を連ね、超ハイレベルとなっているGT300だけに、挑戦しがいのあるフィールドだと言えるでしょう。

 前戦ラウンド6鈴鹿の公式練習中、不慮の事故により大クラッシュした、たかのこの湯RC F GT3は想像以上にダメージが深刻で、メインフレームやミッションの交換が必要な状況でした。シーズン終盤でしかもインターバルが短いなかでもあり修復は困難でした。しかしトヨタ自動車様の格別のご配慮により、車両を貸与していただくことができました。

 その車両は同型式のレクサスRC Fであり、レース前に富士スピードウェイでのスポーツ走行枠で確認走行を実施してラウンド7もてぎに臨みました。リヤのゼッケンベースの左横には『わ』の文字を追加。いつもとは違う緊張感のなか『わ244』たかのこの湯RC F GT3はもてぎの公式練習に臨みました。

 タイヤ選択からロングの確認まで三宅が担当しました。「今回はセッティングとか、制御系とか、細かいところまで詰めるために三宅だけで進めました。ドライバーが代わってしまうと感覚が違うからわかりにくいところもあります。それに三宅だけでなく凛太郎も、速さはあるので、少し乗ればすぐにタイムを出してきます。習熟については心配していません」哲也監督。

 ちなみに富士の確認走行も三宅だけが担当しました。ラウンド6でクラッシュした凛太郎にとっては早く乗って、感覚を取り戻したいとの気持ちがあったでしょうが、あえて極限までプレッシャーをかけることで力を引き出したいとの哲也監督の考えもあって、三宅主導でテストも公式練習も進めました。

「ボク自身がそうしたプレッシャーをかけられて、いや、かけていただいて成長することができたと感じています。余談ですがNISMO時代、レース中でクールスーツが壊れて苦しいときに柿元さん(柿元邦彦監督)から、無線で『今、ピットインしたらクビ』と言われたことがあります(笑)。それでパッと目が覚めますよね。だから今回、プロになりたかったらプロらしい考え方をしろと、凛太郎にはもう後がないというくらいにプレッシャーをかけました。追い込まれて死物狂いになって出てくる一発の力ってあると思うんです。GT300に乗れていればいいというのではプロではない」(哲也監督)。

 予選Q1は三宅が担当。1分47秒209のタイムでBグループ7番手となりQ2進出を決めて、凛太郎にステアリングは託されました。「またブレーキが利かなかったらどうしよう」という不安と葛藤して、ブレーキを踏みたくなる左脚を叩いて自分自身に喝を入れながらアタックに臨んだ凛太郎が刻んだタイムは1分46秒430。ターゲットタイムを大きく上回ることに成功しました。61号車に続くフロントロウを確保したのです。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)

「本当によかったですね。午前のタイムで3列目くらいにはいけると想定していましたが、フロントロウは想定外です。崖から落ちかけて自分の力でなんとかしがみついてくれた。そこから這い上がってくれれば、ボクらはそれでいい」(哲也監督)

 こうなるとドライバー心理は微妙なもので、Q1は突破したものの、遅いクルマにひっかかりタイムが伸びなかった三宅にプレシャーがかかります。こうしたプレッシャーを糧とできればチームは成長していくのでしょう。「今回はチームに楽しさも明るさも要らない(笑)。がむしゃらに、これが獲れなかったら次がないくらいの気持ちで臨みたいと思います」(哲也監督)。

 公式練習では、予選に向けてタイムに手応えがあったことからも、これまで課題であったロングランでのタイム推移とタイヤの確認に重点を置いていました。しかしこの結果はあまりいいものではなく、かなり厳しいレースが予想されていました。これ以上ないプレッシャーが凛太郎と三宅にかかることが想像されましたが、土曜日の夕方に公式通知が発表され、規則に従い、車両交換によるペナルティストップ15秒が課されることになりました。好グリッドを活かしながら、ペナルティを跳ね除けていかに順位を回復するか、ふたりへのミッションは変更されたのです。

 スタートを託されたのは凛太郎です。ペナルティストップすることが決まっているとはいえ、そこまでの数周でしっかり順位をキープしてアピールすることが重要なのは言うまでもありません。フォーメーションラップで入念にマシンをウェービングさせてタイヤに熱を入れる凛太郎。グリーンランプが点灯してスタートが切られると、チャンピオン争いを展開する11号車がすかさずターボパワーを活かして、1コーナーでインに飛び込んできます。

 完全にインを取られたものの、凛太郎は冷静にクロスラインをとって、ポジションをキープします。11号車を相手に対等に渡り合い、2周目にピットロードへ。ペナルティストップを消化しました。序盤でのストップにより当然最後尾付近まで落ち、ここから追い上げを開始しました。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)

 前日の公式練習ではロングランのタイムに不安があったものの、上位陣と遜色ないタイムをキープしています。19番手まで凛太郎は順位を回復。「序盤、陽の差している間は少しタイヤがきつかったですけど、後半は涼しくなると読みました」と言う凛太郎の判断で、後半スティントにもスタートと同じタイヤを選びます。

 レースが3分の1を消化する頃、V字コーナー手前のグリーンに停止車両があり、セーフティカー(SC)が導入されると読んだチームは20周目、凛太郎をピットに呼び戻します。4輪交換して給油、三宅にドライバーチェンジして、狙い通りSC導入前にピットアウトすることに成功しました。

 リスタート時に三宅が25番手。ここから再び追い上げを開始しました。ランキング上位の車両を次々とオーバーテイク、同じレクサスRC Fの96号車も52周目にとらえて18番手に浮上。「ストレートスピードはおなじなので時間を使ってしまいましたが、向こうはタイヤがきついようでトラクションが掛からず、3コーナーの進入で抜きました」と三宅。終盤までペースを大きく落とすことなく15位でフィニッシュしました。

「何よりもよかったと思うのは、凛太郎も三宅も全力を尽くしてくれて、タイヤも最後までもたせたのが素晴らしかった。順位としては目立たなくても、ペナルティを受けたなかで、非常にいい内容だったように思います。ただ、いま検証している最中ですが、ピットインはもう少し別のタイミングがよかったのかもしれません。前回鈴鹿での23号車のように、ピットタイミングで大きなゲインを得ようと狙いましたが、狙い過ぎだったかもしれない」哲也監督。

 このように哲也監督が言うのは凛太郎が抜いてきた87号車が、ルーティンピットを終えた時点で前にいたからです。最高7番手まで浮上していました。『タラ・レバ』の仮定の話でしかありませんが、ピットタイミングによってはミラクルな順位復帰を果たせたかもしれません。

 87号車は、SC中にピットインしてタイヤ交換作業を完了。リスタートのタイミングでそのままピットインして、ドライバーチェンジと給油作業を実施していました。「鈴鹿では、SC中のコース上で必要以上にスローダウンする車両があったことも23号車を助けることになりました。今回はドライバー全員がそこを注意していたのかもしれない。作戦についてはボクの反省点です」哲也監督。

 接戦になっているGT300だからこそ、より緻密な戦略の組み立てが必要となっています。短期決戦となった2020シーズンは早くも最終戦を迎えます。クラッシュという大きな試練を乗り越えて上り調子をつかんだ田中哲也率いるMaxRacingは、ノーウエイトの富士決戦において今シーズンの集大成となる充実したレースを展開してくれるに違いありません。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)

久保凛太郎のコメント

「スタートが最大の見せ場であることは理解していたので、タイヤに熱はちゃんと入れていました。温まっていなかったら、クロスはかけられなかったと思います。「大丈夫」と信じていきました。ペナルティストップを消化してからもペースは悪くありませんでした。大きな結果にはつながりませんでしたけど、内容はよかったです。予選2位を得たのも自分なら、ペナルティストップも招いたのも自分です。それを受け入れた上で、今回の15位はこれまでと違うという印象です。次の富士は自分たちがやれることを普通にこなせば結果はついてくると信じています」

三宅淳詞のコメント

「土曜朝のフリー走行では、タイヤの摩耗もあって厳しかったですし、ボクがロングスティントの担当になったので、絶対に厳しいだろうなと覚悟していました。しかし、事前にタイヤマネージメントを考えて自分なりにやったことがレース終盤に活きたようで、レースラップに自信がつくようなレースウイークでした。レース終盤、単独で走れる時間があったので、グリップが下がったことに対応するブレーキングやラインを自分なりに考えて実行したら、タイムが上がったのでいい勉強になりました」

「予選Q1は通りましたが、遅いクルマに引っかかったことでタイムを落としてしまいました。そういうことがなければもっとタイムを出してアピールすることができたと思いますし、そういう部分でミスしていたらもったいない。これは富士に向けての反省点です。次の富士はみんなノーウエイトになりますが、今回の感じではけっこう戦えそうなので、必ずポイントを獲ります」

2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ たかのこの湯 RC F GT3(久保凜太郎/三宅淳詞)


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